15意外な遭遇
中に危険があると心配して、二人を門の外に待たせた。
部屋の中はとても簡素で、黒板と机が二つしかなくて、ああ、遠くにはクローゼットもあって、なんとベッドまである。
これは森林官の家なのだろうか?
部屋に入ると、床が音を立てた。怖いな。
「私は強い、私は強い……」
そうだ、私は強い。三十人の騎士にも匹敵する亜竜にも恐れない……
「あっ!」
突然の物音に驚いた。ええ?何だろう?よく見るとネズミだった……
「ふぅ、危なかった。爆裂魔法でここを平らにしそうだったよ」
本当だよね、あの数匹のネズミが私をこんなに緊張させるなんて。
机のところに行ってみたが、役に立つものは何もなくて、空の酒瓶や吸い殻ばかりだった。
黒板には魔法解析式が書かれていたが、これは大学でしか教えられない高等解析式だ。封印解除系の魔法らしいけど、基本的な実験器具や道具もないのに。
魔法は自然魔法以外にも、構造魔法や空間魔法、そして死霊魔法の四種類がある。死霊魔法は各国で禁止されているが、それでも不法者がこの魔法を使っていることがある。
最後に調べるところはクローゼットだ。クローゼットを開けてみたが、何もなかった。数枚のぼろ服だけだった……
待って!これはハンター用の弩矢と匂いを隠す臭袋じゃないか? 臭袋はとても臭いけど、今は何も匂わない。期限切れだかな。
ええ、この部屋の主人はハンターなのか?でも黒板に書かれているのは高等魔法だよ?
ハンターがこんなことを研究するわけがないじゃないか? やっぱり変だよね……
部屋の主人は邪教の高位魔導士で、ハンターは偽装した身分かもしれない。
クローゼットの下に微かな魔力の気配がある。魔力の気配はとても小さいから、普通の人は感じられない。こんな程度の偽装。
風魔法でクローゼットを押し開けた。クローゼットの下の板が怪しい。簡単に一メートルぐらいの板を持ち上げる。四枚の板を持ち上げた後、下に隠されていた秘密も見えてきた。
これは隠し扉だ!でも魔法で閉じられている。
普通なら開錠するには対応する魔法道具が必要だ。鍵みたいなものだね。
でも、この魔法の鍵はとても簡単だ。魔法で簡単に解除できた。
この魔法の鍵は少し古いね。現代の魔法には似ていない。
隠し扉の中は地下に通じるらせん階段だ。とても暗くて陰気だ。
「ええ~どんどん面白くなってきたね」
そのとき、部屋の外から声が聞こえた。あれはあの二人か?仕方ない、二人の様子を見に行ってみよう。
ドアを出ると、草むらから変な音が聞こえる。音は人間が出すものではなくて、バイクのエンジンみたいに低く振動する音だ。
「ハルカだろう、フェリクス兄ちゃんまでこんなつまらないいたずらに付き合って……」
手を叩いて、二人にやめろと伝えようとしたが、返事がなかった。
「まったく、二度も騙されると思ってるの?」
しかし、何かがおかしい!
草むらから出てきたのは白い巨大な体躯。弧状の稲妻が体に巻きついているトラだ
えっ!嘘だろ……トラと言っても、全身に雷電の紋様があり、キラキラ光っている。体型は巨大で、私を一口で食べられそうなぐらいだ。
「雷紋虎……」
こんなところで珍しい野獣に会えるとは思わなかった。不死族や魔物と違って、生き物は人間と同じ感じがする。
雷紋虎の巨大な咆哮が森に響き渡り、何羽もの鳥を驚かせた。 私は寒気を感じた。
目の前の強大な生き物がゆっくりと私に近づいてきた。
すぐに雷紋虎は背中に三つの電球を集めた。攻撃を仕掛けようとしているようだ!そうなったら。
「大地の女神よ、ここに大地の盾を築け!」
すぐに私の周りに巨大な土壁が現れて、私を包んだ。
やはり三つの電球が私に飛んできて、土壁を砕いた。魔力を足元に集めて、風の女神の加護を借りて後ろに跳び開けた。
破片から逃れることができた。もし土壁に止められなかったら、感電して全身麻痺しちゃうよね。
本当に面倒くさいな、雷玉の攻撃をかわしながら、雷紋虎にも傷つけないようにしなきゃだし、だって雷紋虎は国の保護動物なんだから。
足が地面に着いた瞬間、雷紋虎が加速して走り出した。まるで稲妻のように私に向かって突進してきた。速すぎて反応できないところだったけど……
雷紋虎は私が土壁の下に早くも仕掛けておいた魔法陣の上を通り過ぎた。流砂に捕まって動けなくなった。
実は最初からこうなると思っていたんだ。土壁の下にもう一つ魔法陣を設置しておいたんだ。
雷紋虎はまんまと私の罠にはまってしまった。所詮動物なんだね。
今はもう雷紋虎は動くことができない。どんなにもがいても。
「まったく、こんなところで雷紋虎に出会うとは思わなかったよ。最初から手加減してよかった。数が少なくなってるからね」
「わあ、レイラちゃん。見て見て、雷紋虎だよ!」
「わああああ、すごく大きいね。ハルカは初めてトラさんを見たよ」
森の中から突然二人が現れた。
正直言って……
二人を風刃で殺しそうになったよ。森の中から突然出てきたから、他の雷紋虎かと思ったんだ。
「レイラちゃん、どうした?」
「さっきは危なかったよ。フェリクス兄ちゃん、何かあったら遅いんだから」
「ええ?レイラちゃんはすごく強いじゃない。大丈夫だよ、レイラちゃんを信じてるよ」
違うよ、さっき私が殺そうとしたことだよ!まあ、もう何も言わないけど。
「フェリクス兄ちゃん、二人はどこに行ってたの?それに、手に持ってるのは……」
「ほら、フェリクス兄ちゃん特製の焼き魚だよ」
「え⁉何?」
フェリクスが焼き魚を渡してくれた。香ばしい匂いがするし、おいしそうだ。
「せっかく焼肉装置を持ってきたんだから、使わないともったいないと思ってさ、魚を捕まえて焼いてみたんだ」
「そうそう!ハルカも手伝ったよ、魚を捕まえるの」
「そうそう、すごかったね、ハルカちゃん」
「えへへ」
フェリクスが優しくハルカの頭を撫でてる。二人がこんなに一生懸命焼いてくれた魚だから、怒る気になれない。
ん?もしかして焼き魚の匂いに誘われたのかな。
まだ二人に聞きたいことはたくさんあるけど、焼き魚の味は本当においしい!
あまり考えないことにした。香ばしい調味料と、魚の皮はパリパリで中はふわふわで、焼き加減が絶妙だ。
「どうだ!レイラちゃん。味は最高だろ!」
「本当においしいよ、フェリクス兄ちゃん」
「へへ」
焼き魚を食べてるとき、雷紋虎のうめき声が聞こえたような気がした。 え⁉もしかしてこの子も食べたいの?




