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広場の騒ぎ

「ルーナ、チラシはもう配り終わった?僕と他のグループの人たちはもう配り終わったよ」

「うん、こっちもそうだけど、どれだけの人が広場に行くかわからないね」

「あとは女神様にお任せするしかないな」


 ルーナとディランは各地の通りでチラシを配っていた。地元の騎士に扮したので、誰も彼らの正体に気づかなかった。

 チラシには広場に行くと王室政府から補助金がもらえると書いてある。その広場では、先生たちと校長を絞首刑にする残酷な刑罰が行われる予定だ。


「もう昼になるよ、かなりの人が集まってるはずだ。行こうか」

「そうだね。ルーナ、あの人本当に大丈夫なの?もし騎士団に内通したら……」

「ああ、それも考えたけど、なんとしてもあの人は本気で女神教を信じてる主教だから大丈夫だと思ってるよ。それにフェリクスもいるし、何かあったら逃げるのを手伝ってくれるさ」

「でもフェリクスに手を出させたら、我が国とスカエリヤ帝国の関係も悪くなるだろうね」

「うまくいくって、だって私は女神様に選ばれた人なんだから」

「はは、そうだね、女神様の奇跡も見たしね」

「本当にごめんね、元々私とあのくそ7号のことで、あなたを巻き込んじゃって……」

「大使館で言ったでしょ、後悔なんてしてないって。もしもう一度やり直せるなら、やっぱり君を助けてくる」

「……」


 ルーナの顔が少し赤くなったように見える。すぐに顔をそらして、大きく息を吐いて冷静になろうとしている。

 ディランは一瞬緊張して優しく彼女の肩を叩く。


「大丈夫?体調悪いの?」

「な、なんでもないよ!さあ、行こう!」


 ルーナは振り返らずに立ち去った。ディランは急いで追いかける。

 しかし、太陽はすでに頭上にあった、処刑の時間は近い。

 広場に着く前に、遠くから人だかりが見える。

 王宮騎士団の人たちが近くで治安を維持していたが、こんなに多くの人が来るとは思っていなかった。

 人は本当に多いな。ルーナたちは広場に入るのが大変。

 ここにいる人たちは、カリーナと王宮騎士団を支持する人と反対する人に分かれている。

 反対する人たちは魔女を捕まえる過程があまりにも乱暴だったからだ。

 両者は罵り合ったり、殴り合ったり、石を投げ合ったりして、現場は混乱していて石やゴミがあちこちに散らばっている。

 警察はルーナたちを見て、救世主を見たように思う。


「おい!お前ら二人、こっちに来て秩序を守るのを手伝え」

「ああ、はい、警官さん、すぐに行きます」


 二人は喧嘩している人たちを押しのけながら、秩序を守っているふりをしながら、人ごみの中を進んでいく。

 広場の中心に行かなければならないから。しかし、大きな音がして、広場全体が静かになった。

 みんなが演壇を見ていて、でもあの二人は止まらず刑場に行かなければならない。

 どうやら騎士団の人が空に何か魔法を打ち上げて、大きな音を出したのだ。

 今演壇に立っているのは、カリーナ。


「皆さん、落ち着いてください。お互いに距離を保ってください。まず、王室政府を代表して、皆さんにお詫びします。騎士団が魔女を捕まえる過程が非常に乱暴で、皆さんに不満を持たせてしまいましたから、本当に申し訳ありません。でも、私たちを信じてください。これは皆さんの安全と未来のためにやっていることです。危険な魔女候補が本当の魔女に覚醒したら、私たちの国だけでなく、世界も滅びてしまうでしょう。あの憎いレイラ・フェリウェムは、フィラ騎士団を簡単に倒し、王宮騎士団第四団長を負傷させました。彼女がどれだけ危険で恐ろしいか、お分かりでしょうか、私たちは彼女を早く倒すつもりです、だから皆さん、引き続き私たちを応援してくださいね。それから、これらの罪人たちを見てください。彼らは憎い魔女に魅了されて、魔女を私たちの手から逃がしました。今すぐ死刑で、魔女をかばった罪人たちを裁きます、皆さんも魔女をかばわないように注意して。では、刑執行を始めよう!」


 刑場の前に来たディランとルーナは、これらの言葉を聞いて、怒りで拳を握りしめていた。

 彼らはカリーナの発言がこんなにも冷酷無情だとは思ってもみなかった。

 でも、もっと無情なのは、校長たちがまもなく絞首刑にされるということだ。

 刑場は巨大な円形になっていて、周りは王宮騎士団の兵士たち。

 第三団長も処処刑台の上で、周囲を警戒して見張る。

 そばには、女神教会の人たちやスカエリヤ帝国の公爵の息子であるフェリクスも見物している。

 校長たちはもちろん、刑場の真ん中で一番目立つ場所。それは高くて大きな処刑台で、下の人たちがはっきりと見えるようになる。

 王宮騎士団の兵士たちは、校長たちの首に縄をかけて、刑執行の準備をした。

 そのとき、ルーナが信号弾を発射し、生徒たちが動き出した。彼らは人ごみの中に潜んで、ずっと待っていた。一瞬にして、刑場は煙でいっぱいになって、状況が見えなくなった。

 でも、王宮騎士団を倒すなんて、不可能だ。卵が石にぶつかるようなもんだ、だから、彼らの目標ははっきりしている。

 ルーナが安全に処刑台に行けるように道を開くことだ!

