絶望の島 2
その後、モグラはみんなに草むらに隠れて周囲を観察し続けるように合図する。
「お前が言ってた黒髪の女の子は彼を牢屋から出してくれたんだから、彼もお前らの仲間だと思って」
「黄金弓か、じゃあ他の人は?特にあの黒髪の女の子は?」
「おいおい、あたし以前はどうやって仕事をしてたか忘れちゃった?いつも通りに報酬で情報を手に入れるんだ」
「チェ、面倒くさい奴だな……それに何を企んでる?お前のことをよく知ってるぞ」
「あはは、何でもない」
ロランドは内部の状況を見ようとしてるが、かすんだ霧が遠くを覆っていて、近くのところしか見えず内部なんてもっと無理だ。
「くそ!霧が濃すぎて中が見えねえよ」
「あの時と比べたら今はずっとマシだよ、霧もだいぶ晴れてきたし」
「あの時ってなんだ?」
「ああ、独り言だけ」
ロランドはこの「旧友」を少し疑っているけど、黄金弓もいわゆる「仲間」だ。少なくともルーナとレイラの敵ではないし。
オエリが遠くに変なものに気づく。それはカラフルな泡だったか!
「みんな、あそこを見てください!王宮暗殺事件の時とまったく同じものです!」
ロランドは双眼鏡で遠くを見たときに初めてカラフルな泡に気づいた。あれ!入ってきたときにはそんなものはなかったのに!
「ええ~これがお前があたしたちを中に連れてきた理由か、モグラ。あれのせいで出られないんだろね、さもなければお前の腕前ならどうにでも一人でここから抜け出せるはずだ」
「はは、まあね、あれにこの島に閉じ込められちゃったからさ、お前らに手伝ってもらうしかなかったんだよ~」
不気味な建物と不死者の守衛を見て、ロランドは眉をひそめる。
不死騎士の強さを知っているロランドとオエリは、無理やり突入するのは自殺行為だと分かっている。不死騎士がフォスタンイーン学校の中で活躍したことは皆知っていたから。
「ロランドさん、あの不死騎士をどうやってかわしますか?お嬢様が言ってたけど、あいつはすごく強いんだって、接近戦じゃダメって」
「本当にめんどくさいな……あっ!いい考えがあるぞ!」
「「え?」」
ロランドは笑顔でモグラの肩を軽く叩いて、彼女を戸惑わせる。
その後、モグラを力いっぱい蹴り飛ばして、モグラは草むらから飛び出してかなり遠く転がってでしまった。
彼女は立ち上がってお尻をさすりながらロランドに怒鳴った。
「貴様!死にたいのか!殺すぞ!」
しかし、モグラは自分の背中に強烈な殺気を感じて、ぞっとしてる。
不死騎士は彼女に気づいてすぐに動き出して彼女に向かって飛びかかる。
モグラも相手が手強いことは分かっていて、慌てて逃げ出す。
しかし不死騎士はすぐに彼女のそばに来て、彼女の背中に向かって剣を振り回していて、でも驚くことに一度も当たらなかった。
モグラの身のこなしはウサギのように敏捷で速い。さすがはプロのスパイだと感心せざるを得ず。
不死騎士は魔力を剣に集めて前方に振り下ろそうとして、モグラは異変に気づいてすぐに上方に跳び上がった。鋭い剣風がモグラの横をかすめて、彼女は少し擦り傷を負っただけだ。
でも一番やばいのは、モグラの後ろに気づかないうちに大量の不死者が追いかけてきていることだ。
遠くのオエリは裏で操る人に呆れていた。
「ロランドさん……悪い報いがありますから……」
「いや、さすがはモグラだな、一般人ならとっくにあのアンデッドたちと同じ死体になったよ。さあ、行こうぜ」
「でも、モグラさんは死にますよね……だってこんなにたくさんのアンデッドが追いかけてるし」
ロランドはオエリの両肩を掴んで、真剣に見つめる。
「よく聞け、オエリ、この時は仲間を信じるんだぞ、どうせあたしと彼女は昔からの知り合いだし、彼女の腕前なら絶対に死なないよ、あたしずっと彼女を信じてるから、お前もあたしと同じように彼女を信じてくれ」
「感動的なことを言ってるけど、次はやめてね……」
そうして、二人は何の守衛もいない状態で、この不気味で暗い建物の中に入った。
「ここは!」
「ロランドさん!ここすごく臭い……」
