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「フェリウェム伯爵家をすぐに封鎖しろ!魔女を捕まえろ!」


 フィラの騎士団は私の家を取り囲んで、鉄の柵の外には見物人がいっぱいだ。

 遠くの隅に隠れて、自分の家が無礼な奴らに乱入されるのを見ているしかない。


「お嬢様、もう行きましょう。見つかっったらまずいですよ」


 オエリちゃんは小声で私に言って、胸元のネクタイをしっかり結んでくれる。

 今の私たちは灰色のマントと黒いメガネをかけて、ネズミみたいに隠れているから。

 あのビッチめ、私とハルカが入れ替わったことを知っていたんだろうな。私を毒殺した一時間後にこんなにたくさんの人を送ってきたなんて、本当にクソ女だよ……


 今は王都中が私を追っている。あの規模によると間違いなく魔女指名手配だ、これは最高レベルの指名手配だから、法律では家族全員が死刑になる……

 一番心配なのは王宮騎士団も巻き込まれることだ。そうなったら大変だよ。

 こんな日が来るなんて思わなかった。自分が育った場所を離れるなんて、すごく悲しくて怒ってる。

 毒殺された後はこんなことになると分かっていたから、カロスに普通の馬車に乗り換えてもらった。だって、目立つとまずいから。

 仕事人も全員解雇して帰らせたから、騎士団が家を捜索しても誰も捕まらないはずだ。


 馬車に戻ってみると、お兄ちゃんが見張りをしてくれていて、ベアベルは口と目を塞がれて干し草の上に寝ていた。

 今の彼女は大事な人質と切り札だからね。お兄ちゃんは私が入ってくると馬車のカーテンを閉めて視線を遮る。


「レイラ、どうした?」

「家はもうない……お兄ちゃん」

「うん、分かってる」


 お兄ちゃんは優しく私の頭を撫でて慰めてくれて、でも落ち込んでばかりもいられない。

 お父様から何も連絡がないから、捕まったんじゃないかと心配だ。私はまだ死んでいないから、お父様がまだ生きているとしたら、あのクソ女はお父様をおとりに使うつもりなんだろう。

 リリは馬車を運転してくれている。私とお兄ちゃんは何度も彼女についてこないって言ったけど、彼女はそれでも一緒に逃げることを選んだ。

 よく考えれば彼女は昔からそういう頑固な人だよね。言っても聞かないんだから。


「ディラン様、まずは私の家に行きましょう、そこならしばらく安全かもしれないです」

「うん、頼むよ。あのさ、リリ、僕とレイラは君に感謝してるから、でも君も一緒にいたら……」

「分かってますよ、ディラン様。でもメイド長として最後の仕事をやり遂げたいんです。だからもう私を止めないでください。決めましたから」

「はあ……わかったよ」


 王都から脱出する計画は簡単だ。まずは金持ち街を出てリリの家に数日隠れて、その後は下水道を通って住民街を抜ける。そうすれば王都から無事に逃げ出せるはず。

 落ち着いたらお父様の消息を探すつもりだ。何事も計画通りに進むといいな。

 リリは彼女の住民街の家に向かって馬車を走らせる。そういえば彼女はどれくらい家に帰ってないんだろう?ずっと私たちの家で働いてたような気がするけど、彼女に感謝したかな……

 金持ち街を出る道にはやっぱり人が見張っていて、馬車もチェックされる……


「おいおいおい!止まれ!そうだ!そこのお前らだ!」


 見張り所でリリは止まらざるを得ず、私とオエリちゃんは戦闘準備をしていた。


「警官さん、これ小遣いです。どうか通してください」

「さっさと行け!邪魔だ!」

「やっぱり優しい方ですね」


 馬車の中の私たちはほっとした。王都の警官は腐敗してるから助かったけど、本当はこんなことを責めなきゃいけないのかな?腐敗した警官が役に立つ日が来るなんて……

 目立たないように魔女の印を消したけど、魔女の気配は完全に消せない。


「ここですよ、お嬢様」


 リリが小声で私たちに言って、降りるときに気をつけるように合図した。

 え?上には巨大な魔力が迫ってくる!光魔法でシールドを張ってなんとか防いだけど、衝撃波で馬車はバラバラに吹き飛ばされて、周りは大きな穴だらけだ。

 三人は立ち上がって、大した怪我はなさそうだ。ベアベルは毛虫みたいに地面でもがいているけど、今は彼女のことなんて気にしてられない。


 上を見ると巨大な光の輪と火の玉が空中で回っている。空には青い髪の女が巨大な魔法の杖にまたがって足を組んで冷たく私を見ている。

 魔導士の服装で、大きな帽子をかぶってマントをつけている。あれは王宮騎士団の四団長――スフェヤ・ヴィーナス、彼女はとても優秀な女性魔導士。

 気づかないうちに周りはフィラの騎士団でいっぱいだ。やばい!私たちは包囲されてしまった。いつから見つかったんだろう?

