救出作戦3
両方は剣を抜いただけでなく、ベアベルの手には魔力が込められた剣があり、ルーナも相手に応戦する準備ができていた。
「ディラン、狂ったのか?早くどけ」
フェリクスがディランに退くように言ったが、彼は微動だにしなかった。
「みんなやめてくれ!」
ディランの目が強い決意に満ちているのを見て、フェリクスはため息をついてルーナの手を掴んで剣を下ろさせる。
「ルーナ、剣を下げてくれないか?」
「はぁ!」
「俺とディランは、なんというか、お互いをよく分かってるんだ。彼がこうすると決めたなら、彼なりの理由があるし、それに自分自身の決断を貫くだろう。そうだろ?」
フェリクスとディランは互いに苦笑いを浮かべた。まるで、一目で相手の考えが分かるかのようだ。
「すまないな、フェリクス…」
「いいさ」
するとルーナだけでなく、ベアベルも剣を下げた。両者はすぐに静かになった。
その隙にベアベルは元の場所に戻って、棒でまだ焼けていない薪を火の中に入れてくる。
敵意のないベアベルに対しても、ルーナは油断しない。相手は自分の正体を知っているし、いつ自分の命を狙うか分からないし。
だからこそ、ルーナは一番遠くに座って、ベアベルに警戒心を持つ。
「私がここにいるのに、ディランを殺さなかったのはなぜ?何を企んでるの?」
「別に……」
ベアベルはルーナを見ずに火をいじり続けているだけ。ディランはタイミングを見計らって、7号に尋ねる。
「さっきの質問にまだ答えてないぞ。えさとしての役目を終えた僕を殺さずなぜ迷宮の魔物を斬って俺を守ったんだ?」
ディランの言葉にルーナとフェリクスは驚いたが何も言わずに。
「別に、あの魔物はお前を殺した後に僕も殺そうとするから」
「そうか……それで家族はいるのか?」
「ロサナという一人の親族がいるだけ……」
「ああ、そうか。君は確か聖女の末裔でしょ、なぜ女神教の敵になったんだ?理由を知りたい」
ベアベルは彼の言葉に苦笑いしかない。
「なぜか…僕も知りたいけど…」
彼女は隣に警戒しているルーナを見てまた笑っちゃって、まるで、三人を嘲るかのようだ。そんな態度にルーナは我慢できなくなり、立ち上がった。
「何を笑ってる?何がおかしい?自分が何をしてるのか分かっている?魔王が復活したら何人が死ぬと思ってるの?」
「お前こそ黙れ!正義ぶって他人の存在を否定するな!貴様何を知ってるのよ!」
7号ベアベルも立ち上がって彼女に怒鳴った。
二人は再び敵対感情に陥り、激しく感情をぶつけ合って、二人は互いに睨み合い、フェリクスとディランが止めなければ、また喧嘩になっていたかもしれない…
「皆落ち着いてくれ、ルーナ。俺たちも相手の考えを知りたいんだ。少し冷静になってくれないか」
フェリクスの説得に、怒りに燃えるルーナは剣を地面に刺して再び座った。三人は火の周りに戻って、炎を見つめる。
ディランは互いの過去について話すことにして、緊張した雰囲気を和らげようとする。
「ところで、フェリクス、覚えてるかな、僕たちもこんな感じのことがあったよね」
「ああ、そうだ!あはは、あの時は本当にごめんね、ディラン。あれはスキーに行った時だったな、誰が先に雪の妖精を見つけたら勇者になれるとか言って無理やりお前を連れて行ったら吹雪に遭って帰れなくなっちゃったんだよな、それに俺は雪熊に食われそうになったし、お前がいなかったらもう……」
「いいって、あの時は僕たち二人だけが山穴に閉じ込められたんだから、こんな感じで火を起こして暖を取ったり、傷を手当てしたりしたよな」
「俺のせいでお前の腕が雪熊に引き裂かれたんだから、本当に悪かったよ…」
「あはは、ずっと思ってたんだけど、あの事件がなかったら、僕たちこんなに仲良くならなかったかもしれないな、と。もしかしたら、あの熊に感謝してたかもな」
