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 二人はお互いに譲らず、武器を構え対峙していた。緊迫した空気の中、彼女たちは外族軍官と義務労働者から距離を取る。

「連れて行かせるわけにはいかない」

「残念だけど、決めるのはお前じゃない」

 ザーラを挑発し先に攻撃を仕掛けさせたが、ザーラが構えを取った瞬間、背後からレイラが魔法で彼女を気絶させた!

「残念ね、かっこよく倒してみせたかったのに」

「今はかっこつけてる場合じゃないでしょ。本気で戦ったら逃げられなくなるわよ」

「さて、それで二人は...」

 外族軍官と義務労働者は互いに頷き、ルーナとレイラに感謝の意を示した。

「本当にありがとうございいます。捕まっていたらカン国の法律によって処刑される」

「俺たちは北へ逃げるつもりだ。君たちの腕前を考えると、助けてくれるかもしれない。どうだ、一緒に来ないか?」

「でも彼女たちは完全に信用できるわけじゃないだろ?」

「魔導士がいないと、ここを脱出するのは難しいし、賭けてみるしかない」

 北という言葉を聞いた途端、ルーナは真剣な表情になった。

「ふふん、これは運命ね。女神は私が君たちを助けるべきだと言っているのよ。だって私たちも北の国に行くところなんだから」

「北への道は熟知してるけど、馬がなければ脱出は不可能」

「それで、どこで手に入る?」

「ここじゃ話しにくいわね。ついてきな」

 レイラはルーナの背中を軽く叩いた。

「ルーナ、ここはカン国の領内よ。正規軍には勝てないんだから、無茶して攻撃しないで」

「分かってるってば。でも、逃げるくらいなら私たちの実力でどうにでもなるでしょ?」

「それは逃げ切った後に言って…」

 その時、外族軍官は倒れているザーラを殺そうとナイフを取り出したが、ルーナが彼の腕を掴んで止めていた。

「やめろ!何をする気?」

「こいつらを殺すに決まってるだろう!もう我慢の限界なんだ!」

「彼女もう脅威ではないのに」

「こいつが目を覚ましたら、計画は全ておしまいだ」

 レイラは双方を落ち着かせようとし、神殿を指差す。

「彼女を縛って隠しておけばいいだけでしょ?後のことは私に任せて」

 夜が更ける中、外族軍官は二人を採石場に連れて行った。

 その採石場は丘陵地にあり、周囲には鉱山の洞窟が点在していた。軍官が口笛を吹くと、そこに働いていた奴隷たちが次々と姿を現した。

「待っていたぞ。馬さえ手に入れれば俺たちは逃げられる。だが、彼女たちは誰だ?信用できるのか?」

「すぐに分かるさ。黒髪の少女は魔導士で、俺たちの唯一の希望だ」

「分かった、こっちへ来い」

 ルーナもついて行こうとするが、他の人に呼び止められた。

「じゃあ、気をつけてね」

「うん、あんたも」

 その後、レイラは採石場の男と話し合った。

「彼女を何しに行かせたんだ?」

「馬を盗む役さ。それで、お前は魔法で警報を解除してくれ。そうすれば、軍営を奇襲して、脱出するときに追手が来ないようにできる」

「相手は軍人よ。これはかなり危険な計画ね」

「ふん、他に選択肢がないんだ」

 草むらを抜けると、彼はレイラに身を屈めるよう合図して小山の下には軍営が広がっていた。

 その後、廃屋を通り過ぎ、彼は木の板で作られた扉を押し開けた。どうやらそれは軍営へと通じる秘密の道のようだった。

 屋内外には、突撃の準備を整えた戦士たちが待機していた。彼らはすでに戦いに備えていた。

 道案内の男はレイラに地図を手渡す。

「警報を解除しさえすれば、下に埋伏した者たちが一気に突入して、あの連中を叩ける」

 しかしレイラは豪華な円形のテントに目を向けた。

「こんなことをする必要は全くないわ。私の合図を待ちなさい。中にいる人を殺さないことだけ覚えておけばいい。そうしないと交渉が破綻する」

「はあ?何言ってんだ?」

 彼女は返事をせず、空間魔法を使って豪華なテントの中に入った。

 ちょうど指揮官が一人で書類を確認しているところだった。彼はテント内に突如現れた黒髪の女性を見て驚き、飛び上がってしまう。

