第21話 新入部員が現れる?
キャラの名前の読み方
雪倉冬貴
燕泉凛
小針御代
櫛形耕平
阿賀野氷純
廃工場の静寂を破るように、泉凛が問いかけた。
「で……アンタのそれ、どういう仕組みなの?」
鋭い視線が氷純へと向けられる。彼は僅かに眉を上げ、淡々と答えた。
「ボクの能力のこと? 説明すると長くなるけど……」
氷純は体からいくつかの【ヒスミオン】を取り出し、冬貴たちの周辺を飛び回らせる。
「ボクは、身体をすべて小型ロボットに改造している」
「ああ。それはさっき見たから知ってるが……正直、驚いた」
【エリアオメガ】のプレイヤーは体の一部を武器に改造する者が多いが、全身を細かなロボットにした者は見たことがない。
「ボクには、『体の分裂or合体』、『身体のガトリング化』、『身体のレーザーブレード化』、『身体のジェットブースター化』、そして『人間アバターへの擬態』というアルカナがある」
氷純は淡々と説明するが、その内容は冬貴の常識を軽く超えていた。
「……つまり、君の【ヒスミオン】はすべて、元は君自身のアバターから作られているから、それらは全て同じアルカナを共有している……」
氷純は小さく頷く。
「そして、君の体を構成する【ヒスミオン】は、それぞれが武器になれる……」
「うん。でも、単体じゃ威力が低すぎるからね。それぞれが武器の細かな部品になって、組み合わせることで強力な武器になるんだ」
冬貴は氷純のノートの内容を思い出した。彼が理解に苦しんでいたのは、まさにこの仕組みだったのだ。
武器化系のアルカナは、武器を生成する際に、その形状を自在に変えられる特徴がある。
例えば、敵との距離に応じて銃の長さを調整するプレイヤーや、両手を巨大な武器のパーツに変身させ、それらを組み合わせて一つの大武器にするプレイヤーが存在する。
しかし、氷純の戦法は、冬貴にとって見たことがない独自のものだった。
「その代わり、【ヒスミオン】が破壊されたら、ボク自身もダメージを受けるけどね」
「なるほど……」
彼は自らの身体を分解し、それらを宙に漂わせながら自在に操作する。
そして、敵の死角でそれらを武器の部品として組み立て、合体・顕現させる。それによって、状況に応じた最適な武器を作り出し、戦うのだ。
(だが、それには驚異的な操作精度が求められる……)
全国大会に出場できるのは、才能あるプレイヤーのみであると、氷純はアマチュア限定のランクマッチでしか実績を残していないことを謙遜していたが――
(やっぱり、こいつは天才なんじゃないか?)
「分かった?」
「う、うーん……?」
泉凛と御代は、いまいち理解しきれていないようだった。
冬貴は軽く息を吐きながら、氷純へと手を差し出した。
「何にせよ、これからよろしくな」
だが、氷純はその手を取らず、僅かに目を伏せながら呟く。
「言っとくけど……約束だから入部はするけど……全国に行ける可能性がなさそうなら、早々に見限るからね」
泉凛は鋭く睨みつけた。
「そんな必要ないわ! だって私たちは強いんだから!」
冬貴は、そんな彼女の姿を見て微笑む。
「ああ。そのとおりだ。それに、俺達も君を頼りにしているからな!」
氷純は一瞬驚いたように冬貴達を見つめ、それから可愛らしく笑う。
「……ふふっ」
氷純は軽く肩をすくめながら、システムメニューを開いた。
「じゃあ……フレンド登録しとくから、何かあったら連絡して。じゃあね」
そう言い残し、ログアウトしていった。
静寂が戻る。
冬貴は周囲を見渡しながら、拳を握った。
(これで……全国に一歩近づいたのかもしれない……)
「俺たちも、ログアウトするか」
泉凛と御代が頷く。
●▲■
翌朝、校門前にはまたもや「アルカナフォージャー部 部員募集中!! 全国行くぞ!!」と大きく掲げられた手作りの旗がはためいていた。
その足元には、昨日と同じように勧誘用のビラが無造作に積まれている。
「アルカナフォージャー部に入りませんか!」
泉凛が元気よく声を張り上げる。
隣では耕平が気さくな笑みを浮かべながら、「一緒に全国目指そうぜ!」と、通りかかる生徒に声をかけていた。
「昨日注意されたばかりなのに……」
御代が小さくため息をつく。とはいえ、その表情にはどこか呆れながらも温かみがある。
「生徒会長が来るまでならセーフでしょ?」
泉凛と耕平が顔を見合わせて、悪戯っぽく笑い合う。
冬貴は、その熱意には素直に感心していた。だが、その方法が本当に有効なのかについては、少し疑問を抱いていた。
(あまりに強引だと、逆効果になるかもしれないが……)
一度注意されたばかりの勧誘活動。これ以上、学校側に悪印象を与えれば、部の存続に関わる可能性もある。
