18偶然の合流
約二十体のロボットガードに追われているハルカ。どうやってそんなにたくさん引き寄せたのか分からないけど、あのバカ……
「ハルカちゃん、何やってるの?」
「早く逃げて、フェリクス兄ちゃん。私たちは勝てないよ」
ハルカが私たちのそばに走ってきた。息が切れている様子だ。
「ごめん、ハルカ……こんなに、多かったとは……」
そのとき、後ろからミサイルの音が聞こえた。水魔法で盾を作って、ミサイルを水にくっつけて爆発させようとした。
でも、ミサイルが多すぎて、作った水魔法の盾では防ぎきれない。
爆発で周りの石畳が壊れてしまった。それでも、ミサイルは私たちを攻撃し続けている。
「もうだめだよ、フェリクス兄ちゃん。先に逃げて」
「バカなこと言うな!」
大規模な爆発で地面が崩れ始める。
まともなところは私の足元だけだ。後ろの道路はすでにひどい状態になっていた。
こんなときはハルカに頼るしかない……
え?振り返ってみると、ハルカは元の姿に戻っていた。どういうこと?あのバカはいつも頼りにならないし、今もそうだ!
やっとミサイルの攻撃が終わったと思ったら、ロボットガードたちが突進してきた。
まずい! 近接戦が苦手だ。だって、甘やかされてきたから、少しでも大変な体力仕事はしなかったんだもん。
転生したての二年間は近接戦闘力がこんなに弱くなかったのに、怠け者になっちゃったなあ。
そのとき、空から紫黒色の巨大な竜が落ちてきて、ロボットガードたちの体を豆腐のように引き裂いていた。
やっぱりこんなときは強力な使い魔が必要だよね。
「大丈夫か」
私の前に立っているのはジャクソン・シスネロス。
「うん、大丈夫、フェリクス兄ちゃんは……」
「ああ、今も元気いっぱいさ」
フェリクスが無事で良かった。でも、シスネロスが見ている方向を見ると、紫黒色の竜が倒れていた。息も絶え絶えだった。
あんなに強力な爪と鱗を持っているのに、ロボットガードをたくさん引き裂いたけど、まだまだ数が多い。
「よくやったぞ、デューク」
シスネロスは使い魔を呼び戻した。そして私に向かって言った。
「まだ戦えるか?」
「ふん!学年二位の私をなめるなよ」
「うん、そうか。じゃあ俺の足手まといにならないでくれよ」
言って、シスネロスは腰からかっこよく剣を抜いた。その光景に心を奪われる。
シスネロスは素早く動いて、ロボットガードの一体の腕を切り落とした。本当にかっこいいな。
でも、シスネロスも私と同じようにロボットに吹き飛ばされた。そのあと建物にぶつかった……
「「え⁉」」
シスネロスがぶつかったのは時計台だった。シスネロスのせいで時計の音が鳴り響いた。
「しょうがないな」
「え?フェリクス兄ちゃん、もしかして……」
フェリクスは私を一瞥した。すぐに何を意味するのか分かった。
「レーシー、行くぞ」
「ビッ!」
レーシーはとても可愛いマイクに変身して、フェリクスの手にやってきた。
フェリクスの周りに回転する舞台照明が現れる。それはレーシーがフェリクスに与えた特殊な魔法陣だ。
やっぱりそうだったか。自分を強化する魔法の詠唱を唱えて、最大限の魔力で自分の身体能力と肌の硬さを強化した。
今は魔力で自分を強化するしかない。これはすごく疲れるし筋肉痛になるけど。
それから火魔法で火炎の大剣を召喚する。
灼熱の痛みという名前の魔法だ。それほど強力な魔法ではないけど、これで十分だろう。
「レイラちゃん!」
「よし!行くぞ!」
魔力の音符が奏でる美しい声とともに、フェリクスが歌い始める私にとってもっとも馴染みのある曲だ。
