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36意外な強敵

 周りを見回したが、私とルーナ、シスネロス以外はみんなもう地面に倒れていた。

 隣のオエリちゃんも意識が失ったけど、その寝姿美しいな。

 こんな時に何を考えているんだろう、私!


 倒れているのは南方大国の王女も含め、みんな無事なのだろうか。

 あっ!フェリクスとお兄ちゃんも倒れている。カリーナも同様で、みんな意識不明の状態のようだ。

 シスネロスは私たち二人の後ろにいて、グルサンの首を触って、彼女がまだ生きているかどうかを確認する。


「さっきみんなの様子を見てきたが、全員呼吸はしている。まだ生きてる」


 ほっとして一息ついた。やっと相手に集中できる!これも聖女様の浄化能力のおかげだね。

 しかし、目の前の光景は衝撃的だった。

 魔法使いのような特別な不死者が現れ、他の不死者とは全く異なる衣装で、黒い六芒星の仮面と漆黒のマントを身に着け、力は計り知れない感じ。

 しかし、私が驚いたのは、先程私にぶつかった新人メイドが地面に倒れていなかったことだ。彼女は不死者たちの側に立っていた……


「油断したな。レイラ・フェリウェムだけが最も手強いと思っていたが、ここにもう一人いるとは……」


 彼女が話すと、以前とは全く違う冷酷な口調になっていた。能力透視などがなくても、彼女がすごく強いことは分かる。

 でも、その不死者の魔法使いは彼女に向き直った。


「彼女の存在は確かに予想外で、行動する前にもう少し慎重にすべきだった。でも、現在の状況は手の中にある」


 不死者の魔法使いはルーナを見つめている。正直、怖い!


「この世界には他の聖女の末裔がまだいるとはな。しかし、これがお前の最後の日だ」

「じゃあやってみようよ」


 ルーナは指で相手を挑発してきた……

 相手を挑発するなんて!今の状況がわかってるのか!みんなまだここにいるんだぞ、相手の人質にされてるんだぞ!


「ルーナ!ちょっと待ってよ、ここにはまだ人がいるんだぞ!それに、あんたは能力透視を持っているじゃない、相手の実力はどうだ」

「残念だけど、相手は自分のレベルや能力とかを隠せるんだ。私には全くわからない状態だ。特にあの緑髪のやつだ、レベルとか全部偽ってるんだ」

「え⁉そうなのか」


 彼女がそう言うということは、相手は全くの未知数なのか。自分の属性やレベルを隠したり、偽ったりできるなんて……


「うん、お前の目玉には興味深い。後で取り出して、ゆっくり研究する」

「趣味悪いやつだな……」

「もし私の予想が当たっているなら、あれは女神の加護を受けてる目だろ。微弱だけど女神の力を感じられる。『万物透析』だろう、それが本当ならすごいものだ」

「ええ、お前すごいわね」

「やっぱり今お前を殺すのはつまらないな、ちょっと遊んでやる。でもその前に、私の仕事を終わらせなければならない」


 やつは指を鳴らし、不死者の暗殺者たちは地面に倒れている人たちに向かって走っていった、みんなを殺す準備をしている!

 突然、石の巨人が現れ、不死者を阻止した。しかし、不死者暗殺者たちはグルサンたちに手裏剣のような暗器を投げつけたが、弾かれた!

 かっこいい石の鎧は、十分な安心感を与えてくれる。それはお兄ちゃんの使い魔だ!そして、このスキルは……


「ごめん、ちょっと寝てた。間に合ったみたいだね」


 お兄ちゃんが立ち上がり、服をたたいた。やっぱりそれはお兄ちゃんの使い魔だ。

 みんなを守っていたのは使い魔のスキル――石の加護。

 守られた者の肌を石よりも硬くする加護。

 私もこっそり空間魔法を準備しており、お兄ちゃんとルーナが時間を稼いでくれたおかげだな。


「まずい!ロサナ様、あれは空間魔法です!」


 緑髪のメイドが不死者の魔法使いに向かって叫んだ。やっぱり事態の重大さに気づいたみたいだ。

 あの不死者の魔法使いの名前はロサナなのか?女の子っぽい名前だな?


「空間転移!」


 地面に倒れた全員をこの建物の最下層に転送した。私は以前から何度もここに来ていたので、場所についてはあまりにも熟知している。

 魔法バブルのせいで外に転送することはできなかったけど、これで十分だ!


「クソ!結局成功したか……」

「心配するな、七号。やつらはここから出られない、私がいるから」

「ロサナ様がそう言うなら……」


 彼女の名前はななごうだったね、えっ!これはコードネームだろう?人名ではありえない。

 それに、この魔法バブルはやっぱりこの不死者の魔法使いが仕組んだものだ。


 不死者の魔法使いは、不死者暗殺者たちに私たちに向かって突進するように命じ、ルーナは浄化者の剣を振りかざして戦いを繰り広げた。

 5人の不死者は彼女を囲んで回り、刀の光と音が火花と鉄の衝突音で満たされていた。

 お互いの戦闘は速かったが、ルーナはそれらの不死者を一人ずつ斬り捨てた。

 不死者暗殺者たちは、一人ずつ地面に倒れ、すぐに黒い細かい砂に変わった。さすがルーナだ、めちゃ綺麗でスマートな戦闘だったね。

 その時、一匹竜の咆哮が会場に響き渡った。


「デューク!彼女を引き裂け!」


 紫黒色の巨竜が七号に向かって突進したが、彼女に避けられた。衝突により壁が大きな穴が開いてしまい、ここでドラゴンのブレスを使うことはできなかったのだろう、火をつけてしまう可能性があるから。


「安心して戦え、僕がいる限り、みんなは傷つかない!石の加護の力はみんなの想像以上に強いんだ!」


 お兄ちゃんがそう言うのなら、全力で戦えばいい!


