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第11話 この地区の四天王

キャラの名前の読み方

雪倉冬貴ゆきくらふゆき

燕泉凛つばめいずり

小針御代こばりみしろ

櫛形耕平くしがたこうへい

 放課後、冬貴たちは、部室へと向かって歩いていた。


 外にはまだ雪がちらほら残っており、田んぼの水面が冷たく光っている。遠くでハクセキレイの鳴き声が微かに聞こえた。


「……そういやさ、お前、どうやって引っ越してきたんだ?」


 耕平が何気なく尋ねる。


「え? ああ、それならパパに事情を話して、学校近くの空き家を借りてもらったの」


「……は?」


「だから、引っ越しよ。空き家、借りてもらったの」


「……裕福なんだな」と、冬貴は羨望を隠しきれない様子で呟いた。


 普通の家庭なら、高校生の子供が「転校したい」と言っただけで、すぐに家を借りるなど考えられない。


「ご両親の了解は得てるんだね?」


 御代が少し心配そうに声をかける。


「パパはね」


 泉凛は、一瞬だけ目を伏せ、続けた。


「ママとパパは別居してるのよ。この前まではパパと一緒に住んでたわ」


「ごめんね、家のこと聞いちゃって……」


 御代が申し訳なさそうに言うと、泉凛は首を横に振った。


「……まあ、家族の話はいいわ。それより、この辺で強い学校はどこなの?」


 泉凛が興味津々といった様子で聞く。


「そうだな……」


 冬貴が考える素振りを見せる。


「ここ新潟県は北信越ブロックに属しているんだ。新潟、長野、富山、石川、福井の五県で一つの地区になっていて、その中から全国大会に出場する学校が選ばれる」


「まあ、そのくらいは知ってるけど」


 泉凛が軽くうなずく。


 アルカナフォージャーの全国大会においては、関東や大阪のように出場校が多い地域では、各都道府県から代表校が選出される。


 しかし、出場校の少ない地域では、複数の県を統合した地区ブロックが形成され、その中から代表校が選ばれる仕組みとなっている。


「このブロックには『四天王』って呼ばれる強豪校がある。毎年その4つの学校が上位争いをしている」


「四天王?」


「ああ。まずは北ケ峰(ほくがみね)高校。新潟市にある伝統校で、地区大会最多優勝。全国ベスト4の実績もある。『北信越の女王とその騎士』と呼ばれる月岡つきおか兄妹がエースだ」


「強そうね……」


「次は富山県の立山翔雲たてやましょううん高校。比較的新しい学校だけど、北ケ峰と肩を並べるレベルだ。特別なエースがいるわけじゃないが、とにかくチームワークが鉄壁だ」


「ふーん」


「三つ目は長野県のシンセリア学園。去年は地区ベスト4だったけど、準決勝で北ケ峰のプレイヤーを2人倒してる。今年は白馬麗華はくばれいかっていう新エースが注目されてる」


「で、最後が?」


兼六学院けんろくがくいん。石川県の金沢にある。毎年地区ベスト4には入るけど、全国大会には一度も出てない。でも今年はU19日本代表の明峰尊めいほうみことっていう選手がいて、今年こそ全国に行くって噂されてる」


 泉凛が目を輝かせた。


「へえ、この辺にも強そうな学校が揃ってるのね」


「まあ、東京や大阪に比べたらそこまでじゃないさ。実際、北信越ブロックの学校が全国大会で決勝まで行ったことは一度もない」


「ふん、でも私は全員ぶっ倒すわよ!」


 泉凛が拳を握りしめる。


●▲■


 そのような会話をしながら、部室棟に到着した。


 文化部が集まるその一角に、アルカナフォージャー部の部室がある。古びた木製の扉がギシギシと音を立てた。


「なにこれ、物置?」


 泉凛が眉をひそめる。


 扉を開けると、六畳ほどの狭い空間。年季の入ったゲーミングベッドが六台並び、壁際には空っぽの棚。その他は何もない。


「狭っ! てか、ゲーミングベッドボロボロじゃない!」


 泉凛が叫ぶ。


「ベッドがあるだけマシだぞ。前は椅子で突っ伏してやってたんだから」


「その時は首が痛くて大変だったよね……」


 耕平が苦笑しながら肩をすくめると、御代も思い出したように小さく笑う。


「マジか……こんなので強くなれるの?」


 泉凛は呆れる。


「……ここでやるしかない」


 冬貴が淡々と言った。


「いや、これなら家でやった方がいいじゃない!」


「……それじゃ、部活動として認められない。学校の支援も受けられなくなるんだよ」


 冬貴が冷静に説明する。


 泉凛は「もう……ほんとに何なのよ」と小さくぼやきつつ、言葉を続けた。


「まあいいわ、とにかく始めるわよ! アミュスフィア、ちゃんと持ってきた?」


「もちろん」


 泉凛がバッグからVR機器・アミュスフィアを取り出す。


 その時だった。


 カチャリ。


 扉が開き、顧問の加茂敏子かもとしこが姿を見せる。


 普段は温厚な彼女だが、今日はどこか沈んでいた。


「みんな……話があるの」


 一瞬で空気が張り詰める。


「新学期早々で申し訳ないんだけど……今日限りで、この部は廃部になるかもしれないわ」


 静寂。そして――。


「……はぁ!?」


 泉凛の叫び声が、部室に響き渡った。


「え……」


 御代が戸惑いながら小さく声を漏らす。


「は? マジで言ってんのかよ?」


 耕平は思わず眉をひそめる。


「そんな……」


 冬貴は言葉を失ったまま、拳を握りしめる。


「ふざけないで!」


 泉凛が一歩前に出る。


「私はここで全国目指すって決めたのよ!」


 強い口調で、悔しさを滲ませながら訴えた。


 部室の空気が一気に張り詰めた。

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― 新着の感想 ―
Eスポーツの部活ものというのを初めて読ませていただきました、勉強になります、ありがとうございました。 青春部活ものというので、東京などの都会出発でなく地方から成りあがっていく形というのが新鮮で驚きまし…
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