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「フェリウェム様、こちらへどうぞ。カリーナ様もすぐに来られると思いますよ」
「ありがとう、サンタヤーナ君」
そう言ってカリーナの部屋を出てドアを閉める。
ええと〜これがカリーナの部屋なの?想像通りにきちんとしていて上品だね。お父様も言ってたけど、部屋の雰囲気は人の心境と同じだと。そう考えると本当にそうだね。
部屋には大きな本棚もあって、中には経営学や経済学の本がたくさん入っている。ええと〜すごいね。
その後、バルコニーに行った。ここには大きな日傘ときれいなテーブルと高級ないすもある。ここに座って王宮の景色を楽しめるけど、賑やかな王都の通りや行き交う人々が見えないのはちょっと残念だね。
しばらくするとノックの音が聞こえて、カリーナがやっと入ってきた。サンタヤーナがクッキーと紅茶をバルコニーのテーブルに運んでくる。
その後、私たちに頷いて、また部屋を出て行った。私とカリーナだけが残る。
「さあ!レイラ、あーん」
「あはは、じゃあ遠慮なくいただきます」
クッキーは本当においしいわ、焼き加減もちょうどいいし、味も最高だ。
「これはカリーナが作ったクッキー?焼き加減もちょうどいいね」 「えへへ〜当たりだよ。私も頑張って作ったんだから、君に初めて食べてもらいたかったの」
「ええと〜そうなんだ、本当においしいよ、カリーナも頑張ったね」
「今回は君のためにたくさんの調味料を入れたんだ。だって、私たちはなかなかこうやって集まれないよね。ガールスカウトを卒業してからはこんなにゆっくり話したこともなかったもの」
「そうだね。ああ、そういえば肝試しのときカリーナは怖くて動けなくてずっと私を抱きついてたよね、でも私たちは手を繋いでゴールまで行ったよね」
「え⁉あはは、恥ずかしいよ、もう言わないでよ。でも、あのときは本当にありがとうね、ずっと私の手を繋いでくれて……」
「そうか、そう言われると私も恥ずかしくなる」
紅茶を飲みながらクッキーを食べて、ガールスカウトのときのことをたくさん話した。よく考えると本当に懐かしいな。
このときになってAさんとあの機密文書のことを思い出した!
「カリーナ、例えAさんは監獄に入っても情報部に手を出される可能性があるんじゃないかな?」
「うん、そういう可能性もあるよね。でも安心して、私がちゃんと処理するから」
「じゃあカリーナはあの機密文書を王様に渡せばいいんだね。私に手伝って欲しいことある?」
「ありがとう、レイラ。でもね、そんなに簡単じゃないよ。私のおじいちゃんだけじゃなくて、王宮騎士団の承認も必要なんだ。そうしないと、あの悪党たちを捕まえるチャンスがあるよ」
「あはは、そうだね。浅慮すぎた」
カリーナがそう言うと、私はもう何も言えないな。
Aさんはちゃんと更生して新しい人生を歩んでほしい。誰も助けてくれなくても、私は助けてあげる。伯爵令嬢としてはそれくらいできる。
「あのね、レイラ。あの緑髪の邪教徒はもう捕まったって聞いたけど、彼女のこと知ってる?」
「え⁉ああ、彼女は今安全なところにいるよ。でもまだ尋問する暇がなかった」
「本当にごめんね、レイラ。早く彼女からもっと情報を聞かなきゃいけないのに、私と些細なことを話してるなんて……」
「友達からの招待だから仕方ないよ。それに邪教の人たちも閉じ込められた彼女のところを知らないし」
「じゃあ彼女はどこにいるの?私も彼女に聞きたいことがある」 「ああ、今彼女は私の家の地下室に閉じ込めてあるよ。そこはとても安全だから」
「ええと〜そうなんだ」
気づいたら紅茶とクッキーも食べ終わってしまった時、もう一つのことも思い出した!
「そうだ、カリーナ。頼みたいことがあったんだよね?あの奇妙な箱の魔法の鍵を解いてほしいって」
「ああ!ごめんね、レイラ。つい忘れちゃった」
「大丈夫だよ。私たちも久しぶりにこんなに話したからね、私も楽しかったよ」
「はは、そうだね。もしかしたら最後かもしれない……私みたいな人と話すのは」
「え⁉そうなの?好きなときに話せばいいじゃない」
「うん、ありがとう、レイラ。じゃあお願いしたのはこれだよ。この魔法の鍵を解いてほしいんだ」
カリーナは箱をテーブルに置いて、箱は確かに魔法で鍵がかかっている。外見はダンジョンの三角錐とよく似ているけど、もしかしたら第六魔女の仕掛けなのかもしれない。
確かにこのことは私に頼むしかないよね、解錠の専門家だから!
しかし、この鍵は意外に簡単で、たった三層の鍵だけで、ダンジョンのものよりも難しくない。こんな簡単な魔法鍵は解けないはずがないだろう?
