2.初対面不可避
「まさかフォスタンイーンに入るなんて思ってもみませんでした。本当に楽しみですね」
オエリちゃんは馬車の中でとても興奮して、私とお兄ちゃんも思わず笑ってしまった。
フォスタンイーンの試験は筆記と実技に分かれる。
筆記は満点100点で、私は学校で唯一の満点者。前世の私も優秀な学生だったからね。しかもケンブリッジ大学に合格したんだぞ。
実際の年齢は14歳以上だから、これらの成績は当然だと思ってる。 フォスタンイーンの実技は本当に難しい。
今の私でも満点は取れない。現場試験を担当した先生も驚いてたけど、他の子の成績も私より良かったりする。
やっぱり北の国々で一番いい魔法学校だから、才能ある人が集まっている。私の体質の才能は筆記ほどすごくないみたい。ちょっと残念だな。
ゲームの設定によると、ヒロインの成績はゲームでとてもすごい。フォスタンイーン魔法学校で学年トップ。
でも私はこの一生でヒロインに会えないだろうな。
オエリちゃんが急に何かに気づいた。その時御者のカロスが私たちに声をかけた。
「ディラン様、前方で何かあったみたいですよ。通れません。警察が道路を封鎖してますし、人も多すぎます。このままじゃ無理です」
窓から外を見ると、人でごった返していた。そんな光景を見てお兄ちゃんは少し考えてから言った。
「仕方ない、別の道を行こう」
市街地では馬車を速く走らせられないから、人気のない道を選んだ。
カロスが大声で叫ぶと、竜馬が速く走り出した。馬車が急速に進んで、窓から見える景色がすぐに過ぎ去る。
華麗な鱗をまとった、長い四肢を持つ青色の竜馬は持久力が得意で、富豪や貴族の象徴なんだ。
お父様は一台持ってるし、私とお兄ちゃんは一台を共有してる。現実の高級スポーツカーみたいだね。
「窓から顔を出して外の景色を見たいな。風が吹くと気持ちいいだろう」
「レイラ、危ないよ。もし……」
「お嬢様、すごいですね!外の景色はきっと面白いですよ」
オエリちゃんも外を見て驚きと興奮の表情をした。
「はあ、二人とも……」
お兄ちゃんはため息をついて、困った顔をした。オエリちゃんも私も窓から顔を出したかったけど、お兄ちゃんがいると無理だろうな。
竜馬は普通の馬より速い。チーターにも負けないくらいね。でも馬車を引いてるとそんなに速くはなれない。
しばらくすると、窓からの景色もはっきり見えるようになった。
「もうすぐ着くよ。途中で大きなトラブルもなくて良かった」
お兄ちゃんがそう心配してるのは、前に他の人の馬車にぶつかって、荷物が散らばった事件のせいだ。それは数日前のことだった。お兄ちゃんがそんなに心配するのもわかる。
「お嬢様!フォスタンイーンが見えますよ、早く見てください!」 「オエリちゃんはまるで子供みたいだね」
「お嬢様はそう言っても、期待してる顔をしてますよ」
「ええ、そう?」
私とオエリちゃんは笑ってしまった。
しかしカロスが突然大声で叫んだ。馬車が揺れている。
「待ってくれ!」
竜馬が突然前に猛ダッシュした。私たちは中にいて何が起こったかわからない。
仕方ない、窓から出て竜馬をなだめようと思った。でもお兄ちゃんの方が早かった。
私とお兄ちゃんが馬車の上に出たとき、やっと何が起こったかわかった。
「おい!あっちのやつ、早くどけ!」
カロスが大声で叫んで、周りの学生に避けるように警告した。
さっきの学生たちは何とか避けられたけど、学校の門口は人が多すぎて、事故が起こるのは時間の問題。
「「「わあああ‼」」」
学生たちは驚きながら避けていった。でも竜馬が暴走する理由がわからなかった。
うそ!まさかこんな時に、なぜ竜馬が暴走するんだ?
もしかして……ありえない!
入学式の日、ゲームの設定によると、竜馬は確かに暴走する。暴走する理由は……
全然時間がない! 茶色の髪の女生徒が気づかなかった。彼女は重傷を負う!
高速詠唱で魔法を使おうとしたけど、馬車が揺れすぎて正常に発動できない。
やばい!もう間に合わない……
彼女にぶつかりそうになった瞬間、空から一つの影が飛んできた。その影の後ろには散らばった花びらが残っていた。
どこから来た花びらなんだろう……
よく見るとその影はフェリクス・ウルド・フォスコーロだった。 彼は空中を滑るように飛んできて、カッコイイマントを風になびかせていた。まるで現実の白馬王子みたいだ。
スカエリヤ帝国から留学生としてフォスタンイーンに来ている。私の一番好きなキャラクター。
「風の女神よ、ここであなたの奇跡を示してください」
強い風が女の子を空に吹き上げると同時に、竜馬もお兄ちゃんによって抑え込まれた。
フェリクスは女の子と一緒にゆっくりと降りてきた。空中のタンポポのように舞っている。
「美しいお嬢様、お怪我はありませんか?」
「あ、大丈夫です」
フェリクスは女の子を下ろして、優しく支える。
私はすぐに馬車から飛び降りて、治療魔法を使おうとする。でも目の前の光景を信じられなかった。
彼女はこちらに気づいたみたいで、私に軽く微笑んだ。私はずっと立ち尽くしている。
波打つ茶色の髪、金色の瞳を持っていた。彼女の身分は確認する必要もない。
あの人は悪役令嬢のライバルであり、ゲームのヒロインだ。