「これをつけて、中の空気を嗅がないで、瘴気があるんだ、長時間吸い込むと体に良くないよ」
「はい!」
二人は医療用マスクをつけて中に入った。でも中の腐った死体の臭いが伝わってきて、オエリは吐きそうになった。どうやらここは死体を保管する場所らしかった。
それだけじゃなくて、ここには巨大な機械があって、とても複雑に見える。
不死者の労働者たちは二人に気づかずに、ひたすらに働いている。
死体を運ぶのもいれば、機械を操作するのもいるし。
巨大な鉄の箱の中にはたくさんの死体が保管されていたが、一番大事なのは、中に横たわっていた黄金弓マイク・ティーロを見つけたことだ。
「ロランドさん、あれは黄金弓どのよ、見に行こう」
二人は上に登ろうとしたが、オエリは途中で止まらざるを得なかった。
やっぱり死体だもの、彼には死者たちを踏む勇気がないから。
ロランドは何のためらいもなく、上に登って中の黄金弓を引きずり出して、すぐに地面に戻す。
ロランドの簡単な診断によると、彼は失血過多で昏睡していて、傷口も感染していた。
でもロランドはこのような状況に備えて救急箱を持っているので、現場で治療できる。
自分の手を消毒して、彼の治療と消毒を始める。その後、包帯を巻いた。
「こいつの命は意外としぶといな、ん?体に再生能力があるのか?」
「どういうことでしょう?」
「さあー」
薬を飲ませて、ロランドの治療魔法を加えて、黄金弓の状態はだいぶ良くなってゆっくりと目を開けることができる。
「ロランドさん!やっぱりすごいですね!」
「はは、当然だよ、何と言ってもイビリヤスロイヤル医学院の卒業生だからな」
「いや、すごいですね!」
その時、黄金弓は一気に目が覚めて、飛び起きて、二人は驚いた。
「まだ起きちゃダメだぞ、傷口が悪化するから!」
「あなたは?」
「神官のロランド、命を救った医者でもあるぞ、隣はフォスタンイーンの学生オエリ。でも治療代はちゃんと払ってね」
「こんな時にそんなこと言うのかよ……でも話は変わるけど、ここはどこだ?」
周りのコンベアベルトは死体を運んでいて、次々と真ん中の巨大な機械に送り込まれていてすぐに機械の下から新しい不死者が現れる。
ゾンビのような姿で、服も作業員のものだ。黄金弓はこれに疑問を感じるだけ。
「ここはアンデッドを作る場所みたいだけど、原理は何だ?アンデッドはこうやって作られるものではないだろ」
ロランドは軽く咳をして、ここは専門家に任せるべきだと思う。
「間違ってないよ、死霊術以外に、一般的には生き物が死んでから七日以内に火葬しないと、死体はゆっくりと自然の瘴気を吸収してアンデッドに変わるんだ。瘴気は大地の毒だから、この過程を避けるのは無理だ、でも毎日瘴気を除去できるなら別だけど」
「じゃああの機械は?」
「瘴気を作る機械かな?確かじゃないけど」
あの機械を見て、黄金弓は怒って自分の拳を握りしめる。
王都の目の前でこんな邪悪で道徳に反する機械が動いているなんて信じられないだろ。
みんなが知っているように、人工的に不死者を作ったり、死霊術を使ったりするのは、人権や基本的な道徳に反することだ。
現実世界で超級ウイルスを作るようなものだ。
黄金弓は二言もなく自分の武器を召喚したが、彼の武器は使い魔から変化ではないようだ。
力を溜めてから、大量の魔力を凝縮した金色の矢をあの機械に向かって放つ。
ついに機械を完全に破壊した!すると拡声器から不満な咆哮が聞こえる。
『劣等生物め!ロサナ様の貴重な機械を壊すとは!てめぇらには代償を払わせるぜ!』
すぐに三人は足音がどんどん近づいてくるのが聞こえてきて、相手はここに兵力を集めているようだ。
『まずお前たちを苦しめてからアンデッドにしてやる、一生ここで俺たちの事業のために働け、ハハハ!』
その時、屋根が剥がれて、巨大な石が落ちてきた。みんなは隠れるところを探して避ける。
上を見上げると、目が覚めた紫水晶竜がいる。その目は再生していて、前の侵入者に怒りを向けている。




