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オランスド帝国の新しい主人2

 カリーナは華やかな衣装を身にまとい、入ってきた南方の人たちに親しげに手を振り、優しくグルサンに挨拶をした。

 それだけでなく、彼女のそばには多くの女神教会の人々が立っており、戴冠式を行っている。

 王宮騎士団団長のグラン・ナハティガルもカリーナの後ろにいる。

「グルサン姫、ちょうどいいところに来てくださいました。今は式の最も重要な時です。あなたと各国の大使たちに立ち会っていただきたいのです」

「ん、ありがとうございます」

 ガザンはグルサンを引き連れて各国の大使や貴族の方へと向かい、自分はカリーナに頭を下げて謝る。

「大変申し訳ありません、レシヤ様。グルサン様はウィリアム様とお話ししていて時間を忘れてしまいました。大使として私が心からお詫び申し上げます」

「ガザン大使、お気遣いなく。どうぞ」

「ありがとうございます」

 やがて華麗な扉が再びゆっくりと開かれ、今度はカリーナが自ら任命した新しい主教がさまざまな飾りを持って人々の前にゆっくりと歩いてくる。

 教会の人々の中には貴重な知恵女神の王冠とオランスド帝国の権力を象徴する金の杖を持っている者もいる。

 女神教会の皆さんは大広間の中に整列し、そのとき主教は機会をつかんで知恵女神を讃える歌を歌い始める。やがて後ろの人々も一緒に歌い始めてきた。

 その後、人々の証言のもと、主教は知恵女神の王冠をカリーナに自らかぶせた。

「知恵女神の啓示と受け継ぎにより、オランスド帝国フィラ主教としてあなたに知恵の王冠をかぶせます。あなたの罪と無知を洗い流すことを許してください」

 言い終わると主教は華麗な羽毛のはたきでカリーナの服のほこりを払う。

「彼女は知恵の女神の恵みと保護を受け、また知恵の女神の光も引き続きこの地を照らし、人々を祝福すると信じられています」

「ありがとうございます、主教様」

 主教は頭を下げて退いた後カリーナは立ち上がり、各国の使者や貴族に大声で宣言する。

「私カリーナ・レシヤ・アゴストは王の職務を果たすとともに、カリシヤ、イルブ、アゴスト公国、ミカランド、トラヴィ公国を継承し、この土地の新しい主となります。知恵女神のご加護を」

「「「知恵女神のご加護を」」」

 その後、主教や他の人々が次々と新しい女王のそばにやってきて、オランスド帝国の各地の貴族や騎士たちは拍手を送っている。それだけでなく、他の国の貴族や大使たちもそうした。

 しかし、クイリザル・カン国の人たちだけは拍手しなかった。

 カリーナは拍手しないクイリザルの人々の顔色が悪くなるのを見て、騎士に一枚の手紙を持ってきて、みんなの前で開かせた。

 場にいた全員の顔色も一緒に厳しくなった。

「グルサン姫、ガザン大使、二人とも出てきてください。これは一体どういうことなのか、聞いてもいいですか?」

 グルサンはガザンを不思議そうに見て、わざわざ尋ねた。

「ガザン?あれはなに?一体何が起こったの?」

「グルサン様、これは少し複雑で……私が早くにご説明しなかったのが悪いんですが……」

 カリーナは手紙を地面に投げて、思い切り踏みつけた。

「グルサン姫はまだ知らないのですか?それなら私が教えてあげましょう。あなたの叔父のベルゴは北方の各国に脅迫状を送りつけて、早く降伏しなければすべての抵抗者を殺し、すべての人々を奴隷にすると言った。そのためにわざわざサリック・カン国に侵攻して、村々を火で焼き払い、人々を連れ去っていく。これが私たちに対する警告だ」

「それは……申し訳ありません……」

 みんながざわつき、中には侮辱する声も上がった。

「ふん!これが異教徒の野蛮人だ!恥ずべきだ!」

「我ら北方をなめるな!」

「野蛮な女神を信仰する異教徒!」

 サリック・カン国の大使はすかさず女王に敬意を表して頭を下げたあと、隣のクイリザル人を睨みつけてからカリーナに向き直った。

「女王陛下、どうか私の国の人たちを救ってください!彼らは知恵女神の子どもたちなのです!」

「モドン大使、落ち着いてください」

「野蛮で邪悪な異教徒のベルゴはまだ私の国の人々を虐殺しているのです!どうして落ち着けると言えるのですか!」

 場にいた人はみなこの国の大使に同情の目を向ける。その中にはクイリザルの人々に奴隷にされた属国の大使たちもいるし、彼らはかつて北方人だった。

 場にいたクイリザル人は気まずそうだ。その状況でグルサンはもう何も言わなかった。

 非難の声の中でガザン大使は黙らず彼は大声で笑いだした。周りの人々は不満そうになり、やがて場は静まりかえった。みんなが彼を睨んでいる。

「ガザン大使、何がおかしいのですか?あなたたちの立場をわきまえ」

「いいえ、女王陛下、私は信用も忠誠もないサリック人を笑っているだけですから」

 ガザンは人差し指でモドン大使を指さした。

「あなたたちのカンは犬のようにイム・カンに金と土地をねだって、結果としてイム・カンが元々私たちのものをあなたたちのカンから取り戻そうとしたときにはずるをしたのです。だからベルゴ様がイム・カンの名のもとに貴国を討伐したのは当然のことです。これが知恵女神の信徒が持つべき原則なのですか?」

「ばかなことを言うな!ストレト平原はもともと私の国のものだったのだ。貴様らみたいな野蛮人どもが我ら先祖の土地を奪ったのだ!」

 そのあとも次々と人々がガザンを非難したが、ガザンはみんなに一つ一つで罵った。

「静かにしろ!これは私の宮殿だぞ!これ以上騒ぐ者はその場で斬り殺す!」

 宮殿の中は罵声であふれていたが、カリーナが立ち上がって大声で叫んだので、場は静かになった。

 カリーナの命令を聞いて、団長のグランが剣を抜いた。そのあとすぐに場には罵声がなくなり、逆に恐ろしく静かになった。

「グルサン姫、ガザン大使。あなたたちはクイリザル・カン国の王女と大使として、異教徒であるとはいえ、私たち北方人はあなたたちを温かく迎えましたね、それにあなたたちに難癖をつけたりしませんし、グルサン姫にも北方で最も優れた魔法学校フォスタンイーンに入学することさえ特別に許しましたよね。私たち北方人は主人の義務を果たしましたが、あなたたち南方人は私たちを虐殺していますよ。これは正しいことですか?答えてください!グルサン姫」

「……カリーナ、あたし……」

「私は今やオランスド帝国の女王だぞ!言葉遣いに気をつけろ、グルサン姫」

「女王陛下、あたしは北方の各国と起こったことを深くお詫びします。叔父がサリック・カン国に侵攻したことを初めて聞きましたので、本当に申し訳ありません。心から北方の皆さんと仲良くしたいのです!これは決して嘘ではありません!」

「ではグルサン姫はあなたの愚かな叔父をどうやって止めて北方から追い出すつもりですか?あなたは所詮人質に過ぎないのですよ」

 グルサンはためらいを捨てて、拳を握りしめた。

「あたしは北方の支配者になるのです!」

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