23神様の悪意
「ああっ!レイラちゃんだ、おい!こっちこっち!」
メインコントロールルームのエレベーターに乗って闘技場に来た。エレベーターから出ると、熱心に手を振っているフェリクスの姿が見える。
ああ!お兄ちゃんも手を振ってる。でも私は苦笑しながら彼らに手を振るしかない。
ハルカはスライムの姿に戻って、私の頭の上にいた。
「さっき戦闘の音が聞こえたけど、みんな大丈夫?」
「ああ、レイラちゃん、聞いてくれよ…」
フェリクスがどうやってルーナがすごいとか言うか聞く必要はなかった。だって画面で見てたんだもの。
それに石像の魔物もロボットたちも私が呼んでみんなを攻撃したんだから。
「レイラはすごいね。どうしてあっちから来たの?」
「お兄ちゃん、ぜ、前方の宝物庫の仕掛けと罠を解除したの。みんな私についてきて」
「やっぱり優秀だな、僕の妹」
お兄ちゃんの目から涙がこぼれそうになっていた。感動してるみたいだけど……
「ディラン、何言ってるの?これはレイラちゃんだよ。いつも優秀じゃん。そうだろ?」
ダメだ!お兄ちゃんとフェリクスが信頼してる目で見てくると、罪悪感がすごい……
「うんうん…そうだよ…」
「ん?レイラ、よくやった。でも、なんで僕たちを見ないの?」
ごめんなさい、お兄ちゃん、私はただみんなに迷惑をかけるばかりのお荷物の妹なんです。
「無事で良かった」
「う、うん」
ハルカはお兄ちゃんの手に飛び乗って、私はみんなをこのダンジョンの宝物庫へと導いた。
罪悪感のせいで、ルーナの顔を見ることができなかった。途中でみんなは話したり笑ったりしていたけど。
あれ?宝物庫の入り口に人が立っている。
「遅すぎる!」
フランドの登場は予想外だった。だって画面で彼の姿を見なかったもの。
そしてみんなが宝物庫に入ると、中はすっからかんだった。それでお兄ちゃんが彼に尋ねた。
「アゴスト君、どこに行ってたの?」
「その時、落ちてからダンジョンの内部に入れる方法を探して、面白いものを見つけたよ」
「へえ、それは何?」
「この三角錐だ。そしてみんなよく聞いてくれ!それに危険なアンデッドがここから逃げ出した。やつはスクリンの町へ向かうはず」
彼の手には確かに変な三角錐があり、かすかな光を放っている。フランドが言い終わらないうちに、宝物庫から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『おいおい!聞こえるか?』
ああ、あのキモ男だ。声だけでわかる。
「レオンス・フォルタン」
シスネロスが彼の名前を言ったとき、表情が厳しくなった。そうか、あいつはレオンス・フォルタンという名前なんだ。ゲームに出てこないキャラだね。
『さっきダンジョン全体を爆破できなかったのがちょっと悔しかったから、また戻ってきたよ。お前らはあと5分くらいでここから逃げ出せるかもしれないが、一生出られないかもしれないぜ。わははは!うわははは‼』
『フェリクス・ウルド・フォスコーロ。絶望を味わえ!わはははは!』
それから知らない人物が話し出した。今度は誰だよ?フェリクスのことをどうして知ってるんだ?
「マカーリオ ・アンブロシオ ・サストル」
今度はフェリクスが彼の名前を言った。今はそれを言うときじゃないよ。メインコントロールルームに戻る時間はないし、とりあえず逃げるしかない。
「みんな私について飛んで」
幸い私は出口に行く道を用意しておいた。みんなが飛行魔法で私について飛んだ。
ダンジョンの扉がまた閉まるには再設定しなきゃいけないから、この時間で逃げられるはずだ。
これは相手が予想してなかったことだろう。
やっぱり、ダンジョンが揺れ始めている。前方の通路が崩れてきたし、もっと悪いのは後ろに巨大な爆発があったことだ。爆発の炎が私たちの後ろの通路を飲み込んだ。
出口は外界に繋がる坑道だ。
私たちは狭くて長い通路を飛び出して、必死にダンジョンから離れた。
大きな音がして、地面全体が揺れて、たくさんの亀裂ができた。
「さっき危なかったな……」
フェリクスは体力が持たずに地面に倒れ込んだ。息を切らしていた。実はみんなも同じだった。
私とルーナ以外は。私と彼女だけがまるで何事もなかったみたいにしていた。
普通の人の状況を考えると、こんなに速い飛行魔法は魔力を極度に消耗する。
それにこれだけの戦闘を経て、魔力はもう枯渇してるんじゃないかな。
「はあ、はあ……フランド、今の俺たちはあの不死者を追いかける魔力なんてないよ」
「わかってる……はあ、思わなかったよ、あのやろうが諦めないなんて」
フランドとシスネロスは疲れ果てて地面に倒れ込んだ。お兄ちゃんも息を切らしていたけど、そこまで疲れてないみたいだ。
フェリクスだけが立ち上がって、私たち二人が全然息も切らさない様子を見て、苦笑しながら言った。
「はあ、レイラちゃんとレイバウェスさんもすごすぎるよ……」 「そうかな、フェリクス兄ちゃん」
フランドが立ち上がってルーナのところに歩いて行って、何か小声で話した。
「みんな安心して。これから私とレイラちゃんが一緒にあの不死者を追いかけるから」
「え⁉ああ、そうだね、これから任せてね」
意外にもルーナが自分から私と一緒に追いかけると言ってきた。ちょっと驚いたけど、今は考える暇もない。
スクリンの町はいつ危険に陥るかわからないし、特に巨乳の女の子たち。
「本当にルーナの言う通りだよ。時間がないから、二人で行こう」
「うん、行こう」
今は夜だから、明るく灯りがついてる方向に向かえばスクリンの町の方向だ。ここから近くにある唯一の町だからね。
ハルカは兄さんの頭から離れて、私の肩に飛び乗る。
「でも、私についてこれる?」
「大丈夫よ、ついていけるって」
すぐに私たちは跳び上がって、明るく灯りがついてる方向に飛んで行った。お兄ちゃんたちと別れを告げる暇もなかった。でも本当に時間がなかったんだ。
ハルカはお兄ちゃんの頭から離れて、私の肩に飛び乗る。
「スクリンの町に着いても戦える?」
「ええ、大丈夫。私の魔力は君ほど多くはないけど、あいつに対応するには十分」
「え?どうやってわかったの?」
その時彼女は私に微笑みかけて、驚くべきことを言った。
「もちろん君のステータスを見ただけよ」
彼女の表情は平静だった。まるで何でもないことみたいだ。でも私にとって相手の属性を見られること自体がすごいことだ。
「入学式の日にも私の正体を知ってたでしょ?どうして驚くの?あなたも能力透視で他人のステータスを見られるでしょ?」
「ごめん、私にはそのスキルはないよ……」
「え⁉君、転生者じゃないの?」
彼女は振り返って私を見ている。とても信じられないような顔をしていた。でも私たちは気まずい沈黙を保った。私が先に口を開いて沈黙を破らなければならない。
「あはは、せめてお互い信頼し合えるといいね。そうだよね」
「ああ、そうだね!」
「どこから来たの?どうやって死んだの知ってる?」
「日本から来たの。イギリスで交通事故にあったの。あはは……」
「イギリスから来たの。日本で交通事故にあったの……」
え⁉あんたはイギリス人だったの?私たちはお互いを見て、女神様の悪意を感じた。




