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 オエリちゃんは地下の寝室で休んでいる。ロランドのおかげで傷もだいぶ良くなった。私も修道女のような服を着ているけど、この服は大きすぎるようだ。

 色々な事情でロランドの診療所で助手になった、でも診療所の扉が開かない!ただの壊れた扉くせに!


「ロランド!この扉が開かないよ!」

「ああ、力を入れすぎないでね、そうするとまた……」


 突然バンという音がして、扉が落ちてゆかに叩きつけられ、木の板で作られた壁も一緒に裂けて、窓も落ちて割れた。

 そして割れる音がはっきり聞こえる。ロランドは頭をかいて私の肩を叩く。


「給料から引かせてもらうから、あとはあたしに任せろ」

「あ、はい……本当にすみません……直しますから!」

「貴族令嬢のくせに……やめとけよ」


 彼女はツールセットを取り出して扉や壁を修理し始める。ハンマーの音が私の耳に突き刺さる。

 でも診療所の外ではざわめきが聞こえてきた。どうやら人が来たようだが、まだ9時にもなっていないのに。

 診療所の外に出ると、すでにたくさんの人が診療所の近くに立っていた。まあ、ほとんどが老人だけど。

 幸いマスクをつけていたから、魔女という事実がバレたらまずい。


「助手さん!彼らに中に入れてあげてください」

「あ!はい、どうぞお入りください」


 ロランドはハンマーを私に渡して扉や壁を直すように合図する。

 そのお婆さんは椅子に座って、私に親切に頷いて挨拶して、私も手を振って返す。


「ああ、スミスさんですね。お足は最近どうですか?動けますか?」


 ロランドはしゃがんで優しく彼女の両足に触れて、ゆっくりと足首を動かしてみる。

 その仕草も声もとても優しくて、私が知っている神官とは思えない!


「はは、神官様のお薬のおかげでこんな風に歩けるようになりましたわよ、さもなければベッドで寝てばかりで、仕事もできませんし、本当に感謝していますわ、女神アニナがあなたを守ってくれますように」

「ありがとうございました。それは良かったですね、両足をよく動かしてくださいね。あと、お薬も湿気の多いところに置かないように気をつけてください」

「それでですね、神官様。診察代とお薬代はちゃんと払えますから、どうか受け取ってくださいませ、それからこれもどうぞ」


 スミスさんは足元のカゴをロランドに渡そうとしたが、ロランドは卵を受け取らずお金も半分しか受け取らなかった。私には診察代とお薬代も安いように見えるけど。


「スミスさん、あなたの暮らしはわたくしよりもずっと大変だと思いますよ、それにあなたは病人ですから、栄養も必要ですし、この卵は本当に受け取れません」

「そんなこと言ってられませんわ!お金も半分しか受け取らないなんて!私は恥ずかしくてたまりませんわ!」


 スミスさんのしつこい押し付けに、ロランドも仕方なくカゴを受け取った。スミスさんは満足そうに笑う。

 でもロランドは私に向かって怒った目で一瞥した。言葉がなくても、彼女の心の中で何を考えているか、何を言いたいか、多分わかる。


『甘やかさせたお嬢様よ、あたしの診療所で働いてるのにただハンマーを持って何もせずあたしが人に診察するのを見てるだけ!しかも扉も直さず!まだこんなことしたら給料は一銭も出さないからな!さっさと働け!』


 うん、彼女の目からはそんなことが読み取れる……

 だけど私もこれでは悪いと思って、素直に壊してしまった扉や壁を直す。

 考えてみれば、この世界に来てから初めて他人のところで働くことになったんだよね?ギルドの依頼は仕事と言えばそれも仕事だけど、あれはもっと自由で危険なものだった。

 魔法でこれらを直したいと思ったが、人々の疑いを引くのでやめた。

 でもロランドが想像以上に優しいとは思わなかったよ。患者にもとても気遣っているし、それに彼女はなんとゆすりをしないなんて!


 -昨日のことを思い出す-


『魔女の第二段階か?』

『そうだ、あたしが言ったように、第二段階の魔女候補は他人の生命力を吸って成長する必要があるんだ。食事や休息では魔力を回復できないからさ』

『でも……』

『受け入れがたいことだろうけど、魔力を得る他の方法があれば問題ないはず。あたしもずっとそんな方法を探しているんだ』


 ん?魔力を得る他の方法?私には少しヒントがあるような気がするけど、本当にできるのだろうか?とにかく試してみるしかないよね。

 その時ロランドが優しく私の名前を呼んで私を現実に戻した。


『やっと現実に戻ったか?ところで、レイラ、魔女と魔王がこの世界にどれだけの危害を及ぼしているか知ってるか?』

『え⁉魔王は平均345年に一回現れて魔女は平均260年に一回現れるんでしょ?魔王が現れるたびに人口の半分くらいが死ぬし、魔女の場合は三割くらい死ぬんだよね。一番ひどかったのは500年前に最後の魔王オイスムと第六の魔女が同時に現れた時で、人口の七割が死んだってこと』

