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『おはよう、オリビィア、目覚めたか?』


 オリビィアって、なんか懐かしい……

 朝日がカーテン越しに差し込み、目を刺されるような感覚で布団をめくって起き上がった。

 すると目の前に見知らぬ男が現れる。


『おはよう、ロイス、いい匂いだね、朝食を作ってくれた?ああ、チキンサンドイッチだな』


 本当にチキンサンドイッチの匂いがするとは思わなかった。あの男は皿を並べて手招きして「私」に近づくように促する。


『当たりだよ。さあ、早く起きて着替えて』

『うん』


 見知らぬ男は「私」にキスをしてくれて、唇の感触まで本物みたいだ。


『ロイス、あたしたちいつ北方から出発?ここはもう安全じゃないよ』

『大丈夫だって、俺に任せろ』


 男は「私」の頭を撫でて、髪の毛に指が沈む感触がとても心地よくて安心する。

 これは夢なのだろうか?でもあまりにもリアルすぎるんだ。

 私は何も言えないし何もできない。ただこの女性の身体で感じるだけ。

 これが走馬灯なら、これらのことを全く知らないし、他人の記憶なのだろうか?

 不思議だけど私は死んだはずじゃないか?どうしてこんな光景が見えるんだ?彼らは誰?

 そう思っていると暗闇に再び飲み込まれた。そして暗闇の中で一筋の光が輝き始める。


「これは?」


 目の前に壊れた壁が現れていた。思わず自分の身体を見下ろした。

 どうやら私の意識はハルカに移ったようだ。

 元いた場所を見ると、6号がもう一人の私を凍らせて粉々にした。あれがハルカだったんだろう。ごめんねハルカ……

 ハルカが私を助けてくれたとは思わなかった。本当に感謝しなきゃいけないな。


 この身体は何もおかしくない。本体が死んでもハルカと入れ替われるなんて、不思議な能力だな。でもちょっとぼんやりしてる。さっきの夢のせいかな?気になるけど今はそんなこと考えてる暇はない。

 ハルカを呼び出そうとしても無駄だ。使い魔は重傷を負ったり死んだりすると主人の身体に戻ってしまう。

 それに、第二段階に入った魔女候補に勝つには、同じ魔女候補である私しかいない。

 氷面で自分の顔を見ると、魔女の印が戻ってきていた。本体が一度死んだから、ロランドの薬も効かなくなった。

 でも不思議なことに、魔女の印は広がっただけでなく、少し変化していた。それに、身体の魔力も王宮にいたときよりずっと強くなっている。


「6号!あそこにいるぞ、気つけろ!」

「やっぱりね。ずっと魔女の力を抑えて本当の自分を隠していただろ?きっと辛いだろ?どうして天から与えられた恵みを抑えるの?魔女の力って素晴らしいものよ、特に悪人どもに仕返しするときはね。そう思わない?」


 6号は枕を投げ捨てて、冷たい目で私を見る。

 彼女の目が固くなっているのに気づいた。殺意が溢れていて、さっきとは全然違う。

 本当は彼女と戦いたくない。

 彼女が話した物語の人物は、おそらく6号自身だろう。その物語は悲しくて残酷。

 でもよくわかっている。同じ魔女候補でも、私たちの成長過程は全然違う。

 私は愛に包まれて育ったけど、彼女は憎しみに染まって育った。


「何その目、同情してるの?仲間だと思ってちょっと期待したけど、君って本当に腹立つわね。さあ、早く死んでちょうだい」


 6号は軽く手を振ると、強烈な寒風が私に向かって吹き付けてくる。その風の威力をよく知っているけど、私の魔力も以前とは全く違う。


「消えた?どこに行ったんだ、2号!探して!」

「しっかり歯を食しめておきなさい、6号さん~」

「え⁉いつの間に!」


 風魔法でパンチの形を作って彼女の顔面にぶつけて、6号は遠くまで吹き飛ばされて氷面に激突した。

 今回は私の魔力を凍らせなかった。やっぱりそうなんだ!私の死体を見ればわかるが、ハルカの魔力はすべて吸い取られていた。あの子は直接触れることでしか魔力を吸収できないんだろう。

 でも一番驚いたのは空間魔法を使うのに魔法陣が必要ないことだ。

 簡単にあちこちに移動できるし、魔力も溢れている感じがする。力がみなぎっている!

 これの感覚、以前よりもずっと強くて快適。


「ああ!6号!大丈夫か!」


 眼球ロボットが6号のそばに来て、焦って飛び回っている。


「大丈夫、この程度……」


 6号は氷の鎧を作って一時的に身を守ったんだ?


「喰らえ」


 次に火魔法で巨大な火球を作って彼女に投げつける。彼女も私の火の魔法を凍らせようとしたが、かなり苦労してやっと火球を凍らせたけど、ずっと息が切れている。

 でもこれは最初の一発だけだよ。次もあるんだから!私の魔力も以前とは全く違っている。

 でもこれは最初の一発だけだ、次もある!


