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 廃墟に絡みついた樹の根、空には紫黒色の雪が降り、霧が町を包み込んでいる。魔物のうめき声以外、あたりは沈黙に包まれていた。

 地面は土やレンガではなく、硬い樹の根と枝で覆われている。ここにはもうロジナの町の名残は何もない。濃い霧に包まれているものの、遠くに巨大な影が圧迫感を放っている。

 四人は腐敗の木にどんどん近づいている。霧の中、四つの光が暗闇を裂いている。

 魔物の悲鳴が死のような沈黙を破り、エドは血染めの大剣を持ち上げ、汗を拭った。

 彼の胸にはエミリが準備した発光する宝石がついており、魔力を注入して周囲の瘴気を持続的に浄化していた。しかし、その光が魔物を引き寄せやすくする。

「くそっ、魔物がどんどん強くなってるぞ...一体何匹倒したか覚えてない......」

 その時、エミリはエドの背中に装着された発信器を軽く叩いた。

 発信器は背包に入れて位置を特定するために使われ、訓練を積んだ兵士にとってはその重さは問題ではないはず。

「それは腐敗の木が近い証拠だ、もっと強い魔物に遭遇する前に早く進もう、無駄にする時間がない」

「少し休ませてくれ、発信器を背負いながら戦うのは大変だぞ」

「すみません、エドさん」

「勇者様、謝ることはない、これもあなたの力を保存するためですから」

 突然、迅雷が何かを感じ取り、根に伏せ耳を澄ませる。

「近くに大型の魔物がいる、数も多い...」

 四人の後ろには徐々に多くの大型の魔物の影が現れたが、その姿は人間のように見える。

「キュクロープスか...数が多いな......」

「勇者様!ここだ」

 エミリは杖で大樹を叩き、全員を上がるよう示した。四人は枝を避けながら警戒して飛ぶ。

「勇者様、巨大な魔力の源か心臓の鼓動を感じるか?」

「ああ、遠くからでも感じる...不安な魔力の源を」

「魔導士さん...こんなに近いと俺でも感じる」

「迅雷、敵に集中してくれ」

 巨大な飛虫魔物の群れが四人に向かって飛んできた。迅雷は双刃を抜き、稲妻と竜巻のごとく飛虫魔物をすべて倒した。

「こいつらは任せろ、お前たち三人は先に行け!」

 飛虫魔物があまりにも多いため、迅雷は巨大な樹枝の間を走り回りながら飛虫魔物を次々に倒した。

 オエリは巨大な枝の一つにとどまり、近づいて硬い樹皮を撫でた。

「ここが魔王の心か、ここが一番強烈に感じる...」

「私もここが嫌な感じだな、悪い暗黒の魔力が漂ってるし」

「あの古びた魔光砲がこれを撃ち抜けるかな...」

「勇者様、古代魔導士の知恵を侮らないでください」

「うん、じゃあ始めよう」

 二人はうなずき、エドに発信器を下ろすよう合図し、エミリは要塞の人々に魔法信号弾で知らせる準備をする。

 突然、天空に現れた眩しい光が厚い雲を突き破り、霧を吹き飛ばした。エミリは異変に気づき、急いで空間魔法で全員を転送させた。

 それは赤い高温レーザーだった!高温で硬い樹皮が溶け、四周に巨大な熱風が発生し、三人を吹き飛ばした。まるで高温の暴風のように、すべてを破壊していく。

 オエリは必死に枝を掴んで飛ばされなかったが、発信器とエドの姿は見えない。

「何が起こったんだ?」

「大丈夫か、勇者様!」

「平気だけど、エドさんが...」

「この威力...まさか...」

 空からドラゴンの咆哮が響き、巨大な影が降り立った。

 漆黒の翼、巨大な尾が樹枝に絡まり、銀色の爪と牙が輝いている。

 全身の鱗には人の恐怖の表情が浮かんでいて、そのドラゴンは、恐ろしいほど巨竜だった。

「腐敗の木がこいつを召喚したんだ...魔王の心を守るために」

「魔竜...前にも一度見たけど、あの時はこんなに不気味な人の顔はなかった...」

「これは腐敗の木が変異している証拠だよ、魔物にも影響を与えているんだ」

 魔竜は再び口を開き、熱い光線を集めて勇者に向かって発射した。

 オエリとエミリはそれぞれ飛び去って避け、高温レーザーが周囲を溶かし、焼き尽くす。

 オエリは溶けた樹皮を見て冷や汗をかいた。

「こんなに硬い樹皮が溶けるなんて...もし直撃を受けたら...」

「恐らく灰も残らないだろうね」

