表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

7・サードプレイス

「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」


私はホームセンターのバイトを辞め、カフェおいてけぼりでバイトをさせてもらうことになった。

自分のことを受け入れてくれたみほさんのもとで働いてみたいと思った。


◇ ◇ ◇

 

「どうしてこども食堂じゃなくて、だれでも食堂なんですか」


私は、働き始めてからずっと気になっていたことをみほさんに聞いてみた。

こども食堂はニュースで何度か聞いたことはあったけど、だれでも食堂というのは聞いたことがなかった。

  

「私もずっと自分の居場所がなかったの。

カウンセラーの仕事をしていて、家族や友達がいる人でも自分の居場所がないって孤独を感じている人が沢山いた。

親しい人にでさえ、自分の本音を伝えるのって難しいのね。

そんな人たちのサードプレイスを作りたくて、このカフェを始めたんだ。」


「サードプレイス?」


「学校でも職場でも家庭でもない、

自分が自分らしくいられる、もう一つの居場所。」


私にとって初めて聞く言葉だった。


「薫ちゃん、あのね。家庭や職場以外の場所で、自分の役割に生きがいを感じている大人もいるんだよ。

 私もそう。当時、カフェをやるって言い出した時は、応援してくれる人もいたけど、反対されることのほうが多かった。


 だけど私にとって“心からの喜び”ってなんだろうって何度も自分に問いかけて、

 勇気がいることだったけど、このカフェを作ったの。


 今はやって良かったなって心底思ってるよ。

 だからいいんだよ。薫ちゃんも、家と学校以外の場所に居場所を求めても。」


そんな場所があったんだ。


居場所は自分で探しに行く、かぁ。

自分だけが孤独を感じているわけではないことを知り、私はホッとした。


◇ ◇ ◇


「お先に失礼します。」

「お疲れ様。」


 パソコンで事務作業をしているみほさんに声をかけてカフェを出ようとしたとき


「薫ちゃん!」


みほさんが息を切らしながらカフェから出てきた。


「うちは特別な理由はいらないから!バイト以外の日でもさ。話を聞いて欲しいときはいつでも来てね。」


「え……」


みほさんの言葉に、言葉が詰まってしまった。


「それだけ!なんか今言わなきゃ!!って衝動に駆られて、走ってきちゃった。」


みほさんは笑っていた。

つられて私も笑ってしまった。


自分が自分らしくいられる居場所。


私もやっと見つけられたんだって思えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