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燃え盛る炎、荒れ果てた通り、そして街を覆う木の根が終末の景色を作り出す。王都郊外へ向かう道は人々で溢れかえり、皆泣き叫びながら逃げようとしていた。
幸いにも郊外やスラム街は広大で、十分に大きな防衛線を築くことができる。
その大量の人数により、魔物たちはすぐにここに目をつけるだろう。その時、王都の兵士たちは依然として陣地を守り続け、平民さえも大事な人を守るために剣を取っていた。
一方、グルサンとアンナは平民の避難を担当し、クリリスは港で負傷者の救助する。王都の各地の学生たちも自発的に救援活動を組織し、兵士や魔導士を支援してきた。
その時、アンナが小走りでやってきて交代する。
「グルサン、あなたも少し休んでね。ここは私に任せて」
「いや...少なくとも何もできなかった過ちを償いたい」
「そう...」
アンナはため息をつき、そっと彼女の背中を叩いた。
「自分にあまりプレッシャーをかけないでね」
「ありがとう」
突然、人々が四散し、叫び声を上げながら逃げ出した。見ると魔物たちが兵士たちの構築した防衛線を突破していた!魔導士たちもいたが、大群の魔物には歯が立たなかった。
魔物は人々の中に突入し、血なまぐさい殺戮を始める。剣を持った平民も魔物にとっては棘付きの食べ物に過ぎないだけだ。
グルサンとアンナが救助に向かおうとした時、巨大な魔物が道を塞いでいた仲間を一撃で殴り飛ばした。たとえ魔物が避けても、一蹴りで蹴とばせる。
巨大な体格、強靭な体、緑色の皮膚とトカゲの鱗。立ち上がると三階建ての建物ほどの高さがあるらしい。
リザードマンは、魔導士たちが設置した罠を簡単に破壊し、火球や様々な魔法にも恐れなかった。
「リザードマン!でもその魔物は本に描かれているものと少し違う?なんか強そうだ」
「グルサン、本の知識も必ずしも正しいわけではないわ」
グルサンはすぐに魔力を使って自分に魔力の鎧を纏い、アンナは花のような使い魔を召喚した。
グルサンは炎剣の攻撃を繰り出したが、リザードマンには全く効かなかった。しかし、リザードマンは港に近づく人々を見て無視してそこへ突進していく。
「しまった!アンナ!」
「簡単に行かせはしない!」
アンナの使い魔は大量のツタを召喚し、リザードマンの脚と尾をしっかりと縛り、地面に倒した。
その後、さらに多くのツタが現れてリザードマンを縛り付けたが、リザードマンは少し力を入れただけで束縛を振り払った。
「ありえない...何という怪力...」
「ぼーっとしてないで!兵士たちを守って!」
しかし、兵士たちはこんな怪物を見て戦う気にはならず、すぐに逃げ出してしまう。そのせいで平民を掴んで食べる怪物を放っておく。
「やめろ!」
グルサンはツタで縛った大鐘をリザードマンの顔に向かって投げつけた。衝撃が強すぎて、リザードマンの顔がひどく変形し、多くの歯が飛び散り、口から大量の紫色の血が流れている。
これで終わらなかった。グルサンは再び空間魔法を使い、鐘を自分の元に呼び戻して再度同じ手段を使おうとしたが、リザードマンの顔はすぐに元通りになり、目は血走り、明らかに怒った。
ものすごい速さでグルサンに突進してきた。アンナはツタで足を引っ掛けようとしたが、リザードマンは巧みに避けた。
「グルサン!」
大きな口を開け、鋭い爪を振りかざし、グルサンに飛び掛かってきたが、グルサンは空間魔法でなんとか逃げた。
「速すぎる...このままだと魔力が先に尽きてしまう」
その時、空に光が現れ、一瞬でリザードマンの頭に激しく打ち付ける。続いて、人影が魔物の首元に高速で回転し始めて、気付けばリザードマンの首が切り落とされていた!
