同居人ひとり、子供がふたり・2
「違うよ」
桜の問いに答えたのは久方のほうだった。
「君たちのお父さんとお母さんはもういないし、代わりもいないよ。でも、お父さんとお母さんと同じように、ここで生活をする。いいかな」
桜が少し頷いた。
「あと、色々あって一緒に住んでいるが、私と周は夫婦でも恋人でもない。なんなら周はお父さんでもない」
(ずけずけとまぁ……)
周はやや呆れる。
久方は、歯に衣を着せるのが下手である。いや、そもそも着せようともしないのだ。げんに、まだ小学生にもなっていない椿は、話についていけないらしく視線を忙しく彷徨わせている。
「言うならば、お母さんとママか? オイ」
「…………久ちゃんが『ママ』とか解釈違いすぎて吐きそう」
「あ??? 表出るか???」
「………わたしとおなじ?」
桜が少し顔をあげた。あぁ、うん。と、久方が曖昧な返事をした。
「同じって?」
久方が視線を後ろに向けて言う。周が少し口どもると、久方が睨む。お前また私に黙って何かろくでもないことを、と目で言ってくる。目は口ほどに物を言うとはよく言ったものである。
「………あーーーーー…、のですね。妹んとこ……二人息子なんだよね……」
久方が目を見開いた。桜を名乗った上の子の喪服がスカートだったからだ。
無言で説明を求める久方に、周は経緯を話す。
「………それもあって、押し付け合い始まっちゃってさ。それ、俺の前でするのかーって思ったんだけど、あぁこれ、この子たちには聞かせちゃ駄目だってなって、思わず名乗り出ちゃって……」
「よくやった!!!」
久方は、まるで子犬にやるように周の頭を撫でまわした。その手のひらの返しように周は笑う。
「桜、椿。作らなくていい、隠さなくていい。ここは、そういう家だ」
(私と周が、私と周のままいられるように、作りあげた家だ)