13歳。友人からの手紙。
tお妃教育が終わり、アミューラ様を見送ってすぐにステイが部屋にやって来たのを合図に、私の側近たち(護衛を除く)が先に邸へ戻って行った。
私は約2時間後に城の魔法陣で邸に戻ることになっている。
つまり、これから2時間の間、ステイに捕まるということになる。
「アテーナお疲れ様。」
「ステイもお仕事お疲れ様です。」
どさっと私の隣に座ったステイが「いつの間に黒豆茶まで開発していたの?」と尋ねてきた。
「いつの間にって…半年前からですけれど?」
「聞いてない!」
「あら、言ってなかったかしら…?」
チラリとステイの後ろに立つシューリッツを見れば
「アテーナイエー様はお伝えしておりましたよ。ただ、殿下が上の空だったのでしょうね…アテーナイエー様に婚約をさせる機会を伺っておられる時期でしたから。」
「…!?」
シューリッツの言葉にステイが絶句した。
私が「言ってたじゃない?」という目で見つめると、頭をボリボリと掻き「ごめん」と頭を下げた。
「許す代わりに、お城のオムレツをお願いしてもいい?今日はどうしても食べたい気分なの。」
王城の料理は美味しい。
その中でも卵料理は絶品で、私はオムレツが大好物なのだ。
「分かった。今回はプリンも付けるように言うよ。」
「やった!」
私たちの会話を聞いていたシューリッツが城のメイドに指示を出す。
多分、1時間もしないうちに届くだろう。
「他にはない?」
「え?そんなに食べられないよ?」
「違くて。僕に言ってないかもしれないこと!」
「えー?」
そんなことを言われても、ステイが聞いているか聞いていないか分からないことまで、分かるはずがない。
「ほら!手紙とか!」
「ああ!」
…って。
学校初の友人からの手紙…しかも女の子からの手紙を見たいのだろうか?
「ステイ、そんなに気になるの?」
「そりゃあ、気になるさ。アテーナの友人候補は僕の選考が必須条件だっただろう?」
「そんなの聞いてないよ!?」
「じゃあ、今言った。」
「うわぁ・・・横暴だ。勝手すぎる。」
私がブツブツ言いながら自分の鞄の中から手紙を出すのを、当たり前な顔で待つステイを睨む。
「はい。」
ファシリータ様からの手紙を手渡せば、満足気に受け取る彼にムカつくのは…私が狭量だからではないはず!
可愛らしい字で書かれた封筒の端を手慣れた手つきで開けると、中からこれまた可愛い便箋が出てきた。
しばらく真剣な表情で中を検めるステイを横目に、私は城のメイドが淹れてくれたダージリンに口をつける。
「ぷっ。」
突然、吹き出す隣の皇太子に驚いて見れば
「友人にしても、良いんじゃない?アテーナが思う友人なのかは…分からないけどね。」
読み終えた手紙を手渡しながら、まだ肩を震わせている彼を見ていて不安が過る。
え?どういうこと?
受け取った便箋を読み始めて、すぐに理由は理解できた。
ああ…ファシリータ様…。
そういえば、彼女は『天然の』天然さんだったんだったわ。
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麗しのアテーナイエー・クランべナー様
この度は突然のお手紙を失礼致します。
私は、この学園に入学することが楽しみでなりませんでした。
伝説の聖女様がご一緒に入学されること、伝説以上に伝説級である聖女様。
私の心はいつも高鳴り、貴方様の姿を見た瞬間バラのつぼみが花開いたかのような衝撃を今でも覚えております。
勇気を振り絞ってお声をかけた私に、なんと甘美なお言葉と笑顔を向けてくださり…
伝説以上の聖女様がおそばにいるこの現実を、私はどう受け止めたら宜しいのでしょう?
いえ、夢であっては困ります。
私は決めたのです。
聖女様であらせられる、アテーナイエー様のお傍でこの学園生活を充実させるのだと。
………うんぬんかんぬん………
「友人というより、信者だな。」
ステイが面白がるように私を見る。
ちょっと悔しいけれど、まったくその通りだと思った。
「まあ…そのうち、私の本性を目の当たりにするうちに信仰心は薄らぐでしょう。」
小さく溜息を吐きつつ便箋を封筒に戻し、鞄に仕舞う。
はあ~。
お返事って…何を書いたらいいのかしら?
そうこうしているうちに部屋に運ばれてきた食事をステイと一緒に摂る。
フワトロなオムレツに舌鼓を鳴らしているうちに、心のモヤモヤは霧散した。
やっぱり美味しい食事は最強だわ。




