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「あの、フェリウェムさん、巡視艇にもうすぐ近づくよ。もっと近づいたら怪しまれるから」

「ありがとう、ジェフさん。ここまででいいよ」


 あの巡視艇は明るい黄色の魔法の灯をつけて、周りの海を照らす。

 漁船の上に座っていると、夜でも白い月光の下で遠くの島や海面を走る巡視艇がはっきり見える。

 漁船はすべての光源を消してゆっくり近づく。そうしないとすぐに見つかってしまう。

 今のところ何も問題はないけど、軍艦に遭遇したらお終いだ。

 クリリスは情報収集に忙しくて、こんなことをさせるのは申し訳ないと思っていた。

 しかも戦闘が起きたら島全体が完全に封鎖されて、軍艦もやってくるだろうね。運が良ければ戦闘を避けて内部に直接侵入できるかもしれないが、リスクはあまりにも大き過ぎる。


「わー、海だ!ハルカは初めて見たよ!」


 念のためハルカも呼び出したが、彼女はさっき言ったことを全然聞いていないみたいだ。

 海に向かって大きく息を吸って、手にはお菓子を持っている。

 ロランドは足を組んで私の隣に座っている。彼女の任務は潜入ではなく、ここで私たちを待ち受けて、怪我をした生徒たちを治療することだ。


「お前の使魔は面白いね、変形できるだけじゃなく意識もあるんだ」

「あはは……うるさいけどね」

「運がいいね、こんな使魔がいるなんて」

「その通り」


 ハルカは食べ物で魔力を補給できるし、私も主人としてハルカの魔力を吸収して自分の魔力を回復できる。でもこの魔力じゃ魔女の力の消費には全然足りないけど。

 あれ?主人じゃなくて使魔みたいだ、私……

 これからもハルカに頼らなきゃ生きていけないのかな?でも彼女が海を見て嬉しそうにしているのを見ると、別に構わない気がする。これで基本的な生活や普通の魔法を使う魔力はあるし。

 魔女の力を使えないことを考えると、ハルカも今回の作戦に参加させるしかなかった。戦力が一つ増えるのは悪くないしね。

 その時オエリちゃんが潜水装備を渡してくれる。オエリちゃんもロランドと同じで私たちを迎えに来てくれる人だ。怪我をしているのに頑張って来てくれる。

 そう言えばお兄ちゃんもそうだよね。彼もスカエリヤ大使館に大人しくしていられるタイプじゃないしね、フェリクスが大使館の保護を提供してくれなかったら、お兄ちゃんたちは隠れる場所がなかったろう。


「お嬢様、気をつけてください」

「うん、わかってるよ。そろそろだね、みんな準備はいい?」


 私と一緒に任務をする人は少ない。ハルカやジェフさんも含めて六人だけだ。でも人数が多すぎると邪魔になるし、潜入には不便。

 そうして全員が潜水鏡と酸素ボンベをつけて、私と一緒に水中に飛び込んだ。私たちは計画通りに二人一組で行動する。


『ハルカ、何やってるの?こっちだ!』

『あはは、ハルカはちょっと興奮してる。潜入作戦だもん、まるでスパイみたいだ!』

『スパイか……』


 私の使魔だから、ハルカが私との繋がりを切らない限り、水中でも心の繋がりで話すことができる。

 そういえばこれは初めてかもしれない。主人と使魔が全く隔たりなく、本当に共に戦っている……

 あれ?足元に何かが泳いで行った! 水中では次々と魚の群れが私たちの下を速く泳いで行く。

 それは青い光を放つ小さな魚で、近海青光魚という名前らしいぞ。プランクトンを食べる可愛い生き物で、普段は夜しか出てこない。


『わあ!水の中は本当にきれいだね、いっぱい小魚!』

『任務を忘れないでね』


 月光の照らしで、水中の視界はかなり高い。念のために暗視ポーションも使ったけど。

 巨大なイソギンチャクが触手を伸ばしていて、あまり見たことがない生き物だから、何なのかよくわからない。

 でもバカでもわかるように、あの触手には触れちゃダメだ。イソギンチャクは毒があるんだから。異世界でも同じだと思う。


『ええと、ハルカ、足がしびれて動けないよ……』

『え?ハルカ⁉』


 ハルカのバカ、あっさりと巨型イソギンチャクに捕まってしまった!二本の触手が彼女の足に吸い付いて、すぐにすべての触手がハルカに向かって伸びてくる。

 嫌だ!もうイソギンチャクの口に送り込まれそうだ!仕方なく光魔法で触手を切断する。

 彼女に近づきながら、光魔法の光圧で触手を切っていくと、ハルカはやっと解放された。でも彼女の下半身はまだイソギンチャクの口の中にあって、力づくで引っ張り出さなきゃいけない。

