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グルサンとフォスタンイーンの生徒たちは、監獄から螺旋階段を上って脱出した。
そして、グルサンは王都全体に鐘の音と警報が鳴り響き、人々の恐怖の声や悲鳴が聞こえることに気づいた。
夜なのに外は明るくて、よく見ると火事だった。王宮に火が出ているなんて。
しかも周りには兵士がおらず、王宮だけでなく王都も混乱していた。
「クリリス、これは一体どういうこと?」
「グルサン姫、重要な話があるんだけど、今は話す時間じゃないわ。まずは外に出てから話そう」
みんなが螺旋階段を出て王宮の内部に来たとき、突然、先頭のクリリスに向かってナイフが飛んできた!グルサンは素早く魔法でナイフを弾き飛ばした。
ナイフは美しいタイルに落ちてカチンと音を立てる。攻撃者は見えないけど、足音は聞こえる。
「暗殺者だ!みんな、警戒しろ!」
クリリスは他の人に魔法の杖を持つように合図し、自分も詠唱して反撃の準備を始める。
その時、黒い服を着て顔に布みたいなものをかけた暗殺者二人が窓から飛び込んできた。ガラスの破片と共に登場し、またナイフで攻撃してくる。
クリリスと他の生徒は魔法の盾を使ったけど、ナイフで刺された!どうやら相手は対魔力の武器を使っていたんだ!
「クリリス、気をつけろ!」
一人の暗殺者がクリリスに向かってきた。クリリスが殺されそうになったとき、グルサンはやむを得ず魔力の鎧と炎の大剣を使って先頭に立ち、暗殺者と戦う。
近接戦闘に長けた相手に、魔導士のグルサンは常に不利だ。彼女の炎の大剣と魔力の鎧は、対魔力ナイフのせいでどんどん消耗し、大剣の炎は時々消えてしまう。
炎の粒子が周りの壁を焼き続けているけど、暗殺者には全然ついてない!
異国の暗殺者は靴の底に短剣を隠していて、グルサンの顔を蹴りつけて傷をつけてしまった!グルサンは対魔力ナイフの連続攻撃を避けるために後退し続けた。
この戦いと比べると、レイラの魔法攻撃はずっと優しかった。
一方、クリリスは痛みに耐えながら風魔法で風刃を使って攻撃し続ける。狭い廊下だったけど、相手は簡単に避けた。
「女神よ、僕に…」
フォスタンイーンの男子生徒は詠唱を唱え終わる前に暗殺者に蹴り飛ばされ、壁にぶつかって気を失ってしまった。やっぱり生徒にとって本当の戦いは難しいんだ。
相手が少なくても、二人の暗殺者でも簡単に対応できる。
「あれはイム・カンの娘だぞ!」
ガザンが暗殺者に向かって大声で叫んだ。相手はすぐに手を止めた。注意が逸れた隙に、グルサンは束縛の魔法を使って一人を捕まえた。でも、もう一人の暗殺者は窓から飛び出して逃げたようだ。
「助かったか…」
クリリスは急に力が抜けて地面に座り込んだ。みんなもほっと一息ついた。
「まだ危機は去ってないよ。王宮にどれだけ暗殺者がいるか分からないし、ウィリアムもまだ中にいるらしい。彼は老人だよ」
グルサンは手を叩いてみんなに立ち上がるように合図する。その時、ガザンがグルサンの服を引っ張った。
「ちょっと医療魔法が使えるが、怪我人はここに残ろう。これ以上進むのは危険ですから」
「わかった。クリリス、大丈夫?」
「このくらいの傷なら平気…でも、あの暗殺者たちはやっぱり…」
「どうしたの?」
「なんでもないわ、とりあえずウィリアムを見に行こう」
その後、クリリスとグルサンはウィリアムの部屋に向かう。グルサンはその道を覚えていた。でも、道中には血の跡がたくさんあり、暗殺者や王宮の兵士の死体も多く見られる。
ウィリアムの部屋に近づくにつれて、死体の数は増えていき、二人も心配になった。
その時、廊下の角から足を怪我した暗殺者が現れた。彼は恐怖に満ちた目で後ろへ見って何かから逃れようとして、手を使って必死に這っている。
「やめろ!近づくな!あああっ!」
その暗殺者は投げられた剣で肺を貫かれ、凄まじい叫び声が廊下に響き渡る。
クリリスとグルサンは後退しながら警戒を続けた。廊下には重い足音が響き、ひとりの人影がその悲死した暗殺者のそばに現れる。
彼はゆっくりと剣を暗殺者の胸から抜き取った。その剣にはまだ温かい血がついていた。グルサンはすぐに一目でわかったらしい。
「ウィリアムか…」
「ザーラかい?あ!違うか、グルサン姫じゃないか。ごめんね、また間違えしまって」
「何をしてるの…」
「別に、ただ侵入してきたネズミを片付けただけさ。ああ、無事で良かった」
「ええ…思ったよりも強いんだね」
「ここが安全になったからといって、王都が安全だとは限らないよ」
ウィリアムの力に二人は驚いたけど、突然王都の外から大きな爆発音が聞こえてきた。
その後、クリリスは王宮の城壁の端に走って行き、燃えるフィラを見つめる。彼女はもう我慢できないようだった。
彼女は振り返ってグルサンを真剣な顔で見る。現場の雰囲気は息をのむほどだ。
「今、王都は混乱してる。あれがきっとあなたの国の部隊だろうね…」
「ごめん…」
「そんなこと聞きたくない。誰に対しても役に立たないから。グルサン姫、一つ聞きたいことがある」
「何?」
「どっちの側に立つつもり?北か、それとも南か?あなたの答え次第で、私たちも決断を下すの」
その後、グルサンはクリリスのそばに行き、二人で一緒に燃えるフィラを見っている。夜の風は涼しくて心地よかったが、焦げた匂いが風に混じっていた。
「不当な戦争を止めることはできないの?あなたの身分なら…」
「残念だけど、カリーナが言ってた通り、あたし、ただの人質だし。おじさんはあたしのことが好きじゃないよ。彼は力と権力を求めてる本物のクイリザル戦士。だからこそ北方が勝たないと、おじさんやクイリザル・カン国の尊敬を得られないし、北方に未来はない」
「でも…あなたはクイリザルの人でしょ?おじさんや自分の国と敵対するの?」
「正直、誰とも敵対したくないよ。でも、小さい頃から魔導士に憧れてて、家族は反対してたけど、北方に来てしまった。ここの美しい街や美味しいお菓子、面白い魔導書や魔法の好きな人たちがいるさ。だから、ここのすべてを守りたい」
「ありがとう、グルサン姫」
「今夜から、あたしもうクイリザル・カン国の姫じゃないよ」
気づけばウィリアムがそばにいた。
「ここはいつでも君を歓迎してるよ、グルサン」
「ありがとう、ウィリアム。ところで、この辺に更衣室はある?」




