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クーデター編4

 ステファノは油断せずじっと見ている。この男も自分と同じくかつては金剛級の冒険者だったし、ましてや真竜族を倒したことがあるのだから、あれは本物の竜だぞ。


「安心しろよ、追っ手なんていないさ。奴らにはその場で待機するように言ったから、俺様は優しいだろ。カリーナ・レシア・アゴストはあの金髪のガキを見逃せと言ってたけど、俺さ、お前ら全員ここで死んでもらわないといけねえんだ、だってあのクソガキが何様だよ」


 スカーはゆっくりと鍛冶屋から出てきて、腰に差した刀を抜いた。

 真っ黒な刀身だが、真白な月光の下できらきらと輝いている。


「これは赤月という名のいい刀だぜ。東洋から運ばれてきた芸術品だとかさ、でもこの芸術品はまだ完璧じゃない。まだ誰の血も浴びてないからな、というわけでお前ら四人から始めようか」


 スカーは言い終わると手に持った刀を四人に振り下ろして、赤黒い巨大な剣風が津波のように襲ってきて、地面をすべて吹き飛ばした。

 ステファノはすぐに剣を抜いてその剣風を受け止めたが、猛烈な風に三人が吹き飛ばされ、鋭い剣風がフランドたちに傷を負わせ、三人は怪我をした。


「大丈夫ですか!」

「ゴミたちを心配する暇があるのか?」


 スカーは非常に速い速度で走ってきて、ステファノと刀剣の戦いを始める。

 鉄と鉄の衝突が火花を散らして周囲を照らす。二つの残像が互いに追いかけ合って、火花も四方に飛び散る。

 激戦の後、二人は少し距離を取った。


「おい!老いぼれ、剣の勇者の子孫に相応しいな、無影式の剣技は俺の予想を超えたぜ。噂通り速くて隙がないな、今夜は楽しくなりそうだ」


 ステファノは相手に構わず、目の前のスカーではなく三人の様子に気を配った。三人が目を覚ましたのを見てほっとしたけど、それがスカーを苛立たせる。


「老いぼれめ、人を見下すのも程々にしろ!」


 その時スカーは手に持っていた輪を外して、魔力が一瞬で爆発的に増えてきた。


「これから本気で……ん⁉」

「無影二式!」


 スカーが言い終わる前に、ステファノは飛びかかって彼の頭を斬り落とそうとした。この速度はもう普通の人間のレベルではないだろう!

