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世界は私の我儘で出来ている。  作者: ツクヨミ
学生になるって大変です。
27/35

13歳。儀式にて聖女に祈ります。

神殿に着いた私は、言葉を失った。

先週、公務で訪れた際にはなかった飾り付けが、あちらこちらに施されていたからだ。


「先週はこんな花に囲まれた道はなかったわよ。」

「神殿長や神官長はアテーナを可愛がっているからね~。張り切ったんじゃない?」


神殿の最奥、祈りの間に続く廊下には、神殿らしからぬキラキラ光る花々が彩りよく飾られていた。

「この花、水と光魔法で出来てるのか。」

1輪手折るように触れたステイの指先は水で濡れている。


手に持つことが出来ないことを知り、ちょっとだけガッカリした。

「アテーナ、『魔法少女ごっこ』したかった?」

「うへっ?!な…なんで分かったの?」

「女の子なら考えそうだな…とは思ったけど、本当に考えたんだ。」

ステイに残念な子供を見るような眼差しを向けられ、膨れる。


日本人に生まれた女の子なら、一度は憧れるだろう。

魔法のステッキを持って、意味不明な呪文を唱える『愛と正義の魔法少女』に。

フリフリのドレスにフワフワのリボンが印象的な美少女。

ステッキはキラキラ光って、光の粒を撒き散らしながら、不思議な魔法で不思議に解決していく、全体的に不思議な話は大好物のはずだ!


…あれ?そんなん、今の私なら適当な枯枝で出来るんじゃない?

光魔法と風魔法を使って…ついでに音魔法も合体させちゃえば…魔法少女じゃんね?

なんで、今までやらなかったんだろう!?

「今までなぜ気付かなかったの!?」

「まあ、明日にでも試したら?誰もいない所でさ。」


心を読んでくるステイに小さく頷く。


廊下一面に飾り付けられている花々が、窓からの日差しを受けて光る様子が目に留まる。

「凄い!7色にキラキラしてる!」

ほうっと息が漏れる。


「日の当たる場所には虹も出来てるね。」

私たちは、さっきまでの変な空気を忘れて、目の前の花々に夢中になっていた。


「おーい!そろそろ本来の目的を思い出して、こっちに来ーい。」


なかなか祈りの間に辿り着かない私たちに焦れた様子の神官長が、祈りの間の扉の前で、私たちを呼んだ。


「あれ?神官長、お城に居ませんでしたか?ラベンダーの香りは神官長の魔法かと思ったのですが。」


ふと私の疑問を口にすれば、

「ああ、それは魔道具だよ。」

と答えをくれた。


そっか。魔道具か。

前世で言うところの、アロマディフューザーみたいなものかしら?

「じゃあ、光の粒も魔道具ですか?」

赤い絨毯に降り続いた光の粒を思い出す。

「誰かの魔法じゃないか?少なくとも神殿は関係ないよ。」

朝から準備に追われて、城の方までは手が回らない。と苦笑され、私は納得した。


じゃあ、誰かしら?


首を傾げている私の隣から、小さく答えが降ってきた。

「おそらく、兄上だよ。」

孤児院での視察以来、彼は密かに遊びの魔法を練習しているのだとか。

言われてみれば、神官たちが作る光の粒よりも安定感がなくて、浮遊時間も短かったように思う。


「…そっか。」

出来はどうであれ、その気持ちは嬉しい。




祈りの間に入ると、待ちくたびれたかのように、神殿長が聖女像の前に置いた椅子に座り込んでいた。

「神殿長、来ましたよ。」

神官長に声を掛けられ、振り返る彼は、なんだか疲れた顔をしていた。


「お待たせしすぎましたか?」

ステイが声を掛ける。

「いや、大丈夫じゃ。ちょっと感慨深い気持ちに浸っていただけじゃて。」

まるで祖父のような優しい眼差しで、ずっと私の成長を見守ってくれていた神殿長。

今日はいつもの、孫を可愛がる祖父のような雰囲気は見られない。


「普段なら数百年に1人と言われているのに、君たちの年には、まさかの全属性ご加護持ちが2人も生まれた…これらにも何か意味があるのやもしれぬとずっと調べているんじゃが……。」


そう言って、神殿長は私たちに向き合った。


「古い聖書の通りならば、『2人の聖女が生まれし時、時間の理をも取り払いて、全ての歪みが修復される』らしい。全く何のことかは分からぬが、そなた等には重大な天命が与えられておるのじゃろう…とは思うのじゃが…それに備えるには何が必要なのかも分からん。」


