12意味不明な秘密会
-勝利旅館近くの公園-
勝利旅館は高台にあるので、公園の展望台からは雄大な山々が見える。
展望台の端は白い柵で囲まれていて、旅人たちが静かに美しい山々を眺めることができる。
「レイラちゃん、早く来て、ウルスクリン山脈だよ!わああ!本当に壮観だな」
「フェリクス兄ちゃんは初めて来たの?」
「うんうん。あ!そうだ、レイラちゃん、焼肉の魔法装置を持ってきたよ」
「それは……フェリクス兄ちゃん。遊びに来たんじゃないよ」
フェリクスはとても興奮しているけど、今回ここに来たのは遊びの気分じゃなくて、行方不明になった狩人を探すためなんだけど……
朝だからか、観光客はあまりいない。
スクリンの町といえば、私の国で有名な観光地で、近くには巨大な山脈――ウルスクリン山脈がある。
ここは景色が素晴らしくて、毎年たくさんの観光客が訪れる。
スクリンの町は王都からも遠くなくて、竜馬に乗れば約二時間半の距離だ。
以前もオエリちゃんとお兄ちゃんと一緒に来たことがあるけど、こんなふうにまた来るとは思わなかったよ。
前に言った勝利旅館は地元の百年旅館で、部屋は豪華とは言えないけど、とてもきれいで値段も手頃だ。
オエリちゃんはお父様に客人の料理を作るように言われてしまって、私たちと一緒に来られなかった。残念だなぁ。
フェリクスは私が退学になると聞いて、今朝急いでお兄ちゃんと私に様子を聞きに来てくれて、手伝ってくれると言ってくれた。 フェリクスの優しさに感謝してるけど。
どうやらみんな遊び気分になってしまったみたい。
「レイラ、荷物は確認したよ。食べ物と水と念のための救急セットがあって、うんー、寝袋も忘れずに持ってきた。良かった」
「お兄ちゃん……ちょっと気楽すぎる気がしない?」
「え?そうかな。準備しておく方がいいじゃないか」
「そうだけど」
お兄ちゃんの言うことも正しいから反論できない。
私たちは三人とも早すぎて来てしまったみたいで、あの三人はまだ来てない。
一番疑問なのはレイバウェスが一人でどうやって来るのか。馬車代も結構かかるはずだし。
「ひゃほろー!」
突然フェリクスが谷に向かって大声で叫ぶ声が聞こえた。ああ、私も昔そんなことしたなぁ。
フェリクスのところに行って、谷に向かって一緒に叫んだ。
「「ひゃほろー!」」
今は谷中に私とフェリクスの叫び声が響き渡ってる。本当に楽しいなぁ。
「それは…あなたたち二人も本当に子供みたいだね」
「お兄ちゃん、あなたも叫んでみてよ」
「そうだよ。ディラン、今は誰もいないから恥ずかしがらなくていいよ」
一瞬で私たちは三人とも笑い出して、気分も盛り上がった。飛び上がりたくなるような感覚だ。
その時、あの二人の馬車がやってきた。公爵家の紋章を見て、昨日のことを思い出した。
-学校の部室-
『秘密会へようこそ!パチパチ』
『あ、ありがとう。レイバウェスさん。どうして私を呼んだの?ここはどんな部活をしてるの?』
ゲームのヒロインは部活に入ってなかったから、気になって見に来たんだ。
『ふふ、いい質問だね。まずは座って』
周りを見ると、がらんとした教室には机と椅子が数個しかなくて、あ、黒板もある。全体的にはきれいだった。
三人で座った後、フランドがサイコロみたいなものを出した。上に文字が書いてある。
『俺の名前知ってるだろ?フランドと呼んでいいよ。こいつは部長のルーナ・レイバウェス』
『こんにちは。私はレイラ・フェリウェム。よろしく』
『うん、実は君のことをもっと知りたかったんだ』
『え⁉どうして?』
『もちろん、君が強いからさ』
『あはは!そんなことないよ~ただ頑張っただけだよ、あはは~』 『私のことルーナでいいよ、レイラ』
『うん、わかった。ルーナ』
『よし。じゃあ彼が持ってるサイコロで話題を探そうか』
その後フランドがサイコロを私に渡す。机の上に投げるように合図したから、投げたら出た結果は「スリーサイズ」……
『え!これは……』
なんでスリーサイズなの?え⁉これだけのために呼んだの?私は伯爵令嬢なんだよ!そんな下品なこと言えないよ。
『何書いてるのよ!』
『いてぇ!』
ルーナがフランドにガツンと蹴りを入れたら、フランドは痛くて飛び上がって、下腿をさすって、涙目になっちゃった。
『ごめんね。今度は私が投げるね』
ルーナが投げた結果は「邪教を倒したい?」。
『おお!いい話題だね、君は邪教を倒す英雄になりたいか?』
『いや、なりたくない。え?待って!』
サイコロの五面全部「邪教を倒したい?」とか「邪教を倒す秘密会に入りたくない?」みたいなこと書いてあるじゃないか。
何でわざわざこんなことするの?
『え?どうしてそうするの?直接言えばいいじゃない』
『ハハ!そうだよね。秘密会は邪教を倒すために作ったの。魔王復活を阻止するんだ。でも戦力が足りなくて、君に入って欲しかったんだよ』
『ああ、そうなんだ。でもごめんね』
『え!そうなの、残念だな。理由聞かせて』
『それは……』
部活に入らなかった理由は邪教とか興味がなかったから。裕福に生まれて、幸せに暮らしてる。
六年間邪教徒に会ったこともなくて、邪教を倒す気分もなかった。転生してきてからすべて欲しいものを手に入れたから。
竜馬の鳴き声が谷間に響いて、現実に引き戻された。そして二人もちょうど馬車から降りて私に手を振ってる。