 苦労してハルカを引き出した後、彼女はぼーっとしていた。仕方なく彼女の手を引いて前に泳いで行った。

 それから前方にはたくさんの魔法罠があって海面には透明な風船みたいなものが浮かんでいて、風船の下には長い魔力線がある。

 夜だと全然見えないだろね、あの風船は水牢魔法を作って、魔力線に触れた人を閉じ込めるんだもの。

 いや、水雷みたいなものだね。これは島に近づいてるってことだ。

 暗視の能力を使って罠を避けて行った。やっぱり私の判断は間違ってなかったみたい。

 やっと渔夫の息子ジェフが教えてくれた目立つ岩礁の近くに着いた。そして私たちの前方には絶望の島の埠頭が見える。そこには軍艦も停泊しているようだ。

 島に着いたとしても、ここから監獄まではまだ遠い。みんなは無事に目的地に着けたかな。


「ハルカ?少し楽になった?」

「うん……多分……」


 ハルカはまだ死んだような顔をしているけど、彼女は使魔だから理論上大丈夫だと思う。

 岸辺では騎士たちが巡回していて、上には弓兵がいっぱい。潜入するには良くない場所だ。

 岩礁の近くで潜水装備を脱いだ後、私たちはゆっくり泳いで行く。

 ハルカが毒にやられて時間がかかったけど、やっと海岸に着いた。

 巡回の弓兵と騎士たちが離れたところで、私たちはすぐに小走りで進んで、やっと警戒が厳しい監獄が見える。

 でもここが問題だ、どうやって潜入するんだろう?

 塔には探照灯と弓兵がいっぱいで、下には騎士たちもいるし、災厄のは近くには魔力感知器もあるぞ。あれは白いアンテナみたいなもので、近づいて魔力を使ったら、警報が鳴るかもしれない。しかも目に入ったのは亜竜もいる……

 種類は紫水晶亜竜だと思うけど、紫水晶のトゲを発射したりする厄介な奴だ。魔女の力がなければ、なかなか倒せない……

 まあ、魔女の力を使えば、あいつの紫水晶の竜鱗を簡単に砕けるけど、普通の人の魔力じゃ、くすぐりにもならないだろう。

 とにかく強行突入は自殺行為だ。

 でも最後にいい考えが浮かんだ。ハルカを見ると、彼女も何をすべきかわかっているみたいだ。

 ちょうど私たちの前には弓兵が小さな木立の中で小便をしている。これはチャンスだ!


『ハルカ、行くぞ!』

『うん!』


 私は石を持ってハルカは牽制を担当する。やっぱり相手は全然警戒してなくて、すぐにハルカに押し倒されて、それから私は石で頭を殴って気絶させた。

 ハルカが彼の顔を触って、すぐに彼と同じ姿に変わって、その服もまったく同じだ。

 魔導士なら他人の姿に変化する魔法は特別な道具が必要なので今使えないし、それに時間もない。


「ハルカ、あんたの能力はすごいけど、私はまだ変装してないんだよ」

「ああ、ちょっと待って」


 ハルカはスライムの姿に戻って、私の頭に飛び乗ってすぐに全身を溶かして私をべとべとにした……


「ちょっと!何やってる……」


 でも不思議なことに、私はあの弓兵に変わってしまった。自分の手を見てやっぱり手は男性の手だ、しかも服まで変わってしまった。ハルカがこんな方法で私に変身させるなんてすごい……

 その弓兵を隠してから、監獄の正門に向かうが、止められてしまった。


「おいおいおい!止まれ!お前覚えてるぞ。外で見張りしてるんだろ?何で中に入ろうとするんだ?」

「ええと、うんち!わ、僕は中でうんちしたいんだけど」

「そうか……トイレに行って早く自分の見張り場所に戻れよ、怠けるなよ!さっさと行け!」

「あ、はい!」


 長官は私を正門から入れなかったが、小さな扉を指さした。こんなに簡単に入れると思わなかったが、中はとても広い。

 お父様や捕まった仲間たちはどこにいるんだろう?

 暗い小道に入って、ここに倉庫があることに気づいた。それから騎士たちが入ってきた荷物をチェックしているのも見る。

 どうやら荷物は全部ここに送られてくるんだね、やっぱり私の選択は正しかった。

 倉庫の近くの建物を見ると、そこは明るく灯されていて、人影が行き来しているのが見える。ひょっとしてそこが牢屋なのかもしれない。

 でもそのとき誰かが近づいてきたのを感じて、殺気がある!避けたけど、暗い小道から女の子の声が聞こえる。


「チッ!失敗したか、じゃあ死ね!」

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