『そうだ、魔王と魔女の存在は人口減少だけでなく世界文明の後退も招くよ、魔女は魔王ほどではないが、それでも手ごわくて恐ろしい存在だ。お前は魔女候補としてこのことを理解しておくべきだ。もし間違った道を選んだら、世界はお前のせいで多くの人々が死ぬことになるんだぞ』

『それはもちろんわかってるよ』

『よし、だからあたしが魔女の印を解除する方法を見つけるまで信じてくれ!その前に自暴自棄にならないでくれわかったか?』

『うん……』

『ありがとう』


 最後の釘が打ち込まれるまで、やっと現実に戻った。

 扉や壁を直し終えた頃には、ロランドの診療所にはもうたくさんの人がいた。


「修理は終わったのか?それじゃあ、助手さん!あの紫色の薬液と、あの粒状の黒い錠剤を持ってきてくれ!」

「ああ!はい」


 薬をロランドに渡した後、彼女は私にベッドに座っている老人の包帯を替えるように言った。

 すぐに看護用具と薬を持って彼女が指示した場所に行ったが、その老人の両手はやけどの跡でいっぱいだ。

 慎重に消毒してロランドの薬を塗ってから包帯を巻いた。その老人は私に満足そうな笑顔を見せる。


「すまないな、お手数をかけた。君は新人か?初めて見るね」

「あはは、別に大したことないですよ。私はロランド様の弟子だから……」

「そうか、君の処置はとても丁寧だね、きっと優しい娘さんだね。女神アニナがあなたを守ってくれますように」

「女神アニナがあなたを守ってくれますように」


 スラム街の人々はお父様が言っていたようなやばい人たちではなかった。彼らも私たちと同じで、ただ運命が違うだけだ。

 昔の自分に反省したい。

 どれくらい時間が経ったのだろう、診察室の人々がやっと全員帰って行った。でも空はすっかり暗くなっていた。

 私も疲れ果てて、椅子に座って休んでいる。こんなに疲れるとは思わなかった……

 看護師や医者になるのは以前思っていたよりも大変だ、よかった私は前世で医学生ではなかった。

 突然私の顔に何か冷たいものが当たった。そのせいでびっくりした!

 振り返るとロランドがこそこそ笑っていて、私の反応が面白かったのだろうか?


「はいこれ、助手さん、今日はお疲れ、思っていたよりも薬に詳しかったんだね、本当に助かったよ、それに患者さんの看護もきちんとやってくれて、みんな裏であたしに言ってくれてさ、優しくて辛抱強い弟子だってね、あ、それからもう一つ、おばさんがお前に食べるように言ってくれた、お尻が小さいと子供が産めないからって、これは彼女からのパンだよ、もうテーブルに置いといたから」

「ええ……左様ですか……」


 こんなことを言われても苦笑するしかないよ……

 それに私まだ14歳だよ!14歳で子供を産むなんてできるかよ!でもこのスラム街では女の子が14歳や15歳で子供を産むのが普通なのかな?

 でもパンは美味しいんだ、だって、昼食も食べる時間がなかったから。

 ん?ロランドがくれたのは冷え冷えのビールだろう?まだ未成年だよ!あ、違う、私はもう大人だ、前世でもビールを飲んだこともあるし、この世界の法律では14歳で酒を飲んでもいいんだろう?法律に違反していないから問題ない!多分?

 そして一気に冷たいビールを飲み干した。でもこのビールは全然美味しくない。苦い…… 飲まない方がいい……


「おお、気合が入ってるね!才能があるよ、さあ、一緒に酒を飲もう!」

「ええ……いやだよ、この酒は全然美味しくない……苦い」

「ははは、苦いのが大人の味だよ、さあ行こう」


 ロランドは私の肩を抱いて、地下室に酒を飲みに行こうとする。

 でも本当にこんなまずい酒を飲みたくないな。

 その時診療所にノックの音がした。こんな時間に誰だろう?ロランドは私にドアを開けるように合図した。


「来ましたよ、でも今はもう営業終了ですから、明日また来てください」


 でも相手は返事をしなかった。ドアを開けると、診療所に来たのはなんとフェリクスだった!


「フェリクス兄ちゃん!」

「よう!レイラちゃん、元気そうでよかった。これから王都で一番大きな牢獄に潜入して、フォスタンイーンの人々を救出するんだ。もちろん君の父さんも含めてね」

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