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絶望の島 1

 霧が海面に広がり始めると、ロランドも何かおかしいと気づいて、漁船の照明灯をつけて周りを見回す。

 オエリも一緒にボートを漕いでくれて二人はすぐに絶望の島の海岸に入ってしまった。


「待って……この霧、やっぱり不自然だよね、なんか変な感じがする」

「ロランドさん、これは一体どういうことなんですか?」

「悪い予感がしてるし、とりあえず中に入ってみようか」


 二人が漁船から降りたとたん、足音が聞こえてきて、それは巡回している騎士たちだった。

 すぐにロランドはオエリを引っ張って草むらに隠れる。


「入りたいところだけど、お前とあたしの力じゃ無理だろうね、レイラたちに申し訳ないけど、とりあえず撤退しよう」

「あはは……ロランドさんは僕を信用してないみたいですね……」


 そのとき、女の子の叫び声を聞いた。その子は逃げているようだ。

 すぐに近くの巡回している騎士たちが音に向かって行く。

 二人もついて行ってみると、監獄の塀の外にライダースーツのような服を着た女の子が騎士たちに囲まれていた。あの様子に見ると彼女は逃げ場がないようだ。


「行こう、あの女の子を助けなければなきゃ、もしかしたらフォスタンイーンの生徒かもしれませんし」

「その子の悲鳴はどこかで聞いたような気がして、でもあたしたち二人じゃ無理だと思うけど、あたし戦えないし、だからさ……え?」


 オエリは自分の使い魔ジャスパーを呼び出し、白い巨竜は光になって彼の身体を包んだ。

 一瞬で彼の服は消えて光になり、最後にはとても可愛いロココ様式の服になる。そして手には可愛い魔法の杖も持っていた。スカートとかじゃなくて残念だけど、これもいいね!


「可愛い……」

「ロランドさん……かっこいいと言うべきでしょう……」


 オエリは魔法の杖を振って魔法を使い始める。一瞬で周りの魔力が彼の身体に集まった。

 やはり、騎士たちは彼らに気づいて剣を抜いて侵入者を消し去ろうとした時、オエリは魔法の杖で小さな嵐を起こして騎士たちを吹き飛ばして地面に叩きつけた。普通の人なら気絶したり骨折したりするだろうけど、騎士たちは何事もなかったかのように立ち上がった。


「え⁉僕、手加減しなかったのに……」

「気をつけろ!」


 騎士たちは変装を解いて恐ろしい顔を見せてそれは真っ黒な骸骨だ。

 これで彼らの力が解放されたようだ。もっと速くて敏捷になって、オエリの風魔法をかわしている。


「え⁉アンデッドだったの⁉これはどういうこと?」

「ぼーっとするな!」


 ロランドは足元にアンデッドを追い払う道具を投げた。一瞬でアンデッドたちは視界を失って苦しそうだ。

 この隙に、オエリは風刃でアンデッドたちを腰斬りにした。彼らは黒い砂になって消えていった。


「ありがとう、ロランドさん!」

「あれは1000トゥルを払った不死払い石だぞ!ったく、仕方ないな、レイラの給料から引くか」

「そんな必要ないですよ……僕が払いますから、お嬢様には払わせないでください」

「ふん~まあいいか、でも……周りのアンデッドたちをどうするんだ、ずっとあたしたちを待ってるぞ……」


 二人は周りを見回していて、濃霧の中にたくさんのアンデッドの兵士が現れる。

 不死騎士と比べて小さくて弱々しいようだ、その上に強力なアンデッドでもないし。

 それでも、この数では二人では対処できないだろう。


「おい、二人ともこっちに来い!飛び立つぞ!」


 その女の子は彼女たちを自分のそばに呼び寄せて、変なものを取り出してそれは風船のように見えるけど。


「ロランドさん、僕にしっかりつかまってください!」

「え⁉わかった!ああ!」


 突然その女の子は足元に風船を投げたとたん、みんなが空に飛んでいった。高所恐怖症のロランドはオエリの腰と太ももにぎゅっと抱きついている。

 その女の子はもう巨大な凧で空中を滑っていた。


「女神様!風の祝福を!」


 下のアンデッドの弓兵たちは三人に矢を放って落とそうとしてるが、オエリが風の祝福という魔法を使って矢を外したおかげで助かった。でも魔力をかなり消耗したらしく、オエリは汗をかき始めていた。

 空から見ると、アンデッドたちは漁船を占領していた。


「くそ!漁船が見つかっちゃった、もう帰れねえよ、オエリ、あっちの屋根に行こう」


 そうしてみんなはやむなく監獄の建物の上に降りた。疲れ果てたオエリは息を切らしていた。


「大丈夫か、死にそうな顔してるぞ」

「はあはあ、お嬢様に教えてもらった魔法は魔力を消費するのがすごいんですよ……」

「それはそれとして、もうこんなに時間が経ったんだ、レイラたちはきっと何かあったんだろうな、ちゃんと調べなきゃだめね」

「でも、こんなにたくさんのアンデッドが……」

「そうだな、困ったよ」


 突然、その少女がロランドの耳元で話しかけて風のように優しい声だ。そのせいでロランドはびっくりして後ずさった。


「あれれ、ロランドじゃん、久しぶりだな」

「お前はモグラか⁉こんなところで会えるなんて……運が悪いな……」

「ははは~そう言わないでくれよ~革命軍の仲間だろ~まあ、ここで会えるとは思わなかったよ。でもお前たちが誰を探してるかはだいたいわかるさ」


 モグラは二人について来るように合図して二人は顔を見合わせたが、仲間だったからロランドは疑わずについて行った。

 三人は複雑な監獄の建物の間を行き来しながら、捜索しているアンデッドたちを避ける。

 その後、三人は一時的に安全な路地にたどり着く。


「なあ、ロランド、よくイビリヤス帝国の正規軍から逃げ出せたな、もう死んだと思ってたよ」

「昔の話はいいから、あたしたちは人を探してるんだ。うん、あの女の子は黒髪で緑の目をしてて、ちょっとバカっぽい感じだ。あ!あと一群の生徒も」

「お嬢様はバカじゃないですよ!」

「はいはいはい」


 モグラは考え込むように顎をなでる。


「この島から逃げ出すのを手伝ってくれるなら、人探しに協力するよ。だってあたしの船は絶対に見つからないから」

「わかったよ、それも仕方ないしな。あの女の子以外にも他の人は?この島は一体どうなってるんだ?なんでアンデッドだらけなんだ?」

「知らんよ。どの鳥が今うんこするかもわからないのに、なぜこの島がアンデッドだらけなのか知ってしまったのだろうか?」

「まあ、そうだな。ところで誰に頼まれて来たんだ?お前がそういう命がけの仕事をするとは思えないけど」

「本当に後悔してるよ、こんな仕事を引き受けるなんて、知ってたら絶対にやらねえ」


 モグラは双眼鏡を取り出してロランドに渡して彼女に前方の建物を見せる。

 でも双眼鏡の中に現れたのは、巡回している大きなアンデッドの騎士だけだ、彼が守っている場所は暗くて恐ろしく、アンデッドの労働者たちが囚人たちの死体をその場所に運んでいるようだ。


「あの場所は確かに変だけど、どうしたんだ?」

「それはレイラ・フェリウェムの知り合いの黄金弓が中にいるからさ、でももう死にかけてるぞ」

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