気づけば全身が羽のように軽くなり、魔力が体内から溢れ出てきた。力に満ちている。今の私は何でもできる気がした。
ロボットたちは越えられない鉄の壁を作っていた。拳は雨のように私に向かってきた。
ロボットの拳の攻撃をかわしながら、炎の剣を振り回して攻撃を防いだ。火花が散った。
そしてロボットの真ん中に入り込んで、ロボットたちが一斉に拳を出す瞬間、自分を高速で回転させた。火炎の竜巻がロボットたちをなぎ倒した。
ロボットたちの上半身が次々と倒れて、大爆発が起きた。
爆発でできた煙の中から飛び出して、空中で一回転して地面に着地した。手に持っていた炎の剣を消してしまった。
まるでチートのような戦闘力に、自分でも驚いた。
やっぱりフェリクスの強化魔法はすごいなぁ。フェリクスは美しい歌声を止めて、レーシーも元の姿に戻った。
「レイラちゃん、すごいね!どうして俺が次に何をするか分かるの?」
「ああ、それはね……」
だって私はプレイヤーだから、フェリクスが次に何をするかはもう知っているんだよ。それは歌声で身体能力と魔法戦闘力を強化することだ。
「それは、フェリクス兄ちゃんを信じているからだよ」
「うん、そうか」
フェリクスは嬉しそうに笑った。私の心も彼の笑顔で癒された。 でも、私の全身が酸っぱくなってきた。明日起きられるかな。
「うん、二人ともよくやった」
シスネロスが突然私たちの後ろに現れて、二人とも驚いた。
「うわあ!そういうのやめてよ、シスネロス君。心臓に悪いよ」
「ふん!さっきは油断しただけだ。こんなレベルの敵なら楽勝だ」
「ええ……そうなの?じゃあレーシーに治療してもらおうか」
「こんな程度」
シスネロスは相変わらずだな。いつも強気な態度で、悪人ではないけど、あまり良い印象を与えないよね。
でも、シスネロスはやっぱり地面に倒れて、苦しそうな顔をしている。
「やっぱりだよ」
「違う!怪我したからこうなったじゃねぇ」
シスネロスは起き上がろうとしたけど、私に手で押さえられた。
「シスネロス君、ちゃんと治療しなきゃダメだよ」
「……」
シスネロスは私たち二人の強い態度に最後の抵抗も諦めて、素直に治療を受け入れた。
レーシーはシスネロスのお腹の上で踊りながら治癒魔法を使う。
すぐに気づいたけど、ここには彼一人しかいない。フランドは一緒にいなかった。
「あれ?どうして一人なの?もう一人は?」
「ああ、サルか。ロボットの攻撃で、俺たちはばらばらになった。あいつなら大丈夫だと思う」
今の状況は厳しいから、行方不明のハンターはとりあえず置いとかなきゃ。
「フランドを探しに行こうよ。ここで一人になるのは危ないよ。ハンターはとりあえず置いておこう」
「レイラちゃんの言う通りだと思う。シスネロス君はどう思う?」
シスネロスは苦笑しながら答えた。自分の力不足を嘲笑っているようだ。
「そうだね、でもまずは今の状況に注意しろ」
「「え?」」
それから私はシスネロスの言っている意味が分かった。
周りにはたくさんのロボットの足音が聞こえた。え!どうして?時計の音がロボットたちの注意を引いたことに気づいた。
そのとき私たちの足元に巨大な影が現れた。どんどん大きくなって…
え⁉これってまさか!
緊急事態に私は風の魔法でみんなを吹き飛ばした。
何かが落ちてきて、巨大な衝撃波が私たちを吹き飛ばした。 地面が大きく割れて、石が飛び散った。周りの建物も容赦なく破壊された。
衝撃で頭がクラクラしたけど、今の状況を理解しようとした。
煙の中から赤い目が光って、巨大な黒い影が潜んでいるのが見える。これなに!