どうやら神殿長は5年前の私たちが全属性の加護を賜った日から、古い聖書とやらを読み込む日々を送ってきたが、「未だに、分からない尽くしだ。」と力なく笑った。


時間の理ね…

前世の記憶を持ってる時点で、『理』の意味すら曖昧にも思える。


しかし、そんな話を彼にするわけにもいかず。

だたただ、同情するだけだった。


「私たちのために調べて下さり、感謝します。」

ステイが神殿長に頭を下げた。

「いつも優しくしてくれて、ありがとうございます!」

私も感謝を告げる。


2人に頭を下げられ、神殿長は目尻を下げた。

全ての歪みが何のことかは、追々考えよう。


「2人とは私自身、関わりが深かったからのう…可愛い孫たちの婚約祝いになればと張り切っていたんじゃが、仕方がないのう。」


椅子から立ち上がった彼も、何かを吹っ切れたかのように、いつもの穏やかな雰囲気を身に纏った。

「別に結婚祝いでも出産祝いでも良いじゃないですか。私は待ちますよ?」

「しゅ!出産?!」

ステイの唐突な言葉に、隣に立つ私が挙動不審になる。

「結婚すれば、そのうち出産もあるだろう?アテーナは子供嫌い?」

「子供は好きだけど…出産とかは…まだ良く分かりません。」

何でもないようなことと言わんばかりのステイの態度と真逆に、顔を真っ赤にして俯く私を交互に見た神殿長と神官長が笑い出す。


「成人してから考えておくれ。私もまだひい爺になるのは嫌じゃ。」

「ゼイウスが居たら卒倒したよ?面白そうだから、私は見たかったけどね。」


確かに、私たちはまだ13歳だ。

結婚も、早くても15歳を過ぎてからだろう。


突飛な発言ではあったが、場の雰囲気は随分と和らいだように思う。

はぁ…

こそっと息を吐く私に、「3年後にはあり得る話だろ。」とステイは笑った。


3年後…ちょっと早い気がするよ。


「さて、では儀式を行うか。二人とも前に跪いて、聖女像に誓うのじゃよ。」

神殿長顔を取り戻した彼の言葉に従い、私たちは赤い絨毯が敷かれた、神殿長が聖典を開いて立つ教卓の前に跪くと、両手を胸に交差して毎月魔力を込める聖女像を見上げる。


「汝たちはカリミット王国民として、次期国王夫妻として、この国が発展していくために協力し合う者として、時に支え合い、時に励まし合い、共に歩んでいくことを誓いますか?」

「「誓います。」」


2人の声が重なった時、聖女像の持つ石が光り、と同時に私たちの左手の薬指が光り出す。

この世界の婚約指輪って…聖女様がくれるの?

めっちゃ太っ腹じゃない?


私が感動して自分の左手を凝視していると、「やんごとなき理由がない限り、この婚約は解消されぬ。」と神殿長が静かに言って、儀式が終了となった。


聖女様から賜った左手薬指に光る指輪は、光の加減で何色にも輝くが、デザイン自体はシンプルな物だった。

ここまでシンプルならどんなドレスにも合いそう。

地味目なドレスは勿論、派手目な時は他の指輪を重ね付けできる。


不思議なことに締め付けられていないのに、外せない。

指輪を触りながらクルクルと回そうとするも無理だと悟る。

神からの賜り物だから、当たり前か。


不思議と『そういう物』と理解が出来た。




「さて、王太子夫妻…つまり時期国王夫妻の婚約の儀のみ、聖女の像に誓う理由を話しておこうかの。」

一つ軽い咳払いをして、聖典を開いて話し始めた神殿長を、私たちは用意された椅子に座って聞くことになった。




この国が出来て500年余りが過ぎようとした頃の話だった。

当時の王太子は心を寄せた女性とではなく、家柄や政治的理由から別の女性と婚約を結ぶことになった。王太子は心に蓋をして、婚約者と向き合っていたが、ふとした瞬間どうしても好きな女性を目で追ってしまうことを婚約者に責め立てられた。

王太子は何度も自分を押し殺し、婚約者に尽くそうと努力をしていたが、婚約者の心に芽生えた猜疑心や嫉妬心を消し去ることは出来なかった。

もともと高貴な家庭で育った婚約者のプライドが嫉妬心を煽り、ある日王太子が愛した女性を殺害する事件を起こしてしまったのだ。

愛する女性を殺された王太子は、涙ながらに婚約破棄を聖女に願った。

愛する女性を殺した相手を好きになれるはずはないと。

聖女への誓いを反故にした婚約は、聖女の怒りを買い魔力と魔術を指輪に吸い取られ、2人の指輪は消え去った。

王太子は婚約者の心を守れなかった罪を着せられ、領地を得て魔力のない状態で上級貴族に下ることになった。

婚約者の女性は、殺人を犯した罪で城の地下牢に捕らえられたのだが、ある日忽然と姿を消した。

もしかしたら、聖女に消されたのではないかとの記録が残っている。

その後100年の間、この王国は飢饉や天災に晒された。

「すべては聖女を裏切った報いだったのだろう…」

神殿長は深い溜息を一つ吐き、私たちを静かに見下ろした。


「婚約破棄がされる『やんごとなき理由』の一つの例ではあるが、…2人には問題なさそうじゃな。大事な国民の命を軽んじる行為を聖女様は許さぬ。愛し合い仲睦まじい夫婦になってこそ、国は発展するのじゃよ。」


