第12話 アルカナフォージャー部、廃部の危機
キャラの名前の読み方
雪倉冬貴
燕泉凛
小針御代
櫛形耕平
加茂先生が冬貴達を校長室に連れていった。
校長室には、校長先生である年老いた女性が冷静な表情で座っている。
校長は廃部の理由を淡々と告げる。その顔には一切の譲歩がない。
「……つまり、公式大会にも出場していないのに、他の文化部よりも活動費が高すぎる、というのが廃部の理由ですか?」
冬貴の声が静かに響く。
「ええ。概ねそのとおりです」
校長は表情を変えずに頷く。
確かに、アルカナフォージャー部の維持費は高い。
アミュスフィアは各自が持参しているものの、ゲームの月額料金、ネット回線費、光熱費、設備のメンテナンス費――これらはすべて学校持ちだった。
しかし、冬貴たちにとって、それが理由だからといって諦められる話ではない。
「ですが!」
冬貴は一歩前に踏み出した。
「アルカナフォージャーは今、若者に人気を誇る競技です! もしこの学校が実績を上げれば、優秀な生徒が集まり、学校の知名度も上がるかもしれません!」
彼の言葉に、校長は静かに目を細めた。
「……それだけの成果を出せるの?」
「それは……」
冬貴は言葉に詰まった。
全国の強豪校と比べて、この田舎の小さな学校が名を上げることは現実的に考えて容易ではない。
それは、冬貴自身も理解していた。
しかし――
「ここでしかできないことがあるんです!」
冬貴は必死に訴えた。
「お願いです! 続けさせてください」
「俺らだって、田舎でもやれるって証明したいんです!」
御代と耕平も頭を下げた。
しかし、校長は腕を組み、困ったように首を振る。
「そのようなことを言われましてもねぇ……」
長年、教育現場に携わってきたであろう落ち着いた声色。しかし、その一言には、現実の厳しさを突きつける重みがあった。
「絶対に全国に行って、名の知れた学校にしてみせるわ!」
泉凛の声が、静まり返った室内に鋭く響いた。
その瞳には、燃え上がるような闘志が宿り、決意の炎が揺らめいている。
校長はゆっくりと目を細め、静かに問いかけた。
「……その心は?」
泉凛は自信満々に胸を張り、微塵の迷いもなく言い放つ。
「この私と、私が認めた冬貴がいるからよ!」
一瞬の沈黙。
校長は静かに泉凛を見つめ、穏やかに口を開いた。
「燕泉凛さん……そういえば、あなたは転入試験の面接の際、転校の理由を“ゲームの大会で全国に行くため”と話していましたね」
泉凛は堂々と胸を張り、力強く頷く。
「そうよ! そのためにここに来たんだから!」
校長は軽く目を閉じ、深く息を吐いた。そして、再びゆっくりと視線を上げる。
「……いいでしょう。一度だけ、廃部の話はなしにします」
「やった!」
「ただし――」
その声に、冬貴たちの表情が強張る。
「近日中に練習試合を組み、それに勝利することが条件です。もし勝った場合、とりあえず、全国大会の予選までは廃部しないことにしましょう」
冬貴は息を呑んだ。
(そんなこと……可能なのか?)
「私、まだちゃんと対人戦したことなくて……」
御代が不安げに声を漏らす。
耕平も苦い表情で腕を組む。
「そんな……俺たち、試合なんてまともにやったことないぞ。それに、人数も足りてないのに……」
焦りと動揺が広がる。冬貴自身も、胸の内で強く思う。
(どうするんだ……これ、乗り越えられるのか?)
絶望感がじわじわと押し寄せてくる。
だが、泉凛は――
「……やってやるわよ!」
力強く言い放った。
その言葉に、御代と耕平も顔を上げる。
「……そ、そうだね。私も頑張る」
「おう……やるしかねえよな!」
試合経験は乏しく、チームとして動いたこともない。
相手がどこであれ、勝つことは難しいのではないか――そんな考えが頭をよぎる。
けれども。
「でも……ここで諦めたら、本当に終わりだ」
冬貴が拳を握りしめる。
「全国を目指すんだろ。だったら、ここで折れるわけにはいかない!」
冬貴が、強く自分に言い聞かせるように呟いた。
そして、泉凛が大きく腕を組み、笑みを浮かべる。
「当然でしょ。私は勝つためにここに来たんだから!」
泉凛がきっぱりと言い切ると、校長はしばし沈黙した後、静かに頷いた。
全員が一致団結した。
「それで……練習試合の相手というのは……?」
校長は、少し考え込むように顎に手を当てた後、視線を顧問の加茂先生へと向けた。
「その件については、顧問の加茂先生と、君たちで相談して決めなさい」
淡々とした声でそう言い放つ。
「……えっ」
冬貴は思わず拍子抜けしそうになる。しかし、校長はすでに椅子に深く腰掛け、机上の書類に目を落としていた。
「以上です」
それはつまり、もう話は終わりだという合図だった。
冬貴たちは互いに目配せを交わし、深く一礼して校長室を後にする。
●▲■
「何とか助かったな……」
部室に戻るなり、耕平が肩を回しながらため息をついた。
「けど、練習試合に勝たないといけないし、その前に、そもそも試合に出られるだけの部員を増やさないといけない」
「部員を増やす算段はあるのか?」
「ない」
「……おい」
冬貴が言うと、耕平が呆れたように頭を抱える。
「部員を探したいのは山々だけど、今日は部活をしている人以外、もう帰っちゃってるね……」
御代が窓の外を眺めながら言った。
冬貴は腕を組み、考え込んだ後、提案する。
「しょうがない。部員探しは明日にして、今日はゲームで顔合わせをしよう」
「そうだな。水分補給とトイレ忘れんなよ」
「誰に言ってんのよ!」
部室の鍵を閉め、全員がアミュスフィアをセットする。
それぞれのゲーミングベッドに横になり、システムを起動。
視界が暗転し――次の瞬間、彼らはゲームの世界へと降り立った。
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