同居人ひとり、子供がふたり・3
「で、これがぶん取って来た、すぐ必要そうなもんね」
「ぶんど………もうちょい言い方考えろ」
周が久方に渡した手提げの中には、私服が一式と母子健康手帳が入っていた。
「はぁ、わかった。じゃあまず、桜と椿はフロ入ってきな。二人だけじゃ勝手分かんないだろうから、周、二度手間になって悪いが一緒に入ってやって。そのあいだに部屋片してメシ用意しとく。弁当用使うけどいいよな?」
「ん。おーけー了解」
「………あまね…?」
久方が周を苗字で呼ぶのに反応したのか、桜が周を見た。周が眉を下げて笑う。
「あぁ、俺、自分の名前しっくりきてなくてさ。周くんって、苗字で呼んでくれるかな…?」
「………あまねくん……なんか変な感じ」
「君たちも周だもんね」
ゆっくりでいいよ、と周は桜を撫でるが、椿のほうは案外あっさり呼称を口にし、塩の不快感を伝えた。
さて。周が洗濯機で洗える喪服に感謝しているあいだに、久方は二人の母子手帳に目を通す。ハーフということだが、生まれも国籍も日本。予防接種も全部日本の病院で受けていて、アレルギーは無し。
(まぁ、婿養子を条件に結婚の許可がおりたなら、生まれも育ちも日本だろうな)
料理担当である美言が作りおきしているミニハンバーグを皿に分けてレンジで1分半。その間にミックスサラダを大皿に出してドレッシングを二周。
(米………一合しか炊いてないけど足りるかな……。あ、確か前に非常時用のご飯貰ったっけ。どこ置いたっけ……)
レトルトのカレーなどをしまっているスペースに入れてあるのを見つけ、ハンバーグが温め終わったレンジに放り込む。
脱衣所からドライヤーの音がし始めると、インスタントの味噌汁を用意し、ご飯をつぐ。
「あがったよ」
「うい、おかえり。すぐ食べれるから、とりあえず食べよっか」
食卓について、手を合わせて。「いただきます」。
ハンバーグを口にふくんだ桜が、顔をぱっと輝かせる。
「お、美味いか」
「! ……はい」
「良かった。ぜひ残さず食ってくれ」
「作ったの俺だけどね」