「私とルーナがあの不死者の魔法使いに当たる。残りはお兄ちゃんたちに任せるぞ」

「レイラ。自分も気をつけな」

「大丈夫よ、お兄ちゃん」


 七号が突然大笑いし、私たちは全然理解できない。

 すると、彼女は突然大笑いをやめ、冷酷な目で私たちを見る。


「なめられたなぁ、僕」

「七号、彼ら潰せ!」

「ああ、わかりました。ロサナ様」


 彼女はシスネロスに向かって稲妻のように突進し、手の周りに風刃のような気流が現れた。シスネロスは避けたため、切りつけられることはなかった。でも彼女はすごく素早くて、シスネロスを蹴り飛ばした。彼は地面で何メートルも転がって、すごく痛そう……

 その後も七号はまたシスネロスに蹴りを入れて、窓から飛ばした。

 デュークは魔力源を失ったため、強制的に回収された。


 その後、彼女は風魔法を使い、お兄ちゃんと彼の使い魔を吹き飛ばした。お兄ちゃんの使い魔は彼女の強力な攻撃を前もって防いでいたけど、それでもるホールから吹き飛ばされた。

 え?めちゃ強い!こんなに強い人は見たことがないぞ!

 不死者暗殺者の半分が、お兄ちゃんとシスネロスに従って下に行ったようだ。やはり彼たち二人を殺すつもりだ……


 しかし、相手はかなり危険で、私を凶悪な目で見ていたが、彼女は駆け寄らず、代わりに彼女の使い魔を召喚した。それは白い蛇で、彼女の身体に巻き付いている。

 すぐに彼女はその蛇の尾をつかみ、その蛇は鱗を持つ剣に変身した。その剣は白い光で満たされ、危険でワイルドに見える。


「何をボーッとしてるんだよ!アホ!」


 えっ!これは速すぎる!まだはっきり見えないうちに、目の前に火花が現れて、まるで華麗な花火のように咲き乱れた。その後は剣風が顔面に迫ってきたせいで、髪の毛を乱れさせた。このとき初めて気づいたが、相手の攻撃を遮ってくれたのはルーナだった。


 このとき身体の外側に液体が流れるのを感じて、自分が少し血を流していることに気づいた。どうやら擦り傷を負ったらしいが、不思議なことに痛みを感じなかった。

 あの7号は後ろに跳び上がって、空中で一回転して、軽やかにツバメのように空を切った。そして私たち二人と距離をとった。


 でもこれで終わりではなかった。ルーナは剣を持ち上げて彼女に向かって突進し、二人はすぐに激しい戦闘を繰り広げている。剣と剣がぶつかるたびに、豪華な部屋の中に強風が吹き荒れる。それは彼女たちの激しい対決が生み出した気流だ。

 今回の剣風はすごく鋭利で、部屋の壁を切り裂いて、深い刀痕を残した。彼女たち二人が剣で戦うたびに大量の火花が飛び散り、本来暗かった部屋を照らた。


 戦争女神の加護がないから、二つの残像が周囲で回転しているだけで、時々火花が一閃するのを見ることしかできない。まったく何が起こっているのかわからい。

 周囲の壁が衝撃波で次々と崩れていくのを見るしかなかった。窓も割れて飛んでいって、ガラス片がゆかに散らばった。

 鉄と鉄がぶつかるような轟音が耳をつんざくし、同時にガラスが踏み砕かれる音も聞こえてきた。ガラスが割れる音が止まる気配はなかった。


 二つの黒影は私と不死魔法使いの間で行き来して跳ね回っている。まるで幽霊のような姿でダンスホールの中を駆け巡っている。私の後ろの壁が強烈な剣風で全部壊される後、その二つの黒影は壁の亀裂から出て行ってしまって、私一人だけ残された。


 あの不死魔法使いも静かに見ていただけだった。ここで起こったことを見てから、やっとここの戦闘が終わったことに気づいたらしい。彼は壊れた壁に目を向けて、何か考え事をしているようだ。


「うん、想像以上に強い。ここで彼女を殺さなければいけない」

「残念だけど、あんたの相手は私だ!」


 彼のそばにいる不死暗殺者たちもすぐに警戒した。ゆかに座っている私を見つめていた。やつらは目もなくて、真っ黒な骸骨だけど、その殺意も感じられる。

 私もすぐに立ち上がって、戦闘態勢に入った。

 そしてあの不死魔法使いもゆっくりとその恐ろしい頭部を私に向けて回した。空洞の眼窩から一筋の殺意が漏れ出して、私に未知の恐怖感を与えた。


「ああ、もちろん。お前のことも忘れてないぞ。今後も一番厄介な敵になりそうだから、お前もここで死ね。レイラ・フェリウェム」

「ええ~それじゃあやってみようよ!」

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