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クーデター編1

 鎧を着た人が彼女の部屋に入ってきた。彼の胸には王宮騎士団の紋章がある。

 カリーナを見ると、騎士の敬礼をして敬意を表す。


「カリーナ様、すべて準備が整い、王宮を掌握しました。爵位を持つ者たちも全員集めましたが、二人の公爵が欠席しています」

「よくやった。行こう」


 カリーナはその騎士について歩き始める。ふかふかの絨毯がすごく良い。

 途中で出会った使用人たちは皆頭を下げて挨拶し、騎士たちは騎士の兜を脱いで敬意を示し、誰もカリーナの目を見ない。

 王宮の会議場に着くと、大臣たちはすでに列をなして新しい王宮の主を待っていた。

 真ん中には大臣や一部の騎士たちが魔法の縄でしっかりと縛られていて、彼らはカリーナを憎しみに満ちた目で見つめていた。縛られていた者の中には黄金弓もいるが、彼はカリーナに向かって何も言わなかった。

 カリーナは彼らに目もくれず、氷のような目つきで歩いていく。

 それと騎士たちを呼びかける。


「彼ら牢屋に連れて行け」

「はい!」


 騎士たちは彼らを引きずって、他の大臣たちは一言も口に出せなかった。彼らはその少女が手に負えないことをよく知っている。

 彼女は王様のいすにきて、座ることはせずにそのいすをなでるだけ。


「さて、私が新しい王室政府の成立を宣言した後、王都フィラでは夜間外出禁止令と警戒態勢を敷き、魔女を捕まえることに全力を尽くせ」


 彼女は後ろにいる大臣たちを見やり、騎士たちに手招きする。


「イヴィリヤ伯爵、フォスタンイーンが魔女を庇護していることは十分な証拠がありますので、理事長であるあなたも魔女を庇護している疑いがあり、しかもあなたの汚職の証拠もあります。騎士たち!早く彼を連れて行って尋問しろ!フォスタンイーンの上層部も全員捕まえろ!」

「カリーナ・レシヤ・アゴスト!何様だ!無駄王女のくせに!何もできないクズ!てめぇこそ魔女だ!」


 カリーナは怒りに燃えてイヴィリヤ伯爵に平手打ちをしようとするが、ふかふかの絨毯に足をとられて転んでしまった……


「「「……」」」


 それでも誰も笑わず王宮の会議場は依然として静まり返っている。

 でも一人の使用人がうっかり笑ってしまって、すぐに他の騎士に連れ去られた。

 カリーナはゆっくりと立ち上がって身体についたほこりを払い、顔を真っ赤にする。彼女はもう手を出す気はないようだ。騎士たちに合図してイヴィリヤ伯爵を直接連れ去るように指示する。


「カリーナ・レシヤ・アゴスト、覚えとけ……」


 そう言ってイヴィリヤ伯爵は騎士たちに会議場から引きずられていった。

 次に彼女は隣にいるフェリウェム伯爵を見た。


「フェリウェム伯爵の娘は魔女だ。今すぐあなたの伯爵の身分を剥奪する。さあ、彼を連れて行ってさらなる調査を受けさせろ」 フェリウェム伯爵はそんなことをされるわけにはいかないと思って、目の前のカリーナに平手打ちをしようとするが、騎士たちにがっちりと押さえつけられて抵抗できない。

「何を言ってるんだ!俺の娘は魔女であるはずがねえ!よくも俺の娘を侮辱するな!無駄王女のくせにこんなことをするとは!」

「フォスタンイーンの学生たちはみんなレイラ・フェリウェムが魔女だと知っている!魔女を庇護することは本来死刑だが、レイラ・フェリウェムが素直に自首させれば、あなたの死刑を免除することも考えられる」

「冗談じゃねえよ!俺の娘は絶対に魔女じゃねえ!」

「彼を連れて行け」


 フェリウェム伯爵はそうやって騎士たちに連れ去られていって、途中でカリーナに罵声を浴びせる。

 それらのことは、場にいた全員がカリーナに逆らえないようにした。ほとんどの王宮騎士団は彼女のものだから。


「カリーナ様、新しい王室政府の演説をしてください、僕も王宮騎士団に魔女狩りの準備を命じます」


 彼女のそばに来たのは王宮騎士団の第一団長。黒と白の騎士鎧を着ていてとてもかっこよい。そして、黒い不思議な仮面をつけている。彼は「スカー」と呼ばれる男で、現在の金剛級の強者だ。元々はギルドの冒険者だったが、今では王宮騎士団のリーダーになる。しかし彼の出身は今でも謎だ。

