1・ルシアと壊れたカプセル
「船内の気圧低下。船体後部損傷。墜落確率89%。自動操縦に切り替えますか。」
音声が聞こえて目を開けると、俺は操縦席らしき所でシートベルトをして座っていた。
ごおおおーと大きな轟音とともに身体が大きく揺れていて、今にも吐きそうだ。
左右を見ても誰もおらず、どうやら俺は、一人用のカプセルのような乗り物に乗っているらしい。
そして身体が下を向いていて、大きい振動と窓から見える異様な光景から、墜落している最中であることは分かった。
ここはどこだ?何も思い出せない。
頭がガンガンする。
血の味がしたので手で口元を拭おうとすると、鼻から血が出ていることに気づいた。
「墜落確率92%。操縦者応答なし。自動操縦に切り替わります。」
(うぅぉおっ!!)
機体が角度を変え、横に向き始めた。
「墜落確率86%」
「墜落確率72%」
「着陸予定エリアからおよそ500キロ離れたエリアに緊急着陸します。衝突に備えてください。」
機体がまた大きく揺れ出した。
「緊急着陸します。」
◇ ◇ ◇
それからのことは覚えていない。
目を開けると機内のライトが点滅していた。
どうやら気を失っていたらしい。
「機体の損傷91%。大破の恐れあり。直ちに脱出してください。」
「ちょっちょっと待ってくれ!!」
非情にも機械音のような音声は後の言葉を続けた。
「大破予測時間を計測中。……計測完了。この機体は約5分後に大破します。直ちに脱出してください。」
「あんたは誰なんだ?!」
俺は叫んだ。
「私はRA800音声アシスタントです。」
「ここはどこで、俺は誰なんだ?どうして記憶がなくなってる?!」
「ここは地球という惑星です。あなたはルシアです。記憶がなくなった理由は…不明。」
「俺はどこから来たんだ?」
「エニューオ星という惑星です」
「エニューオ星?どうして?なんのために?!仲間はいるのか?!」
「仲間はいます。目的を聞きますか?大破まで残り1分。直ちに後ろの出口から脱出してください。」
「くそっ!!」
急いでシートベルトを外し、出口へ向かって力を振り絞って走った。
「大破まで残り30秒。29、28…」
出口近くにある光っているスイッチを押すが開かない。
何度押しても開かない!
「開かないぞ!!」
「15、14…指紋認証に切り替えますか。」
「頼む!」
「ドアに右手をタッチしてください」
「タッチ!!」
「認証しました。10、9…」
俺は死に物狂いで走った。
背後から爆発音が鳴り響いた。
走りながら後ろを振り向くと、最後に大きな爆発音が聞こえて跡形もなくなってしまった。