北方の尊厳、王族の誇り 1
馬車の中の騎士は窓の外の群衆を見て王に状況を報告する。
『陛下、前方にはたくさんの人々が道路をふさぎ、騎士団を出動させて追い払う必要がありますか?』
『まったく、フィラ騎士団は一体何をやってんだ?なぜこんなに多くの暴徒がやって来たんだ?』
『観察では、フォスタンイーンの学生たちが暴徒たちを率いているようです。まったく、勉強せずここに来て何をするんだ?』
馬車の窓の外は平民でいっぱいで、彼らは怒って押し寄せてきたが、警察に棒で撃退される。
この過程は長く続き、馬車は全く進めなかった。
(怖い、なぜ私たちの行く手をふさぐのだろう……)
『カリーナ、そんなに怖がる必要はないよ。私とお母さんがいるから』
『うん、パパ』
幼いカリーナは離さず小さな手で父親を抱きしめて、父親の優しい撫でる手が彼女を少し落ち着かせた。
もう一方の席に座っていたカリーナの母親は窓の外を見て、騎士団の助けを焦って待っている。
『あなた、王都の警備を強化する必要がありますわ。あのフォスタンイーンの学生たちがこんなに多くの平民を引き連れて騒ぎを起こすなんて、本当に教養のない馬鹿者ですわね』
『そうだな……』
王妃も両手でカリーナの手を握って、彼女を落ち着かせる。
『カリーナは教養のある、責任感のある貴族になって、あの馬鹿者たちのようになってはいけませんわよ』
『はい!お母さん』
王妃は満足そうに笑ったが、窓の外は学生たちの不満の横断幕と平民たちの怒った表情でいっぱいだけ。彼らは王室政府に戦死した兵士の名簿を公開することと戦争にうんざりすることと、食べ物と仕事が欲しいというスローガンを要求する。
『パパ、なぜ彼らはこんなに怒っているのですか?私たちは何も悪いことをしてませんよね?』
『大丈夫だって、彼らは何も分からない愚か者だからさ、南方の野蛮人の奴隷になるように戦争をやめろなんて言ってるんだ。カリーナならどうする?』
『絶対に嫌です!南方の野蛮人に征服されたくありません!』
『ははは、そうだね、それこそが私の娘だ』
石が馬車の中に投げ込まれるまで、内部の平和は終わらなかった。小さなカリーナと彼女の母親は悲鳴を上げて、人々は彼らをののしっている。
『俺の息子を返せ!親族を返せ!』
『フィラにいる僕たちまで食べるものがなくなったなんて!毎日南方と戦争をしようとして!何のクソ失地回復だ!』
『下がれ、愚かな王!私たちは仕事と食べ物と私たちの息子が欲しい!』
石が次々と投げ込まれる中、御者は加速して離れることにする。
王はカリーナを守って傷つかせないようにしたが、彼の顔には傷ができていた。それは石に当たった傷だ!
『パパ!あなたの顔が!』
『わかってる……』
(パパは一体何を間違えたんだろう?なぜみんなこんなに怒っているの?そもそも野蛮人に占領された土地を取り戻したいだけなのに、それに北方人は南方の野蛮人の奴隷になりたくないのはどこが悪いの?)