 カリーナは彼について王宮の広場の演壇にきた、ここはいつも重大な事件を発表する場所だ。下には巨大な通路や多くの廊下がある。

 事前に全フィラ市民に通知していたので、もう人でいっぱいだ。

 新しい始まりを待っている人もいれば、単に見物している人もいる。

 そしてその中にはカリーナの名前の旗を振っている人も多いし、現場には赤い煙が立ち上る。


「私カリーナ・レシヤ・アゴストはアゴスト家の者であり、またオランスド帝国の王女として皆さんに重要なことを正式に宣言します!王様は年老いて正気を失っており、王様の職務を果たせなくなっていました。大臣たちは私と共に新しい王室政府を組織することにしました。そして、皆さんに悪い知らせがあります。王都には魔女がいます!彼女の名はレイラ・フェリウェム!世界中の悪夢になりかねない存在ですが、私たち新しい政府は皆さんに約束し、魔女は必ず我々の正義によって消滅させます!私たちは団結して人類の敵と戦い、平和で安らかな日常を守り、愛する家族や友人を守り……」


 感情的な演説と魔女の迫り来る恐怖感に、皆は緊張や不安で話し合っていた。

 長い演説の後、カリーナは疲れ果てていた。でも演壇では何もトラブルがなくて、完璧な王女のイメージを演じた。

 最後にはかなりの拍手を得ることができて、皆は新しい政府や新しい変化を期待している。もちろん魔女の脅威もあるけど。

 最後にカリーナは騎士たちに護衛されて自分の部屋に戻る。彼女はすぐにベッドに飛び乗って枕を抱きしめて、心はまだ興奮している。

 その時、コルネル・サンタヤーナがドアもノックせずに入ってきた。


「お疲れ、カリーナ。これはお茶と僕が特別にあなたのために作ったお菓子だよ」

「うん、ありがとう、コルネル。でも本当に疲れたよ……あのね、私さっきの姿はすごく完璧なのかな?」


 コルネルは彼女の隣に座って優しく頭を撫でる。


「うん、あなたは本当によくやったよ。昔の無駄王女なんかじゃなくなったね。もう変わったんだよ、きれいになったし、自信もついたし」

「うん、これも君やオイスム教団のおかげだわよ。私が今日まで来られるなんて思わなかった。まさか夢の第一歩を達成できるなんて」


 カリーナはコルネルの手にキスをして、二人の視線は熱くなる。


「しかし、レイラ・フェリウェムに騙されて王宮で彼女を殺せなかったのは残念だったね。まさかスライムがレイラ・フェリウェムに変身していたなんて。でもちょっと不思議、スライムにも同じ感じがしたけど………」

「心配しないで、コルネル。全国に魔女指名手配を出したし、彼女の父親も私たちの手中にあるから、彼女は逃げられないよ。それにあの聖女も彼女と一緒にいるはずだから、一緒に始末することができるよ」


 その時、鏡の中から見知らぬ少女の声が聞こえてきた。カリーナはすぐにベッドから立ち上がって鏡の前に歩いて行った。そして自分の髪を少し整えている。


『コルネルから聞いたよ、カリーナ。レイラ・フェリウェムがまだ死んでないなんて?お前は何をやってるの?カリーナ』


 鏡の中にはゴシック風の服を着た天使のような少女が現れ、美しい灰色の髪はなめらかで、金色の瞳はキラキラと輝いている。


「ごめんなさい、ロサナ。私の不注意だったわ。彼女の死体はスライムがレイラ・フェリウェムに変身したものだの。でも不思議なことに、スライムにも同じ感じがした……」

『死んでないなら死んでないってことよ。お前失敗した。まあ、私もお前を責める資格はないね……そうだ!おめでとう、カリーナ。王宮クーデターを成功させて、素晴らしい演説もした。思ってたよりもずっと多くの支持者がいるなんてね。私の目は間違ってなかったね、お前は本当に政治の天才だよ』

「それもあなた様や教団の支援があったからよ、ロサナ。本当に感謝してるわ」

『こんな結果が出て私たちも嬉しいぞ。これからも頑張ってね。あと7号の行方を探してね、まさか5号忘れたなんて……』

「彼女は今フェリウェム伯爵家の地下室にいるわ。すぐに騎士を派遣してそこを捜索するつもりよ」

『やるじゃん、カリーナ。でも会議に来てね、教団本部の人たちが来るから、魔王にすべてを捧げるために』

「わかった。魔王にすべてを捧げるために」


 言い終わると鏡は元通りに戻った。

 コルネルがやってきて彼女の頭を撫でてくれて、整えてくれる。

 だって、カリーナは自分の髪をもっと乱してしまっていたからだ。


「そうだ、カリーナ、僕の情報ではフランド・アゴストとジャクソン・シスネロスがトラヴィに着いたけど、トラヴィ騎士団に彼らを捕まえるように命令するかい?」

「いらないわ、コルネル。スカーが直接行ってるの。この日が来るなんてね」

「カリーナ、あなたは本当に頑張った。あなたを誇りに思うよ」

「ありがとう、コルネル」


 コルネルは彼女の額にキスをしてから後ろから抱きしめていて、二人は互いに寄り添っていた。

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