「誰だ!?どうやって入ったんだ!?」

 彼が人を呼ぶ前に、レイラは風弾で彼を殴り、歯を何本か飛ばした。彼は口を押さえながら、必死に立ち上がろうとした。

「魔導士を呼んだら、命はないわよ」

「お前は...誰だ...」

「誰かなんてどうでもいいのよ。ただ、全員が私の書いたシナリオ通りに動けばそれでいいの」

「訳の分からない狂った女…くっ、痛い!もう勘弁してくれ!」

 レイラは魔法のロープで彼を縛り上げ、そのロープにさらに締め付けるよう命じた。

「部下全員に降伏させなさい。さもないと...」

「分かった、もう分かった!」

 レイラは彼をテントの外に突き出し、周りにいた兵士たちは警戒しながら二人を取り囲んだ。

「全員、武器を下ろせ!」

 兵士や魔導士たちは、距離を保ちながらも武器を次々と下ろした。その隙に、軍営外の戦士たちが一気に突入し、レイラは彼らに声をかけた。

「彼らを殺さないで、捕虜にするだけでいい。生きたクイリザルの兵士は私たちにとってもっと有用」

 戦士たちは一瞬戸惑ったが、最終的にはレイラの指示に従い、兵士たちを縛り上げた。その後、彼らは勝利を祝って歓声を上げた。誰一人死なせることなく鎮圧が完了したのだ。

 ちょうどその頃、ルーナと馬を盗んできた者たちが群れを連れて軍営に到着し、壮観な馬の群れが軍営を囲んだ。これならば、無事にここを離れるのに問題はなさそうだ。

「レイラ!そっちも上手くいったみたいだね」

「ルーナ、あんたもよくやったね」

 こうして、クイリザルの兵士たちは人質として馬に乗せられ、事前に決めた逃走ルートに沿って出発した。

 全員が馬に乗って草原の町を後にし、北へと向かう中、満月の下で歓声が上がっていた。しかし、その時、遠くに見える松明の光が草原を照らし出している。

「まずい!敵の援軍だ!」

 「奴らの動きが早すぎる…」

 まだ草原の町を出て間もないというのに、カン国の援軍が到着したのだ。草原騎兵たちは重装甲を纏い、逃亡者たちを射殺する準備を整えていた。

 援軍を率いていたのは、先ほど気絶させられたザーラだった。彼女は残念そうにレイラとルーナを見つめている。

「これがお前たちの望んだ結果なの?領主殺しの犯人を助けて逃げようとするなんて」

 ルーナは怒りを抑えきれず、ザーラに問い詰める。

「彼らは奴隷として捕らえられていただけよ!しかも領主は彼らにひどいことをしたのよ!」

「それが領主を殺す理由にはならない。カン国の法律と権威は絶対的なもの。それに、あたしたちの兵士まで連れて行った。だからこそ、お前たちを簡単に見逃すことなんてできない」

「なんだよ、その中世じみた法律。馬鹿げてる」

「中世?何を言ってるの?北の連中はみんなそんな風に話すのか?」

「中世の連中とは話が通じないね」

 ルーナは強引に戦闘を仕掛けようとしたが、すぐにレイラに止められた。

「正気じゃないの!?勝てるわけないでしょ。今戦ったら、私たち以外全員死ぬわよ」

「でも、降伏したら全員終わりだ!」

「だから、まだ方法がある。私を信じて」

 ルーナはため息をつき、馬を退かせた。レイラは手で合図し、ザーラを前に出すよう促した。その後、二人は馬に乗って全員の前に進み出る。

「ザーラ!私たちは戦いたいたくない。きっと、あんたたちもそうでしょ?」

「その通り。無意味な犠牲者を増やす必要はない。ただ、おとなしく降伏すればいい」

「取引をしよう。私たちは領主を殺した犯人とあんたたちの兵士、そして馬を引き渡す。その代わり、無実の者たちを解放して家に帰らせて欲しい。誰も血を流したくはないはずよ。どうかしら、この提案は?」

「.......」

 その時一人の騎士がやてくる。

 ザーラは考え込み、あの騎士が耳打ちするまで答えなかった。

「分かった。お前たち誰も殺してないことを考慮し、イム・カンの娘として、この取引を受け入れる。確かに、これ以上血を流す必要はないものね」

「感謝しています、ザーラ姫」

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