「少しやり方を考えたほうがいいかもしれないんじゃないか……?」
そう泉凛と耕平に伝えたが――
「考えすぎなのよ!」
「細けえこと気にしてたら、全国なんて夢のまた夢だぜ!」
二人はまったく気にする様子もなく、相変わらず熱心に勧誘を続けていた。
しかし、その瞬間、静かな声が彼らの活動を制する。
「こらこら。昨日も言ったとおり、生徒たちの迷惑になるような勧誘はおやめくださいな」
生徒会長が颯爽と現れる。彼女の冷静な口調には、昨日のような厳しさはなく、どこか含みのあるものだった。
「ちぇっ……来やがったわね」
泉凛が小さく舌打ちする。
「すみません。すぐ撤収します……」
冬貴は旗やビラを手早くまとめ、撤収の準備を始めた。
周囲の視線を意識しながら、できるだけスムーズに動く。だが、その場を離れようとした瞬間――思わず言葉が漏れた。
「ただ、俺たち……部員を集めないと、存続が……」
冬貴の声は小さかったが、それでも生徒会長の耳には届いていたのだろう。生徒会長の表情が、ほんの一瞬だけ揺らいだ気がした。
冬貴が素直に頭を下げると、生徒会長は「それは承知していますけども……」と、意味ありげに言葉を濁す。
冬貴はその反応に違和感を覚えた。昨日とは明らかに態度が違う。昨日は、確実に排除する意志があった。
今日はまるでこちらの様子を見極めるかのような態度に変わっていた。
(まるで、俺たちの本気度を試しているみたいだな……?)
冬貴の中で疑問が膨らんでいく。
●▲■
放課後の部室には、夕焼けに染まる光が差し込み、柔らかな影を作り出していた。
「さて、やっと学校が終わったわね。長かったわ!」
泉凛が両手を伸ばし、大げさに背を反らせる。
「でも泉凛ちゃん、ずっと寝てたよね……?」
御代が微笑みながら、少しだけ呆れたように問いかけた。
「お、起きてる時もあったし!」
泉凛は慌てて弁解するが、その言葉には説得力がない。
「じゃあ、勧誘の続きをしよう。まだ学校に残っている生徒を誘ってみるか?」
冬貴が提案すると、耕平が大きく頷く。
「だな。朝は生徒会長に邪魔されたし、リベンジといこうぜ!」
「いやいや、あれは耕平たちがやりすぎただけだろ……」
冬貴はため息混じりに返した。確かに生徒会長の指摘はもっともだったが、それでも彼らの情熱を否定する気にはなれなかった。
そんな話をしていると、部室の扉が静かに開かれた。
「お邪魔しますわ」
上品な声音が響く。振り返ると、そこに立っていたのは生徒会長だった。
「げ……生徒会長じゃん」
泉凛が小さく呟き、耕平が軽く肩をすくめる。
「朝の件の説教っすか?」
御代も気まずそうに視線を落とし、「あれはやりすぎでしたよね……すみません」と頭を下げた。
だが、生徒会長は小さく首を振る。
「その件ではありませんわ」
冬貴は目を細める。ならば、何の用なのか。
「どうしたんですか?」
問いかけると、生徒会長は一拍の間を置いてから、静かに口を開いた。
「……私をこの部に入れていただけませんか?」
「「「「!?」」」」
部室が一瞬、沈黙に包まれる。
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【阿賀野氷純】Lv.50 深越高校1年生
◆故郷◆
【エリア・オメガ】
→職業【サイボーグ】
自身の身体をアイテムやアルカナ素材で改造することで、多彩な攻撃や移動手段を得られ、戦闘の柔軟性と適応力が大幅に向上する。
◆ ステータス ◆
HP :2698/ 2698
MP :7071 / 7071
ATK:3780(攻撃力)
DEF:1851(防御力)
SPD:5989(素早さ)
◆ アルカナ ◆
【ヒスミオンシステム】(可変構造 / 体の分裂・合体)Lv31
【オペレーション 1(ウノ)】(過去の自身のアバターへの擬態)Lv29
【オペレーション 2(デュオ)】(重火器モード / 身体のガトリング化)Lv50(max)
【オペレーション 3(トレス)】(高周波ブレード / 身体のレーザーブレード化)Lv50(max)
【オペレーション 4(クアトゥオル)】(推進機構 / 身体のジェットブースター化)Lv50(max)
◆ 装備 ◆
・武器
なし
・防具
なし
◆身体改造部位◆
全身→【ヒスミオン】
自己分裂可能なナノマシン群による戦闘形態。個別制御されたユニットは戦場を自在に飛び回り、武器の構成部品として融合する。攻撃・防御・索敵といった多目的な運用が可能だが、各ユニットが破壊されるとプレイヤーにダメージが蓄積する。
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