 オエリは今こそ女神の力を使わなければならないと悟り、全身に凄まじい魔力を放出した。

 彼の背中には魔力の翼が広がり、全身が光り輝き、光の輪が彼を囲んでいた。

 エミリは自分も光っていることに気づき、驚いた。

「本当にすごいね、これが女神様の力、勇者の能力...」

 オエリは再び高温レーザーを完璧に避け、光の剣で魔竜の首を斬ろうとする。しかし、硬い鱗が彼を弾き、魔竜の傷は驚異的な速度で再生してしまった。

 さらに強力な尾でオエリをぶっ飛ばして、樹皮に叩きつけられたが、光の剣で防いでなんとか無事だった。

 魔竜は今度は紫の雷を召喚し、電撃が樹枝と樹皮を撃ち抜いて破片を巻き上げる。

 オエリは高速で飛行しながら雷を避け、魔竜の弱点を探していた。

 突然、魔竜が樹枝に叩きつけられ、重力の束縛を受けた。しかし、あんまりも強いので簡単に束縛を破った。

 息を切らしたエミリは空中で喘いでいる。

「嘘だろ。めちゃ強いすぎる。女神の力を持つ束縛魔法さえも効かないとは」

「気をつけて、エミリさん!」

 魔竜はエミリに向かって熱い炎を吐いたが、彼女は空間魔法で逃げてオエリのそばに現れた。

「エミリさん、魔竜は手強すぎる」

「あれは魔族大将と同じくらい手強い怪物だからね」

「何か対策はないのか?」

「さっきの攻撃を見る限り、誰かが鱗を破壊して、その時勇者様が全力で攻撃すれば勝てるかもしれない」

「そうか、いい考えがある。ちょうど彼もいるし」

 魔竜はついに二人を見つけ、高温のレーザーを吐き出して、繁茂した枝から追い払おうとした。

 エミリは火魔法で反撃したが、その魔法は魔竜にとってかすり傷にもならなかった。しかし、大量の煙が立ち込め、紫色の霧を覆い隠した。

 煙の中で一筋の光が輝いた。それは双刃だった!

 全身が光る迅雷が魔竜の腹に小さな傷をつけた。双刃は破裂して断ち切れてしまったが、魔竜の防御は消え去る。

 その瞬間、空間魔法で瞬間移動してきたオエリが唯一の隙間に光の剣を突き刺し、巨大な魔力が一瞬で魔竜の体内に流れ込む。

 魔竜上の人の顔が恐ろしい叫び声を上げる。

 魔竜は苦痛にあえぎ、咆哮から生まれた風の波で三人を吹き飛ばした!

 迅雷は硬い樹皮に叩きつけられて、血を吐き、大腿を枝で深く刺された。エミリは行方不明になり、彼女の姿は完全に見えなくなった。

 オエリも木の枝にぶら下がり、精神がぼんやりとしていたが、魔竜がゆっくり近づいてくることに気づく。

 魔竜は紫黒の血を流し続けているが、依然として死んでいない。

 体に浮かぶ人の顔が泣き声と悲鳴を上げ、背筋が寒くなってしまう。

 魔竜は魔法を使わず、直接口を大きく開けてオエリを飲み込もうとした。その時、エドがオエリを抱きかかえ、魔竜の噛みつきを避けた。

「勇者大人、耐えてください!」

「エド先生……」

 エドの腹には傷があり、魔竜と同じように血が流れている。彼の顔には紫黒色の膿疱ができ、首の宝石も消えていた。腹を押さえながら勇者を担ぎ、枝の中に隠れている。

 魔竜は瀕死の状態でありながら、本能的に逃げる二人を追いかけ、鋭い爪で枝を引き裂いた。

 退路はもうなかったが、オエリもやっと意識を取り戻した。

 彼はエドに自分を下ろすよう合図し、独りで魔竜に立ち向かう。

 そして、最後の力を振り絞って剣を振りかざして、風の壁は竜巻のように全てを横掃し、その威力で広い道を開けた。

 その凄まじい剣風が魔竜の首を斬り落とした!

 魔竜の死体は灰となり消え去り、破壊された樹皮や枝も再生し始めた。エドは倒れ込み、吐血し続けていた。それは紫黒色の血だった……

「エドさん!」

「勇者大人……これは発信器です。受け取ってください……我々人族の存亡はあなたにかかっています……」

 そう言い残し、エドは息を引き取った。オエリはエドの発信器を手に取り、しばらく見つめ、静かに考え込んだ。

 短い別れの後、彼は再び魔王の心に戻り、発信器を安置した。傷を負ったエミリは空に向かって魔法信号弾を発射し、華やかな光が暗い空を照らしている。

 しかし、要塞の方からはなかなか反応がなかった……

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