 フィラの騎士団は一斉に私たちに襲いかかってきたが、オエリちゃんの使い魔に吹き飛ばされた。

 でもジャスパーで逃げるのは無理だろう。騎士団の魔導士も使い魔を呼び出して戦闘に参加する。

 同時にたくさんの火の玉が私たちに飛んでくる。

 土の魔法で巨大な土の壁を作って必死に防いでいる。幸いにも十分に堅くて火の玉は表面を破壊しただけだ。

 でも土の壁は剣を持った使い魔に破壊されてしまって、私に飛びかかってきたが、ジャスパーの手で叩き潰されて粒子になって消えた。

 その後もまだ使い魔が沢山やってきて、ジャスパーは私たちを守るために必死に戦っている。


「お嬢様、あなたは他の人と先に行ってください。ここは僕とジャスパーに任せて」

「そんなことできるわけないだろ!」


 フィラの騎士団が平民街で戦闘するなんて信じられないな、平民を巻き込むことを考えなかったのか?

 すぐに風魔法で巨大な円形の風刃を作って周りの使い魔を全部切り刻んだ。しかも土の壁も一緒に破壊して、飛ばされた石ころは建物を避けて騎士団の上に落ちていく。


「お嬢様!気をつけてください」


 その時、色々な属性の魔法攻撃が私に飛んできた。でも不思議なことに時間がゆっくりになったように感じて、はっきりと見える。

 でも私の時間は違っていて、自由に動ける。

 さっと暗魔法でブラックホールを作って、巨大な吸込力で強風が起こって、近くの魔法攻撃を全部吸い込んだ!騎士団の魔導士たちの魔法は私に簡単に無効化されてしまった。


「か、怪物だ!」

「くそったれの魔女!」

「冗談じゃねえよな……」


 騎士団の全員が恐怖と怯えの目で私を見ていて、まるで私が化け物みたいだ。でも私も時間をゆっくりにできることに気づいて、この力がどれだけ強大なのかとわかる、心の中で動揺していた。

 平民や騎士団の被害を減らすために、魔力の出力を抑えるようにした。

 時間をゆっくりにして光魔法で衝撃波を作って騎士団を全部吹き飛ばして、彼ら反応する時間もなかった……

 ヴィーナスは大量の火の玉を私に飛ばしてきて、小さな隕石みたいに次々と私が作った魔法の盾に当たって、周りを全部吹き飛ばし、巨大な衝撃波で周囲の建物は破壊されて、一瞬で平地になった。

 攻撃が終わった時、焦げ黒くなった土地と熱い煙だけが残っていただけ。

 相手は頭おかしいのか?ここは平民が住んでるんだぞ……


 ヴィーナスは空間の魔法でテレポートしてきて、色々な魔法で私を攻撃してきたけど、簡単に避ける。

 被害を抑えるために仕方なく魔女の力を使った。一瞬で、周りの時空が完全に停止して、ヴィーナスも止まってしまった。

 ヴィーナスに向かって暗魔法の魔力弾を発射する。そして時空の停止を解除し、ヴィーナスは何も反応できずに私の魔力弾にぶっ飛ばされた。

 手加減したから、彼女はそう簡単に死なないだろうけど?周りに他の人影がいないことを確認して、やっと心身が緩んだ。

 お兄ちゃんたちは驚いてこの一連の出来事を見ている。五分もかからずに戦闘が終わってしまったなんて自分でも信じられない。

 オエリちゃんは我に返って私を見て、すぐに走ってきてタオルを持ってきてくれる。


「お嬢様!鼻血が出てますよ!大丈夫ですか……」

「えっ!」


 今気づいたけど、足元には血の染みがだらけだ。鼻からは鉄の味がするし、頭もクラクラするし、手も震えてる。

 これが魔女の力を使う代償なのか?手が止まらなく震えて、タオルも持てない。

 オエリちゃんとリリが駆け寄ってきて、私を支えてくれて立つことができる。でもしばらくしたら少し楽になった。

 遠くから重い足音が聞こえる、もしかして増援部隊か? その時、お兄ちゃんの後ろに黒い影がすばやく近づいて、剣でお兄ちゃんの首に当てた!


「おい!クソ魔女!家族を生かしておきたかったら素直に降参しろ!」


 剣がお兄ちゃんの首の前で揺れている。よく見ると、腕についた紋章でフィラの騎士団の指揮官だと分かった。


「さもないとこいつを殺すぞ!お前ら全員降参しろ!」


 相手は力を入れてお兄ちゃんの首から血を出させた。最悪だ……私はもう時間を止める力が使えない……


「わかった」


 その時、王宮騎士団の人たちが駆けつけてきて、私たちを取り囲んだ。今の状況では仕方なく両手を上げて降参した。

 王都に駐屯するフィラ騎士団と比べて、王宮騎士団の人たちはもっと強い。

 フィラの騎士団の指揮官は私に手錠をかけたせいで私の魔力は一気に弱まった。

 やっぱり対魔力の手錠だよな、まだ魔法は使えるけど、威力はほとんどない。


「私を捕まえたんだから、彼らは放してあげて」

「ふん!一緒に連れて行く!魔女には気をつけろよ。ちょっとでも危ない動きをしたら即刻斬首だ」

「あんたたちこそ卑劣な奴らだ!平民の安全も考えずに住民街で戦闘するなんて、武器もない負傷者に脅しをかけるなんて!」

「お前こそだ!クソ魔女め!完全に覚醒させたら世界が終わりだぞ!お前みたいな怪物のせいでな!今すぐお前を殺して世界の災いをなくてやる!」


 何も言い返せなかった……

 指揮官は剣を抜いて高く振り上げていて、私の頭上を越えた。

 その時、強力な竜巻がやってきて、包囲していた王宮騎士団を全部巻き上げる!

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