でも私の頭がぼんやりして、お腹も気持ち悪い。これは魔法の鍵の呪い?そうでもなさそう……
「あ!レイラ、大丈夫?具合悪いの?顔色が悪いよ」
「ああ、大丈夫だよ。多分この魔法の鍵のせいだと思う……確かじゃないけど……」
あれ?私の頭はもうぐるぐる回って、二層目の魔法鍵も解けない……むしろ全然考えられない……
気づかないうちに指も動かせなくなって、違う!感覚がなくなってる!どういうこと?
「レイラ?医者を呼んだ方がいい?君……」
カリーナが何を言ってるのか、もう聞き取れない。世界が歪んで見える……
一体何が起こってるんだ? 結局冷たい白い大理石のゆかに倒れてしまって、すごく苦しい……
カリーナはゆっくりとしゃがんで、悲しそうに私を見て、私の髪を撫でてくれる。これは何?一体何が起こったんだ!
「ごめんね、レイラ。君もうすぐ死ぬよ。紅茶に毒を入れたんだ。事前に解毒剤を飲んでおいたから私は大丈夫だけど」
「え!……何を言ってる……」
「死ぬ前に教えてあげる。私こそが王宮の仲介人。おじさんとオイスム教の人たちを引き合わせたのも私だよ。王宮襲撃事件も私とロサナが一緒に仕組んだ、フォスタンイーンを襲撃したのも同じ。だって、あの学校が大嫌いだから、あそこを全部壊したかったの」
「クソビッチめ……殺すぞ……」
「ああ、そうだわ、情報部副部長に渡したあの機密文書は私が焼き捨てたよ。本当に危なかったわね、君たちに見つかりそうになったもの」
「ち,ちくしょう……」
このビッチを絶対に殺す……私を陥れるとは、くっ!血が出てきた……
白い大理石の床に血が染み込んでいて、今も口から血が滲んで出てくる。
怒りで意識を取り戻したけど、魔力を使えない。このビッチを目の前にしても何もできない。
必死に立ち上がろうとしたけど、いすに寄りかからないと立てない。
「カリーナ、ロサナ様は何度もこの人は危険だと言ってた。彼女が6号を倒したぞ。だからあいつから離れろ、もし魔女の力を使ったら大変だ」
「ああ、大丈夫よコルネル。だから麻痺薬と毒薬をたくさん入れたの。君もお疲れさま、私たちはもうすぐ成功するわ。この日きたのよ」
「そりゃ当然だ」
このビッチとコルネル・サンタヤーナが話し終わってから、また私に向き直る。
この顔を見ると吐き気がする、すぐに引き裂きたい。
やがて彼女は身につけていた短剣を取り出して私の前に歩いてきた。悲しそうな顔をしているけど、私には嫌悪感しかない。
「君に最後の別れを告げてあげる、少しでも楽になってほしい。本当にごめんね、レイラ。私の復讐と夢のために君を犠牲にしなくちゃいけないの。ロサナは君を早く始末するように言ってたから、本当にごめんね……君に許してもらえるとは思わない。私たちが立場が同じだったら、もしかしたら最高の友達や姉妹になれたかもしれないね。さようなら、レイラ」
言って、私のお腹に短剣を突き刺して、無力に彼女の顔を睨みつけるしかできない……
暗闇が私の視界を覆っていく……
「安らかに……」
暗闇に飲み込まれた。
ぼんやりとあの男の焦った声が聞こえて、突然ロイスという男の顔がはっきりと見える。
『オリビィア、早く逃げろ。教会の人たちが近くを巡回し始めたんだ。お前はともかく、俺も知り合いに会ったらまずい……一緒にここにいたいけど』
『大丈夫よ、私たちは見つからない。しばらくここは安全だから』
『でもすぐには安全じゃなくなる……』
オリビィアは優しくロイスの顔を撫でて、彼も彼女の手にキスして応える、彼の表情はとても優しくて真摯だ。
閃光の中で視界が消えるまで。
「え⁉どうしたの?ハルカ、大丈夫?ずっとぼーっとしてるけど」
目の前には見慣れた姿が現れて、彼は私の髪を撫でてくれている。ああ、死んだから私とハルカはまた入れ替わったんだ。ここはお兄ちゃんの部屋……
「お兄ちゃん……」
「え⁉どうしたの?誰?レイラじゃないか!でも……え?何が起こった?ハルカは?」
「どうして私だってわかるの……」
お兄ちゃんは私を見て、安心した笑顔を見せて、私の顔を撫でてくれる。
「ハルカはハルカ、君は君だよ。やっぱりレイラだけがあんな顔をするもん。どうして自分の妹がわからないと思うの?お兄ちゃんだぞ」
「お兄ちゃん……」
涙が止まらなくて、目からこぼれ落ちて、もう我慢できない……
ベッドに横になっているお兄ちゃんは私を抱きしめて慰めてくれた。
ずっと泣いていて、どれくらい時間が経ったかわからない……