 ルーナは戦わずに生徒たちのかばいで、ゆっくりと処刑台に向う。

 みんなは現場から逃げ出して、戦闘を避けようとしてる。でも、混雑した人ごみは、なかなか動けなかった。

 しかしこれも騎士団の魔導士たちが魔法を使えない原因になった。

 ルーナは鎧を脱いで、美しくなびく長髪を見せる。

 一列の騎士に向かっても、敵意を見せなかった。

 グラン・ナハティガルはすぐに彼女に気づいて、武器を召喚して戦闘態勢に入った。


「自分から死にに来たのか。今度は逃がさんぞ!魔女の仲間!」


 ルーナは彼に構わずに、背中から翼が生えて、頭上に天使の光輪が現れ、それは聖女の象徴だ。

 古来から、このような神聖な姿は世界中の芸術作品に描かれてきたが、現実にはなかなか目にすることができない。女神教の国では、まさに奇跡と言える光景。

 すぐに彼女は処刑台に向かって飛んでいった。みんなは戦闘をやめて、驚いて彼女を見つめて、誰も言葉を発しなかった。

 逃げようとしていた人たちも止まってしまった。


「皆さん、よく聞いてくれ!私は初代聖女の子孫だぞ!そして、女神様が世界を救うために遣わした使者である!魔女の覚醒を阻止するために来た!でも、もしもあなたたちがこの無実の人たちを傷つけたら、女神様もあなたたちに罰を下すでしょう。私は女神様の代表として、この人たちをすぐに解放するように要求する」


 彼女の言葉はとても力強い。そばにいた女神教会の人たちは次々と騎士団を止めにかかり、教会の人たちに全員ひざまずいて礼をするように求める。

 主教は自らグラン・ナハティガルを阻止し、彼の武器をぎゅっと掴んだ。


「グラン・ナハティガル、すぐに武器を下ろせ。全員、聖女様の要求に従え。早く!」

「くそっ!」


 王宮騎士団第三団長だけでなく、他の騎士団の人たちも武器を下ろして、ルーナに礼をした。すぐに、この行動は広場にいる全員に広がっていく。

 カリーナはその場で呆然とした。彼女はひざまずかなかった。

 彼女は事態がこうなるとは思ってもみなかっただろ、女神教の信徒を見くびっていた。だってここは女神教の国。

 腐敗に飲み込まれても、女神の側に立っているのだ。

 女神教会の主教はカリーナに向かって大声で、聖女の要求を満たすように叫んだ。

 カリーナは怒って歯ぎしりしながら、演壇を叩いた。


「「「聖女が降臨され、我々は従います」」」


 という掛け声を大声で繰り返していた。おそらく、ますます多くの人が聖女の側に加わるだろうね。

 カリーナは今聖女と直接戦うのは不適切だと分かっている。それに、スカーももういないし。彼はトラヴィを守るのが最も重要な人だ。


「ああ……私の国に初代聖女様の子孫がいたなんて……すぐにこの人たちを無罪放免しますので、ご安心ください……」


 事態を収めるために、カリーナは妥協せざるを得なかった。彼女は女神教の国の民意に抗えなかったのだ。

 生徒たちはすぐに処刑台に行って、校長たちの手錠を外し、首にかけられた縄も切った。

 みんなが去ろうとしたとき、人々は自然に二列に並んで、聖女が通れるように道を空ける。

 みんなは聖女について歩いて、歌ったり、祈ったりしている。

 ルーナは騎士の兜をかぶり直した。すると、同じような騎士たちがたくさんやってきて、ルーナを囲んでいて、人々と騎士たちはもみ合っていた。

 ルーナは隙を見て、煙幕弾を投げて逃げ出した。その後、クリリスの案内で、人ごみから離れた。


「聖女様、よくやりましたね。今回は誰も犠牲にならなかったのは、さすが女神様の奇跡ですわね」

「クリリス、からかわないでよ、私たちは同じクラスメートじゃん。あと、騎士に変装した生徒たちにも感謝しなきゃだめね、あそこから抜け出すのは本当に大変だったから」

「ルーナ、港に行きましょう」


 馬車が飛んできて、カロスがドアを開けて二人を乗せた。


 -王都の港-


 ルーナたちは先に港に着いたが、夕日が沈むころだ。

 ピンク色の海はとても美しくてロマンチック。旅行に来たら、間違いなくいい場所だよね。

 もう一台の馬車もここに着いた。ディランたちが降りてきた。


「ルーナ、騒動は収まったみたいだね。でも、フェリクスを呼ばないの?彼も心配してるよ」

「カリーナはバカじゃないから、彼についてくる人を送ってるはずだよ。そしたら、私たちは見つかっちゃうよ」

「そうね」


 今ルーナたちは港の安全を担当していた。

 計画では、レイラたちは絶望の島に近い大漁船に乗って、王都の予定の場所に戻ってくるはずだ。計画はそうなるはずだったが、夜が来ても大漁船の姿が見えなかった。


「ディラン、おそらく何かあったんじゃないか?」

「僕たちにできるのは待つだけだ……」


 そのとき、海面に大漁船が現れた。みんなは無事に帰ってきたようだったね。

 厳しい表情のロランドと落胆したオエリが船から降りたとき、みんなは問題に気づいた。


「ロランド、帰ってきたね!え?こんなにたくさんの人が船から降りたのに、あいつがいないよ。ほら!レイラと彼女の使い魔はどこ?」

「すまん、ルーナ、彼女たちはオイスム教の連中に捕まったんだ」

「頼むよ!僕の妹はどこで捕まったんだ!」


 ルーナは衝動的なディランを制止した。彼がこんなにパニックになるのを見たことがなかったからだ。


「ディラン、落ち着いて!」


 ロランドは船の上の転送門を指さす。どうやらその装置は無傷で持ってきた。


「これがカギだ。内部の魔法を解読できる人が必要だけど」

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