「おいおい!あの時は心が重かったんだぞ」
「ごめんごめん」
火はずっと燃え続けていた。フェリクスはついでに薪を足して、ディランは話題を変えてベアベルに声をかける。
「お前の名前は、熊から守るための鈴の音って意味か?面白いな」
「全然面白くねえ…これは母が自分で僕につけてくれたものだよ。熊とかが急に近づいてこないようにって…でも母は自分で食べられちゃったんだ」
「「……」」
ディランとフェリクスは黙ってしまった。何とか話が重くなりそうだからだ。でも、今度はベアベルが先に話し始めた。
「戦争で孤児になった僕は、他の子供たちと深い山に逃げ込んだけど、最後に生き残ったのは僕だけだった。生きるためには戦場に死んだ兵士たちの財物や武器を集めて売るしかなかった……ある日ロサナ様に出会うまで……」
ベアベルは火に薪を足して、目に無力感が浮かんだ。
-死体だらけの戦場で-
戦争は両者ともに終わらせた。でも戦場には腐った死体や歩き回る不死者が溢れていた。
それに、破れた旗や鎧もあちこちに散らばっている。
チリンチリンと鈴の音が響いてくる。小さな女の子が戦場で死者の金品を集めていて、それと火葬できなかったアンデッドから逃げながらだ。
アンデッドは生きているものを見ると、噛みついて殺すまで離さない。
緑髪の女の子の首には鈴がついて熊から守るための鈴だ。山の中の獣に近づくなと警告するが、アンデッドには効果がない。
面白いことに、アンデッドは彼女にあまり興味がないらしい。遠くから見ているだけだった。
普通の人なら、体の一部がなくなったり、臭いがしたりする死体には近づかないだろう。
ましてや、自分を食べようとするアンデッドなんて。でも女の子は周りにうろつく十数匹のアンデッドを気にしなかった。
『これ高いのかな?全部持っていこう……』
財物を集め終わったら、山の中に財物を隠しに行かなければならない。それから売りに出すことを考える。
彼女は必死にネックレスを引き抜いて自分の袋に入れた。
普通の一日だと思っていたが、大きな変化が起こった。
彼女は背後に大きな影があることに気づいた。だって普通のアンデッドは彼女にそんなに近づかないはずだ。
振り返ると、後ろにいたのはもっと邪悪なアンデッドだった。やつは前にいる少女をじっと見ていて、直感で、彼女は危険だと分かった。
しかし緑髪の少女はじっとしていて怖がっていない。何が起こっても構わないという顔をしていた。
『おお、死者を冒涜する野良犬か。ふむ?野良犬にしては面白いところがあるな。顔を上げて見せろ』
邪悪なアンデッドは彼女の顔を見て興味を持った。
『なんと、聖女の血筋を持ってるとは。なかなか面白いな…これからは私の犬として生きていけ』
火はキーキーと音を立ている。
「ロサナは材料を集めてる時に偶然僕に出会ったんだ。首についてる鈴を見て、ベアベルと名付けてくれた。それからはロサナと一緒に暮らして剣術を習って、最終的には魔王教の幹部の一人になった」
7号の話が終わると、みんなはしばらく黙っていた。焼肉は誰も食べせずそんな気分になれなかったからだ。
その時、魔物たちの咆哮が聞こえる。彼らは火や焼肉の匂いに引き寄せられたのかもしれない。あるいは、他の何かに。
「全員戦闘の準備をしろ」
「なに?これらの魔物は一体何なんだ?ここはどこなんだ?」
「ここは古代の魔王が作ったダンジョン、ここには強大な魔物がいる。しかも奴らは誰にも支配されないし。まあ、僕だけじゃお前に敵わないのは分かってるさ。でもここには無限に湧き出る魔物だぞ、一緒にここで死ね」
「チェ!くそ7号、私を道連れにしようとしてるのか!」
「では始めようか…聖女」




