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始まりはいつも突然に。

 俺はジャケットを買った……そして死んだ。



 どうも、永岡(ながおか)です。永岡善之助と申します。

 突然ですが、皆さんは霊魂(れいこん)って信じますか? 

 俺は信じてます。そして、あの世に行ったら綺麗なお姉さん達と一緒に暮らす予定です。


 あー、でも1回でいいから山田(やまだ)のオッパイを揉んでおけば良かった……。


 それだけが心残り。


 そんなことを考えていると心地の良い風と暖かい光……そして聞き覚えのある声に俺は起こされた。


 「──きて」

 「……?」

 「起きて永岡ッ!!」

 「うおッ!! 山田……」


 ────生きてる。

 

 「たしか俺たちは車に引かれて……」


 俺達2人は大学の飲み会の帰りに駅まで歩いていた。その道すがら突如として、大きな光が空から落ちてきた。その光に気を取られていると、ものすごい勢いで突っ込んできたトラックに()かれ意識を無くした。


 ……でもおかしい、目を覚ますなら普通は病院のベットの上だろう。ここはどう見ても違う、それどころか日本の景色とは思えない。


 豊かな花々や寝心地の良さそうな天然芝が咲き誇った草原が広がっている。そして周りの地面がクレーターのように大きくエグれ、人のサイズをはるかに超える鉄や、ガラスのような破片が周辺に散らばっている。


 なによりもおかしいのは────空を見上げると太陽が()()ある。


 まさかこれは……。


 「ねえ永岡──」

 「間違いない……」

 「え?」


 「ここは異世界!」

 「えッ?」


 「転生──いや、異世界転移したんだッ! 神様も性格が悪いぜ。テンプレなら異世界転移する前に説明とかあるだろうに」


 「……」

 俺はさらに遠くを見ようと立ち上がった。がーーーー--ッ!!? 全身に強烈な痛みが走り、自分の身体が制御出来ず、その場でこけてしまった。


 「永岡!」

 「痛てて……そうだ車にはねられたんだったわ」


 よく見ると擦り傷や火傷のようなものが体に出来ていた。


 ケガにも気がつかないほど異世界に来たことにテンションを上げ、はしゃいでいた事に照れ隠しもあり、頭をボリボリとかいた。


 そんな俺に山田は手のひらを向けてくる。

 すると身体を包む黄緑色の光が突如現れ、体の痛みやケガがスーッと消えていった。


 「おまッ、いつの間にそんな力を……魔法か!?」


 先に目を覚ました山田は、重傷だった俺の身体をある程度治してくれていたらしい。


 「おいおい、マジかよ!!」

 「てことは……『ステータス』ッ!!」

 ──何も出ない。


 「?、永岡?」


 「待て山田、早まるな……俺には分かる」


 格好つけて叫んだが、ステータス画面は出てこない。しかし永岡は体から今まで感じたことのない力を内に感じ、確信していた。


 これはおそらく〈魔力〉だ。永岡はその力を手先に集中させる─すると野球ボールサイズの火の玉が空中に現れた。


 「出来た! 俺も魔法が使えるぞ!」


 さてさて適当な場所に当ててみるか、いい感じの岩でも……。


 「────ッ!」


 あたり一面を見渡していた永岡は驚愕する。


 「あれはまさか……"ゴブリン"ッ!」


 緑色の肌をしたゴブリンを想起させる生き物が二匹、30mぐらい先で徘徊し、コチラにまだ気がついていない。


 チャンスと思った永岡は、素早くゴブリンとの距離を詰め、その一匹に魔法を放つ。

 

 名付(なづ)けて──『ファイアーボール』!!!


 火炎が着弾したゴブリンは動く暇もなく、息絶え倒れる。もう一匹のゴブリンはこちらに気がつき、何かを叫んでいたようだが、自身の魔法に興奮しきっていた永岡に聞く耳はなかった。


 さらにもう一発、火炎を放ち仕留めようと魔力を使用するが、ゴブリンは魔法を放つ暇もなく逃げてしまった。


 「はあ……はあ……」

 魔法を使用すると魔力が減り、全力疾走した後のような倦怠感や疲労感が襲う。


 「大丈夫?」

 「ああ、魔法ってこんなに疲れるんだな……」


 山田が俺のケガを完全に治していなかったのは、おそらく魔力が足りずに休んでからでないと無理だったのだろう。


 「ふぅ……、ところで山田」

 「なに?」

 「さっき俺たちと一緒に倒れてたアイツは──誰?」


 この時の選択が俺の人生を大きく変えてしまう。


 これが()()という悪魔に出会い、理想の異世界生活が消えてなくなる、ロクでもない冒険の──。


 始まりだった。

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