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48辛い選択

 使用人から食堂の場所を知り、急いでそこに向かう。公爵家はとても大きく、私の家よりもずっと大きい。


「フランド!あんた……」


 食堂に向かう途中でフランドに会った。彼は声も出さず廊下に立っているだけ。その表情はすごく憂鬱。


「どうしたの?」

「中に入っても、どんな顔をして彼に向かえばいいのか、何を言えばいいのかわからん」

「……」

「あれは俺の父だぞ。彼の行為を告発したら、反逆罪で処刑されるかもしれないんだ……」

「フランド。でも、このままじゃ何もできない」

「うん、そうだね。お前の言う通り。ごめん、さっきはちょっと弱気になってしまって、ちょっと恥ずかしいところを見せてしまったな」


 前に出て彼の髪を撫でた。私は彼よりも背が低いけれど、つま先立ちしてなんとか触れた。彼は不思議そうに私を見ている。


「私だって同じようになるよ。だからフランドは自分の心の中でやりたいことをやりなさい、言いたいことを言いなさい。このことはあんたとあんたの父親のことだけど、秘密会のことでもあるんだから、みんなはきっとあんたを支えるよ」

「うん……ありがとう、レイラ」


 その後彼は背中を向けて何かつぶやいたけど、聞き取れなかった。

 でも彼の顔は真っ赤だ。きっと年下の女の子に慰められるのが恥ずかしかったんだろう。まだ子供だね〜その後彼は深呼吸をして食堂の扉の前に立つ。

 こんな大事件だから、私の手のひらにも汗が沢山出てきた。


「おやじ!え?」


 扉を開けると食堂には四人しかいない。二人の使用人と彼女たちだけ……


「何だよ!何でそんなに大声で、驚かせる気か!」

「ハルカを邪魔すんな!」

「「……」」


 え!公爵は来なかったの?


「ルーナ、おやじは…」

「ああ、お前の父親全然来なかったよ。仕事でトラブルがあって帰って行ったってさ。それとフェリウェム伯爵の娘さんに直接挨拶できなくて残念がってたってさ。それにこのステーキめちゃくちゃ美味しい~」

「ハルカもそう思う!」

「そうだろ!」


 この二人は大きく口を開けて食べていて、全然お嬢様らしくない。

 隣のメイドさんはフェリウェム伯爵に二人も同じ顔の娘がいるなんて驚いて、私とハルカのことをずっと見ていたから、ちょっと恥ずかしい。


「ルーナ、行こう。話さなきゃいけないことがある」

「ハルカも食べ続けないで、もう行くよ」


 私とフランドは二人を引きずって連れて行って、そしてメイド二人に苦笑いして、慌てなくていいという合図をする。


「もういいよ。ハルカ戻ってきな」

「ハルカ嫌だ!い……」


 面白いことに私は今回ハルカを強制的に自分の体に戻すことができるとは思わなかった。

 今の彼女はもう私の命令に逆らえなかった。なぜかはわからないけど。黒髪の美少女に会ってから、私の魔力は大きく変化した。

 廊下でルーナに事情を説明した。彼女も驚いたけど、すぐに落ち着いて壁にもたれる。


「なるほど、困ったことね。だって、あれはお前のお父さんなんだから」

「そうね……」

「じゃあ、諦めたらどう?これはお前のお父さんの問題だけじゃないよ、お前も巻き込まれるかもしれない。運が悪ければ、流刑にされるぞ」


 ルーナはフランドの表情を見て真剣に、そして鋭く言った。この問題は本当に難しい、やっぱり公爵と話すしかないのかな。


「それとも、公爵と話してみるのはどう?今のところ、私たちにできることはそれくらいしかないだろ。被害を最小限に抑えるために」

「レイラ、お前は多分知らないと思うけど、フランドの父親は話し合うタイプじゃないんだぞ」

「え⁉そうなの…」

「それに、もし今告発したら、公爵はすぐに政変を起こすかもしれないよ。まず一つ確かなことがあるんだ。南方超大国が今、国境で軍事演習を行っているんだぞ」

「カンがこの騒動に介入して、さらに大規模な戦争を引き起こすってことね」

「だから今の状況はめちゃ厄介なんだよ」


 フランドはただ静かに壁にもたれて座っていて、彼も手詰まりだのが分かった。もしかしたら公爵は邪教徒に王宮を襲わせたのは南方超大国が我が国の兵力を牽制するためで、政変を起こすためだのかもしれない。


「でも、公爵と話すしかできることは一つしかないわ」

「そうだね、レイラ。私たちには他に選択肢がないんだ」

「でも公爵はどこにいるの?」

「分からん」


 それじゃあ全然ダメじゃん!早くおじいさんに聞けばよかったのに。


「公爵様ならトラヴィに行くはずです」

「「「わあ⁉」」」


 ビックリしたよ、おじいさんが突然私たちの後ろに現れたんだもん。相変わらず気配が全然感じられなくて暗殺者向きじゃないかと思っちゃうよ、剣士よりもね。


「じいさん……おやじがトラヴィに行くって本当?あのクソおやじは本当に政変を狙ってるんだね」


 私の記憶が間違ってなければ、トラヴィは前国王が公爵に分封した土地だはず。それにトラヴィは我が国第三の都市であり、多くの軍団本部がある場所でもある。王都から遠く離れて山地に位置し、古来から守るにやすく攻めるに難しい戦略要地だ。


「残念だけど、トラヴィに行けるのは俺だけだ」

「え⁉どうして?」

「あれはおやじの勢力圏だからさ。俺が彼の息子として簡単に入れるのは当然だろ。あいつならトラヴィの城に隠れるかもしれないしな。お前たち入れないよ」

「そうなの……」


 そう言ってルーナはフランドの背中を強く叩いた。


「痛っ!そんなに力入れんなよ!!」

「お前、一緒に行ける人がもう一人いるのを忘れてるんじゃないの?」

「あいつのこと、忘れてなんかねえよ。行くときには呼んでやるさ、安心しろよ」


 え!誰だろう?あ!思い出した、ジャクソン・シスネロスだ。彼の父親も上級軍人。


「でも今はあのクソおやじに会うときじゃないよ。説得するには十分な準備が必要だから」


 フランドはおじいさんを見て、目つきが厳しくなる。


「じいさん、お前の態度と選択は非常に重要。どっちにつくつもりなの?俺たちの側か、おやじの側か?」

「わしはフランド様の選択と判断に干渉しません。でもわしはフランド様が公爵様と完全に決別しないことを望ンでいる」

「できるだけそうするよ……」


 屋敷を出る前に、私たちに深々とお辞儀をしたおじいさんを見て、ふと微妙な感覚がする。

 言ってしまったら、フランドは私たちを置いて行ってしまった。ルーナが呼んでも返事はしない。


「あいつは今すごく悩んでるんだろうね。確かに一人で静かにさせてあげる時間が必要だよね」

「そうだね、こんなこと誰でも同じだよ。誰だって自分の父親と敵対したくなんかないもん」


 しばらく静かにしてから、ルーナが私の背中を叩いた。わあ!やっぱり痛いよ……


「ああ!そうだ、レイラ。今から君と一緒に行くところがあるんだ」

「え⁉何?どこに?何するの?」

「もちろん、お前の異常な魔力と顔にある変な印を調べるためだよ」

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