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クリリスの言うとおりセイヤナ酒場に向かって歩いていると、やはりセイヤナ酒場の看板が近くに見える。
しかし、前方の状況により、小道に隠れざるを得なくなった。遠くに旗を振る騎士たちが集結しているのが見えてきて、暗い地下街には火の光があちこちに。
オエリちゃんは巨大な水圧で全身に骨折が多数あり、自分が名医から学んだ技術で彼の傷を簡単に手当てす。
もともときめ細かく雪白だった肌には高速水流で切り裂かれた傷がたくさんあって、見ているだけで心が痛む。
でも、酸液ではなくてよかった、そうだったら大変。
「すみません、お嬢様……」
「大丈夫よ、うまくいくから」
オエリちゃんを支えながら一歩一歩ゆっくり歩いて、セイヤナ酒場への道を探している。
ところで、ここは本当に大きいわね、王都であり全国で最大の地下街だもの。
こんなところに入ったことがないので、この道が全然わからない。
最悪なのは騎士団の人たちがここに現れてしまったこと。彼らは重要な道路口を守っていて、今は通れない。
酒場への道路口には多くの騎士が巡回している。オエリちゃんの状況が危急なので強行突破するしかないかのか?でも、今の私は魔法も使えないし。
でも、最悪な状況はやはり起こってしまった。セイヤナ酒場への道路近くで巡回中の二人の騎士に見つかってしまった!急いでマントのフードで顔を隠して、認識されないようにする。
「おい!待て!今はフィラ全体が夜間外出禁止令だぞ!ん?お前、どこかで見たことある気がする?」
「アホか!あれは魔女だぞ!おい!早く来い!魔女を発見したぞ!早く……」
その後、大きなドンドンという音が聞こえて、それは金属製の兜が叩かれた音だ。叫んでいた騎士は石で殴られて気絶した。そして石を持っていた人は黒いマントを着て顔を隠していて、でも一番目立つのはその巨乳だ!
「貴様!魔女の仲間か!」
もう一人の騎士は剣を抜こうとしたが、謎の人はポーションを彼の兜に投げつけていた、濃厚な薬品の匂いが鼻を刺す……
でも効果的だった。その騎士は地面に倒れて痙攣し始める。
「お前ら、ついて来い、なんにやてんのよ、早くしろ!こんなに遅かったらあいつらに捕まるぞ」
「あ、はい……」
え?なんか声が聞き覚えがあるな、どこかで。少し荒っぽくて少し大人びてる……でも思い出せない。
気がつくと、私たちはたくさんの通りを通り抜けた。謎の人の助けで騎士たちの追跡をかわし、ついに地下街の暗い隅に着いた。周りには誰もいなくて、ただ臭いゴミがあるだけ。
「ここだ、ここから直接出られる」
謎の人は私たちを狭い小道に連れて行った。中から出ると、その人はようやく顔を隠すものを外す。
「ああ!くそっ……早く知っていればパンストで顔を隠すなんて馬鹿なことはしなかったわ。しかも何日も洗ってないんだから……」
「え⁉ロランド!」
「そんなに大声で叫ぶな、発見されたいのか、お嬢ちゃん。それに、あたしのことは美しい神官様と呼べ」
「はい……美しい神官様……」
やっぱりこの声は聞き覚えがあって、まさか本当に彼女だとは。
それにその面罩はパンストだなんて……
臭い小道をずっと進んでいると、スラム街の一角に出た。
出るとすぐに彼女は私の顔に水を吹きかけた。顔中に薬草の匂いが……
「何やってるんだよ!」
「それでも、堂々と魔女だとばれるようなことはしないほうがいいよ。それにパンストは頭にかぶりなさい」
「絶対にかぶりたくない!あんなもの!」
「あたしのパンストは高値で買いたい人がたくさんいるぞ。もったいないわね」
周りをよく見ると、ここの人たちは夜間外出禁止令なんて守っていなくて、自由に歩き回っていて、王都の法律なんて無視した。でも念のためにハンカチで口を隠した。
「王室政府はここを放置してるから、ここは捨てられた場所、せめてここでは安全だ、まあ、それも一時的なことよ」
「そうなの」
ロランドはふらふらしているオエリちゃんを見て、私に彼を地面に置いて治療するように言った。
「うん、傷口の処理は上手くやってるわね。でも衝撃波で脳にダメージがあるか?しかも全身に骨折も多い」
「大丈夫?」
「うるせえな!静かにしろ!」
「ええ!はい……」
ロランドは素早く治療を始める。ポーションもオエリちゃんの体にかけた。
しばらくすると、オエリちゃんの様子がだいぶ良くなった。まだ意識がもやもやしているけど。
「これで大丈夫よ。あとはあたしの診療所で休んでれば治るぞ」 「ありがとうございます!」
美しい神官様にお辞儀をした。でも、この美しい神官様は私に手を差し出して、え⁉お金を要求するつもり?
「そうだ、治療費払ってちょうだい」
「え⁉何言ってるんですか……美しい神官様……」
「治療がタダだと思った?伯爵令嬢ならこのくらい払えるでしょ」
「私はもう伯爵令嬢じゃないし……」
「まあ、そうだね。でもあたしに借りがあることは忘れるなよ、神殿の扉を二倍に弁償するって言っただろ」
「ええ……」
「まあ、こんな状況じゃお金も払えないよね。しょうがないね、うちに隠れておきな。さあ、行こう!ボーっとすんな!」
「あ!はい」
やっぱり彼女は私が知ってる悪徳神官。
その後ロランドは私たちを彼女の家に連れて行った。すぐに風で倒れそうなボロボロ家が見える。
「さあ、これがあたしの家と診療所よ」
これはぼろぼろの小屋だけだ、それに外は色々な色の木の板でつながっている。
神殿の小屋とそっくりだ……
「ええ、神殿と同じくらいぼろぼろね、いいえ!違う、面積はちょっと大きいかも」
「今からフィラ騎士団にここに魔女がいるって通報すれば、いいお金がもらえるわよ」
「すみません、美しい神官様」
そう言って、ロランドはドアを開けて私たちを中に入れた。中は確かに診療所だ、ベッドはたくさんあって、設備もそろい、棚には薬が山積みになっている。
私はオエリちゃんをベッドに寝かせて、ゆっくり休ませる。
「今日からあたしの助手になるんだぞ、お前の給料はあたしに返すために、わかったか?」
「それも仕方ないわね」
「そうそう、ここではあたしの言うことを聞くのよ、頑張って働きなさい、助手さん」
「あはは……」
そうしてしばらく彼女の助手になるしかないな。
せめて安全な場所があるだけましだ、それにチャンスがあればお兄ちゃんたちと合流できるし。
今はもう太陽が沈んで、大きな月明かりがここを照らしている。
ロランドは薬棚の近くのボタンを押して、中にも地下室があるなんて!
彼女について中に入ると、中は神殿とそっくりな豪華さだ!高級な客間まであって、家具も揃っていて、芸術品や彫像が部屋中にきちんと並んでいる!
「ロランド、これは……」
「ん?芸術品のこと、すごいだろ」
「まあ、すごいけど、それが問題じゃない!これらのものはだまし取ったものじゃないでしょうね?」
「失礼ね!半分だけだまし取ったものさ」
「そうかな……」
その時私の鼻に刺激的な安物のタバコの煙が入ってきた。ロランドは高級なソファに座ってタバコを吸っていて、私に厳しい目で見つめる。
「お前の状況は想像以上にひどいね、こんなに早く魔女の第二段階に入ってしまったなんて」