次の瞬間、大きな爆発が馬車をひっくり返し、中の人々は激しい衝撃で馬車の中であちこちにぶつかった。そのせいでカリーナの頭も打ちつけて、たくさんの血が流れる。
その時の国王はまだ意識があって自分のことはかまわず、本能的に身体でカリーナを守る。
その直後、カリーナを守っていた国王の胸に氷の棘が現れ、カリーナはようやく馬車が魔法で攻撃されたことに気づいた。
国王が体でカリーナを守ったおかげで、氷の棘に刺されることはなかった。その時、騎士団の者たちがやってきて、近づいてきた暴徒たちを剣で斬り殺した。
『よく聞け……カリーナはいつも最高だ……君は……北方全土の優秀で素晴らしい王になる……敵に対して弱さを見せるなよ……王族の誇りも捨てるな……私と君の母さんはいつも愛して……』
『やめて!パパ!お母さん!』
騎士たちは馬車の中の息も絶え絶えの国王と王妃を引きずり出した。二人の身体には何本もの氷の棘が刺さっていて、棘からは血が流れる。
カリーナはその時初めて自分の足にも氷の棘が刺さっていることに気づいた。でも彼女は泣き叫びながら父親を抱きしめる。
騎士たちは彼女を国王から引き離し、地面に押さえつけて動かないようにして駆けつけた医者たちが彼女の傷口を治療することができる。
馬車の中の他の人たちはすでに息絶えていた……
-広場に戻る-
城の門の上に立っていたカリーナは広場の人々を見ていてカリーナはあの時の光景を思い出した。
すでに騎士団に守られてあそこを安全に離れていた。
夜も更けていたが、みんなまだ広場に座り込んで、聖女が再び現れるのを待っている。
(はあ、南のクイリザル人がいつでも侵入してくるのに、このやつらはまだこんなにのんびりしているなんて、本当に馬鹿者どもだな。スカーがいればこんなことにはならなかっただろうね、でもトラヴィを失うわけにはいかないし……本当にめんどくさいな)
「カリーナ、怪我がなくてよかった、こんなに多くの暴徒が広場に来てるのに」
「あの時はフォスタンイーンの連中にしっかりと教え込まれたからな。それに王宮騎士団が守ってくれているし、そう簡単に怪我なんてしないわよ。ところで人民は本当に愚かだな、こんなに簡単に扇動されて……動物はしつけが必要だ、ましてや人間」
「その通りだ。人民は簡単に惑わされる、特にくだらないことに。同時に、フォスタンイーンの学生たちと聖女の呼びかけ力を甘く見ていた……」
「確かに私の見込み違いだった。さて、コルネル、クイリザル・カン国の大使館に行って、グルサンを監視しておけ、出てこないようにしろ。私もフェリクス・ウルド・フォスコーロを監視者を送る。そうすれば、あのくそ聖女と魔女を見つけ出せるだろう」
「かしこまりました!」
彼女はコルネルの姿が消えるのを見てから、もう一つやらなければならないことを思い出す。すると彼女は隣にいた騎士に手を振って、彼に近づくように合図した。
「私の命令を伝えろ。すぐに女神教会の神官と主教を全員殺せ、一人も残してはならない。その後、私が新しい主教と他の神官を任命するから」
「え⁉しかし……」
「何だ?私の命令が聞こえなかったのか?彼らすでに国家と人民に背いて魔女とその仲間と協力したんだぞ。この罪だけで一族皆殺しにするのも妥当だ」
「でも……え……わかりました」
「わかっておけ。聖女様はあの魔女に惑わされている。早く彼女たちの居場所を突き止めて、そうすると聖女様を救出しなければならない」
「わかりました」
その騎士はもっと多くの人々を集めて、王都の女神教会に突入する準備をしたようだ。
その時、彼女は一人で部屋に戻ることにした。ちょうど鏡が光り始めたので、彼女は鏡を覆っていた布をめくった。
『カリーナよ、ちょうど知らせようと思っていたんだ。あの魔女候補はもう回収したぞ』
「魔女候補回収した?あのレイラ・フェリウェムのことか?」
『そうだ。回収は非常に順調だった。それに、新しい北方支部の部長も紹介してやろう。お前はもう会ったことがあるだろう、前回出会った紫衣者だ』
「ああ!思い出した。まさかあの老人だったのか?」
『うん。次はあの聖女を始末する。私は身代わりを使って広場で見たぞ。彼女は本当に大きな脅威だね、万物透析の目を持っているだけでなく、優れた指導力と才知も持っている。しかし、最も恐ろしいのは、彼女がメビウス様が予言した聖女かもしれないということだ。それは女神たちに選ばれた少女』
「そうだとしたら、魔王の降臨や復活は……」
『その通りだ。彼女が何であれ、早急にすべての不確定要素を消し去らなければならない。今夜は魔王教本部の会議がある、議題は北方にとっても重要なものだと聞いていた。議題の内容は二日前に眼球ロボットでお前に送ったはずだ。北方教団にもっと貢献できるようによく考えておけ』
「がんばります!」
『ふふ~いいぞ、カリーナ。そうだ!7号については、引き続き捜索を展開してくれ。例え死んでも死体も持ってきてな。魔王にすべてを捧げるために』
「わかりました、魔王にすべてを捧げるために」
言い終わると、すべてが元に戻った。カリーナは櫛を取って自分の髪型を整えながらつぶやく。
「正直言って、魔王なんてどうでもいいんだけどな……私が欲しいのは全北方の女王になるだけだ。そう、全北方を支配した大帝グレーオのように、全北方を私の手に収めるんだ……」