 また一つの火球が彼女に向かって飛んで行って、でも今度は彼女は火球を凍らせることはせずに、氷壁を作った。

 しかし巨大な爆発で氷壁はすべて吹き飛ばされて、衝撃波で6号もまた地面に叩きつけられ、何回転したかわからないくらいだ。

 でも彼女はすぐに足元を固めて、怒りに満ちた目で私を見ている。

 今度は氷棘で攻撃して大きくて硬い氷棘が地面から次々と出てきて、私の身体を貫こうとする。

 氷棘からは冷気が出て、周りのものを凍らせる。

 逃げることはせずに、灼熱の火魔法で盾を作って強引に防いだ。氷棘は近づく前に溶けてしまう。


「チェ!何なんだ?7号報告したよりも強いじゃないか?何をした?」

「別に何もしてないよ。ただあんたの能力は魔力を凍らせることで、凍らせた人から直接接触すれば魔力を得ることだってわかっただけさ。それに自分より強い魔力を凍らせるのにはもっと魔力を消費するんだろうね。間違ってない?」

「嘘だろ……どうしてこんな短時間で私の能力を見抜いたんだと……」


 6号は驚いて私を見つめて、まるでこんなに手強い敵に初めて出会ったみたいだ。


「6号!もう撤退しよう、あんたまだ安定してないしあいつには敵わないよ。とにかく転送門で逃げるんだぞ」

「やだ!あの方に私の価値を証明しなきゃだめだ!今逃げたら私の居場所が……」


 6号はまた広範囲の氷魔法で攻撃しようとして、今度は巨大な氷竜と氷壁を同時に作って私に襲いかかる。

 氷壁は私を閉じ込める役目で、氷竜は隙をついて私を攻撃するつもりか?

 でも冷気が凄まじい氷壁は私の火魔法で直接突き破られた。数十匹の氷竜が私を取り囲んで攻撃してきたが、空間魔法で簡単に冰竜の大口を避けて、風魔法であの子に攻撃した。

 巨大で鋭い風刃が6号を切り刻んで、あの子は氷の結晶になって地面に落ちる。

 でも地面の氷の塊はすぐに組み合わさって、6号はすぐに復活した。

 あの子の身体は完全に氷塊でできているみたいだ、。私の攻撃は全く効かない……

 でもあの子は息を切らしていて、魔力をかなり使ったみたいだ。


「6号!もう逃げろって言ったじゃん!最近やっと安定したばかり、魔女の力を上手く使えないんだ」

「うるさい……くそっ!眠い……」


 それでも残った氷竜は私に攻撃してくる。

 私の横を金色の光が通り過ぎて、美しい弧を描いて氷竜をすべて破壊した。しかも追尾機能付きだな? やっぱり黄金弓はまだ生きていたんだ。

 まあ、彼の魔力は本当に強いから、凍らせる時間は短かっただろう。

 6号は目をこすっている。やっぱり魔力を使いすぎると眠くなるんだな。勝負はついたみたいだ。


「敵が増えた!6号、早く転送門で逃げよう!あんたの力が衰えると他の人もすぐに目覚めるよ」

「ああ、お前が言ってた転送門?あれ前に壊しといたぞ」

「え?何って言ってるんだ?」


 ええ、黄金弓は最初に私とグルサンを助けなかったのは、敵の転送門を壊しに行ったからか。

 あの子は両手を氷面に置いて、巨大な氷の巨人を作って自分を包んだ。氷の巨人はパンチを振り回して私たちに攻撃しようとして、巨大なパンチが氷面を突き破って、大きな氷塊と氷晶が飛び散って、地面に落ちるとすぐに氷刺が生えてきた。

 パンチを避けても氷の巨人は全身から冷気を出していて、黄金弓の身体にも氷がつき始める。

 私は沢山の火の魔法球を呼び出して攻撃する、まるで爆撃みたいに氷の巨人を粉々にした。6号を飛び出させて戦わせるつもりだ。

 この時黄金弓は突然全身が光り始めて、顔に五本の紋が浮かび上がってキラキラしている!魔力もずっと強くなった感じがする。それで体の氷も一瞬で消えた。

 でも私たちは全力を出そうとするとき、6号はもう持ちこたえられなくて地面に倒れて爆睡した。


「ああ!どうしよう!6号まで戦闘不能になっちゃった!助けてくれよ!ロサナ!」


 これを見てちょっとからかってやろうかな。


「ああ~あんたが言ってるロサナっていう人?もうやっつけちゃったんだよ~黒い灰から助けが来ると思ってるの~?」

「ええ……マジかよ!」


 6号が気絶したせいで、凍らせた魔力も弱くなってきて、みんな次々と氷から目覚め始める。

 どうやらこちらが完全勝利みたいだね。

 そのとき突然黒い扉が現れ、その扉から出てくる魔力はすごく強くて、6号よりも遥かに上だ!待てよ!その感じ、私と似てる?でもアンデッドの気配もあるぞ!

 黒い扉から金髪ツインテールの少女が出てきた。その子は幼女体型で、顔立ちも整っている。

 その子の顔にも私と同じ魔女の印があって、でもそれは金色の魔女の印だ。

 えええ!邪教にこんなに多くの魔女候補がいるなんて!


「ああ~君たち本当にダメダメね~こんな奴らにも負けちゃうなんて、本当にざこね、ざぁこ~ざぁこ~」


 金色の魔女の印を持つ子が2号のそばに飛んできて、嘲笑しながら言った。

 でも私はその子の実力が絶対に強いことを知っている。やっぱり魔力がすごく大きくて危険で、6号にはない感じだ。

 私と黄金弓は戦闘態勢を取っていた。やっぱり相手は私よりも強いかもしれないし。


「5号!まだ私たちをあざ笑う暇なら早くみんなを助けてくれ!」

「はいはい、ロサナ様があたしにあんたたちを助けに来るように言ったのだから、さあ行こう」


5号は指を鳴らした。すると、地面から灰色の透明なゲルが現れて、眼球ロボットと6号を包み込んだ。

 あいつらはそのまま地中に沈んで逃げてしまった!


 その後、遠くの氷山が崩れ始め、残されたのは荒廃したフォスタンイーンだけだ。

 でも私たちは収穫がある。それは地面に倒れて、死にかける7号を見つけたこと。

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