「あなたは?」
煌びやかな金色の鎧が暗い空の下で際立つ。
「ごめんな、遅くなった」
「黄金弓さん!」
「民を守ってくれてありがとう、グルサン姫。さあ、皆を港に集めよう」
すぐに皆は港付近に集まったが、一隻も船が見当たらなかった。皆が困惑していると、グルサンが尋ねる。
「黄金弓さん、なぜ船が一隻も見えないのですか?」
黄金弓は空っぽの船着場を見て、口汚く罵りながら足を踏み鳴らす。
「あの野郎ども!自分たちだけ逃げやがった」
「他の船はありませんか?」
「恐らくないだろう。このままだと皆瘴気で死ぬ...瘴気は既に郊外まで来ているし、すぐここにも到達するだろう」
皆が絶望に陥っている時、グルサンが何かを思いついたかのように言った。
「ウルスクリン山へ向かいましょう、そこなら暫く瘴気を避けられるはず」
「でも、どれくらい避けられるのか、山の上にどれだけの物資があるのか...あれ?そうだ!勝利旅館!」
幸いにも港の近くには山へ向かう道があり、グルサンは黄金弓の肩を叩く。
「さあ、出発しましょう」
北の荒れ果てたロジナの町は、かつての賑やかさを失い、今や建物の残骸と焼け焦げた瓦礫で覆われていた。
ロジナの城の下では、白布で包まれた百体以上の遺体に皆の視線が注がれている。これは、逝った者たちへの最後の敬意だった。
人々の嘆き悲しむ声が痛みを隠しきれず、フェリクスとオエリは涙を拭いながら泣いている。
ディランはジャクソンのために薪を組んで火葬の準備をしていたが、彼を見送るのは彼が救った親友フランドだった。
しかし、フランドの目は虚ろでまるでゾンビのようにゆっくりとジャクソンのそばに歩み寄り、ディランも立ち上がってそっとフランドを抱きしめてからその場を離れた。
しかし、火の棒が薪に触れようとした瞬間、再び彼は泣き崩れた。
「全部俺のせいだ!全部俺の...」
「これは誰のせいでもない...僕のせい...勇者として無能すぎたんだ...もっと早く、もっと強ければ...」
皆は再び深い悲しみに沈み、ディランはそれを見かねて声を上げた。
「もう十分だ!今更自責しても何も変わらない、今やるべきはただ一つ、逝った者たちが安心して旅立てるようにすることだ、皆の犠牲を無駄にしないために!」
話しているときディランの手が震える。フランドは泣きながら薪に火をつけ、皆は頭を垂れる。
その時、エリザベス公爵が階段に立った。
「今、皆が悲しんでいるのはわかる。最も大切な家族や友人を失ったのだから。しかし、はっきりさせておかなければならないのは、魔族たちは私たちを絶望に追い込もうとしているということだ。だからこそ、もっと強くならなければならない。同じ悲劇を繰り返さないために。また、公爵として私は生き残った者すべてに栄誉を与えたい。そして、戦って死んだ騎士たちにも最高の名誉を授けたい...逝った者たちには意味がないかもしれないが、生き残った者たちは彼らがなぜ死んだのか、何のために死んだのかを忘れてはならない」
エミリが勇者のそばに寄った。
「勇者様、公爵様のおっしゃる通り、これこそが魔族たちの狙いだ。このような悲劇を避けるためには、勝利まで奴らと戦い続けなければならない」
「僕は無能な勇者。これまでで最も恥ずかしい勇者かもしれないし...何も守れなかった...」
「そんなこと言わないでください!でも、勇者様にはオランスドを離れて聖剣騎士団本部へ行ってほしい」
レイナードが突然何かを思い出したように怯えながら言った。
「すみません、勇者様...魔王教信者から聞いた話では、王都とトラヴィにも同じ監獄のような場所があるとか...」
皆は驚いてレイナードを見つめ、まるで冗談を言っているかのようだ。
フランドはそれを聞いてレイナードの襟を掴み、一拳を見舞った。しかし怒り過ぎたから、さらに自分の父親にも一拳を浴びせた。
二度目の一撃を受けたレイナードは地面に倒れ込む。
「最初から知ってたことなら、なぜ早く言わなかったんだ!」
「お...俺は全く思わなかったんだよ!誰がこんなことになると!」
「本当バカすぎ...」
フランドは怒りに震えながら父親の顔を見ないように背を向けてしまう。その時オエリがエミリに向かって言った。
「オランスドを離れないよ、みんなを救わなければならない」
「あなたは今危険ですよ!もし死んだら世界は終わるのよ!」
「安心して、死なないから」
「勇者様...」
エリザベス公爵が拍手して部下を呼び寄せる。
「勇者様、ちょうど付き場に戦船が一隻ありますが、修理が必要です。幸い、船大工はまだ生きています。ただし、準備には時間がかかりますが」
「じゃあ、、行こう」