 ステファノの嵐のような攻撃に対して、スカーはかえって少し手こずって一歩一歩後退するしかない。


「さすが金剛級に到達した四人目の奴だ、だが……」


 スカーは剣風でステファノを吹き飛ばし、空中に跳び上がって大量の魔力を刀に凝集させる。

 空中で巨大な幻影の黒い刀が遠くから地面のステファノを攻撃している。

 毎回の攻撃が鍛冶屋の周りの石レンガを徐々に破壊し、巨大な魔力が衝撃波を起こして木々を倒した。

 幻影の黒い刀の攻撃は速くて強力だけど、ステファノはほとんど完璧に防いだ。

 精巧な剣技で巧みに解決し、幻影の黒い刀の攻撃を周囲に移す。

 続いてステファノは跳び上がって手に持った剣に黄色い稲妻が満ちって、魔力で充電されたようだ。


「風火雷電!」


 雷魔法と風魔法を帯びた剣風がスカーに向かって飛んで行った。

 同時にスカーも赤黒い剣風で応戦する。二つの剣風が激しく衝突して周囲を爆発させ、巨大な断崖を残す。

 しかし、それでフランドたちが目を覚ましたところで、衝撃波にもう一度吹き飛ばされた。ただ今回はもっと遠い。


「くそ!なんと威力だ!全然近づけねえ……」

「フランド!行くなよ、危ないぞ!」


 ジャクソンは急いで彼の服を掴んで、鋭い剣風に切られるのを避けた。彼ら三人は今や壊れた建物の後ろに不満そうに待っているしかない。

 あの二人は地上に戻って戦闘を展開して、肉眼では見えない速さで森の中を駆け回り、唯一見えるのは巨大な木々が斬り倒される光景だ。


「そろそろ終わりにしよう!」


 そう言ってステファノは全身の魔力を解放して、光魔法の粒子が彼の周りを取り巻く。

 スカーもその光景を見て魔力を凝集させ、暗魔法の粒子も自分の周りを取り巻く。

 ステファノの足元には光粒子でできた幻影の馬が現れ、彼自身の手に持った剣も巨大な光の剣に変わって、左手には光の盾が装着される。

 彼は幻影の馬に乗って突進し、スカーを反応させずにその場で斬殺しようとした。

 巨大な光の剣がスカーの日本刀に何度も攻撃し、一振りごとにスカーに大きな圧力をかけて地面を亀裂させ、彼自身の足も埋まった。

 スカーは全力を解放して暗魔法の翼を広げて空中に飛んで、一振りごとに巨大な漆黒の剣風と漆黒の気流を放って光の剣の剣風に衝撃を与える。


 二人は激しく殴り合い、一振りごとに森全体を巨大な木々ごと吹き飛ばし、地面ごと持ち上げる。

 この時スカーが暗魔法の射線を放ってもステファノを撃退することができず簡単に光の盾で防がれた。

 どれくらい戦ったかわからないが、スカーは光の剣の連続攻撃に耐え切れず距離を取ろうとしたが、幻影の馬に追いつかれ、ステファノは容赦なく彼の左腕を斬り落とした。

 そうしてスカーは倒れて起き上がれなくなった。それを見てステファノも魔法を解除して元に戻る。

 しかし、これら強力な上級光魔法は年老いた老人にとって消耗が大きすぎる。

 ステファノはしゃがみ込んで息切れしている。


「ああ、年取ったな……ん?」


 スカーはまだ死んでいなかった。彼はゆっくりと立ち上がって奇妙な黒い仮面を外した。

 しかし、露わになったのは重度の火傷でできた顔。血赤色の傷跡が恐ろしく見える。


「ああ……こんなに強烈な驚き感をくれる人がいるとは思わなかった……本当に久しぶりだよ」


 スカーの左腕は驚くべき速さで再生し、新しい腕がそこに現れる。


「貴様……魔物になったのか?それとももう魔族になったか……」


 ステファノは驚いてスカーを見つめ、とんでもないことを言った。


「ふん、老いぼれ、お前の直感は鋭いな、さすが勇者の子孫、でも今度は俺の番だぜ」


 スカーの背中からは漆黒でかっこいいコウモリのような二対の翼が生え、体も徐々に黒い毛で覆われる。頭には巨大な角が現れ、目はトカゲの目に変わって、身にまとった黒と白の鎧も一層華麗になる。でも身長は変化しない。

 間違いなくこれは魔族だ!魔物よりもずっと賢くて強力な存在だ!


「なるほど、わしは君が昔と違うと思っていた……しかし、なぜ魔族になろうとしたんだ?」

「人間の身体は弱すぎるんだよ。人間の俺は真竜を殺すのにも苦労したが、今の俺なら真竜なんて簡単に殺せる!自分を見ろよ……老いて鈍くなって、強力な剣技と力があっても老化で弱くなってるじゃないか。でも魔族になればそんなことはない!永遠に強くなり続けられるんだ!」

「魔族になるのは強くなりたいと不老……気が狂ってる、救いようのないバカだ」


 スカーはステファノのそばに飛んできて、刀で簡単に彼の背中を切った。形勢は完全逆転。

 ステファノは痛みに耐えてスカーと戦うが、彼の無影式剣技は全く効かず相手は手軽に全て受け止めて反撃してきて、肩を切られた……

 ステファノは傷ついた肩を押さえて攻撃をやめた。


「見たか、これが魔族の強さだ!人間の俺と比べても雲泥の差だぜ。人間はもうこれ以上強くなれないんだ、俺は32歳になった時に急に力が及ばなくなって、実力も落ちてしまった。ずっとどうやって突破するのを探していた、ついに答えを見つけたんだ。それは魔族になることだ。お前にも一度だけチャンスをやろう。剣の勇者の子孫よ、俺と同じように魔族になれ」

「わしが魔族になるっわけがないだろ……」

「残念だな、こんなに素晴らしい実力を持っているのに……さようならステファノ・アポローニ・アリート」

「無影三式」


 突然フランドが木々の間から飛び出して剣でスカーの心臓を突こうとするが、鎧すら突き通せなかった……

 スカーは一瞬でフランドの首を掴んで高く持ち上げて、軽蔑した顔で見下す。


「お前の無影式剣技は剣の勇者の恥さらしだよ。こんなに弱々しくて無力で、女よりも無能だ……」


 ジャクソンはタイミングを見計らって閃光魔力弾を使って刺殺しようとするが、一蹴されて飛ばされた。


「ふん!虫けらの暴れるだけだ、意味がない……ん⁉」


 スカーは突然左腕が制御不能になって乱れ打ちしていて、そのおかげでフランドも息を吹き返した。

 なんとスカーの体が歪んでいる!


「まさか拒絶反応か……くそ!体が完全に制御できねえ、改造がまだ完了してないのか?ちっ!お前らは運がいいな」


 そう言ってスカーは翼を広げて森から飛び出し、ジャクソンたちはなんとか助かったようだ。

 しかしステファノはもう持ちこたえられなくて地面に倒れた。ジャクソンが近づいて見ると、彼は血を失いすぎて今にも死にそうだ。

 アイルハルトが駆け寄ってフランドに彼を背負わせる。


「フランド!早く!俺の知ってる医者のところに連れて行け、そこが一番安全な場所だ」

「フランド様……」

「話すなよ、お前はこのままじゃ死ぬぞ、俺たちは助けるから安心しろ!」

「わしの剣……持って行け、これはわしの息子が作ってくれた剣だ、だから大切にしているんだ……今はこの剣をあなたに渡す……」

「じいさん……」

「もし会えたらわしは本当に申し訳ないと言ってくれませんか、ずっといい父親ではない、彼を家出せてしまった……」

「もう言うな……」


 その時、自分が渡したお守りもういない。


「あのお守り……」

「あのお守りは友達の命を救ってくれた、また一つの命を救ったんだ、お前は永遠に本当の勇者だ……」

「そうか……無駄じゃなかったんだ……でもわしは勇者じゃない、女神教を裏切って先祖の面目も失った……魔王教のやつを手助けして公爵様の理想を実現するためだけに……フランド様、公爵様を責めないでください」


 その後ステファノは目を閉じて剣柄から指を離した。フランドは涙で溢れていた。

 この人はただの剣術の師匠ではなく、大切な家族だのだ。

 そばのアイルハルトも見てられなくなって、ステファノから離れて一人で巨大な満月を見上げている。

 これは眠れない夜に違いない。

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