ニコニコと微笑む神殿長に見つめられ、ステイと視線を合わせる。

「大丈夫です。僕はアテーナ以外との結婚は考えられません。」

「私も、ステイ以外の殿方って…お友達にすらいませんから。」


神殿長と神官長が私に同情的な視線を向けた。

「アテーナには私がいれば問題ありません。」

ステイが清々しいほどの笑顔を見せた。


「王家の血は執着心が強いとは聞いていますが…本当のようですね。」

神官長が苦笑するのを、神殿長は頷いて肩を竦めた。

「現国王夫妻の婚約の時も、アルティス殿のやきもちにレイラーン殿が発狂しておったのぅ。」


あの穏やかなレイラーン王妃殿下が発狂とは…国王よ、何をした?


「アテーナ、帰ろう。」

「あ…うん。」


ステイのやたら私に絡む執着心は、遺伝だったことが分かり、私は小さく笑った。


前世の彼(私の勝手な記憶ではあるが)は執着心などの感情は感じられなかったから、正直戸惑いがあったのだ。

前世の彼は、どちらかというと…淡白だったから。

迷惑だっただろうと思っていたのに、実は私を好きだったと聞いた時は驚いた。

そんな彼が今世ではベタベタしてくる理由が分かり、納得ができた。


やはり、前世の記憶はあっても、親子の縁は…血には抗えないのね。


「王太子殿下の執着に疲れた時はおいで。神殿は王命すらも影響しない場所だから。」


神官長が私の頭を撫でた。


父親と同じ、大きな優しい手に、私は安堵した。

「ありがとうございます。」


ステイが神官長を睨むも、神官長は気にもしない様子でニコニコしている。


そんな彼に根負けしたかのように、ステイが頭を掻きながら「アテーナに呆れられないように気をつけるよ。」と答え、握った私の手を引っ張った。


ステイに手を引かれながら振り返る。

笑顔の神殿長たちに手を振り、見慣れた聖女像に心の中で祈った。

聖女像がいつもより笑っているように見えたのは、私が幸せだからだろうか。


ー幸せは長くは続かない。ー

のはずなんだけど。


祈りの間から出る瞬間を狙ったように、何かが飛んできたらしく、私たちに水飛沫が当たる。

祈りの間に入る前は綺麗に咲いて並んでいた水の花々の姿はなく、廊下一面水浸しになっている。

「アテーナ、まだ怒っちゃ駄目だよ。」

ステイが私の口元に指を当てて呟くように言った。

「え?」

「今、護衛たちが仕事をしてるから、そっちが片付くまで一旦停止だ。」

確かに廊下の先の方から人の悲鳴を聞いた。

「さっき、何が飛んできたのでしょう?」

私は飛んできた物の正体を確認したくて、水浸しの廊下を部屋の中からそっと顔を出す。

瞬間、目の前何かが通り抜けた。


…ん?


「ステイ、もしかして…今のって」

「魔獣だろうね。」


やっぱり。


「魔獣使いがいるってこと?」

「それを護衛たちが追っている。」


聖女になってから、命を狙われた回数は数えきれないほどではあるが…魔獣は初めてだった。


直接的な襲撃や、爆発する魔道具は多い。

他にも毒やガスなどの小細工系やら、色々飛び出す魔法陣が主だった。

正直、狙われている側が言うのも何だが、そういったやり方には飽きていたのだ。


何故なら、刺殺・射殺・撲殺・薬・落下…前世でありとあらゆる死に方を体験してきていることも理由かもしれない。


9回死んだ私は、もはや死に対する免疫が異常に付いている状態なのだから、殺し方についても一捻り欲しいとまで思えるようになっている。


そんな私に向けられた殺意が…魔獣?

新しいじゃない?

良いじゃない?


「素晴らしいわ!サメに食べられた経験はあっても、魔獣に殺られる経験はないわよ。いえ、折角だから殺られないように魔獣を観察したいわね。」


「アテーナ…気持ちは正直、分からないし分かりたくもないのだけれど。今日は大事な日だからさ、ちょっとは怖がってみたりとか…しない?」


命を狙われてるのにウキウキするなとステイに叱責されながらも、私のテンションは下がる気配がない。


「ステイ、私には無理よ。あの魔獣は水・風・雷かしら?」

「文献通りならそうだろうね。」

「それなら…火と闇でいけるわよね?」


どうやって捕まえるかを考える私に、ステイも諦めを覚えたのだろう。


「闇より光を使った方が魔獣を傷付けないんじゃない?」

「なるほど!ステイ、囲い込むわよ!」

「ちょっ!マジで?!今?」


一気に廊下に飛び出した私に向かって、幾つもの刃が飛んでくる。


私は全身に硬化魔法を施しつつ、風を切って飛び回る奴等めがけて走り込む。


「私、ペットが欲しかったの!」

「今、それ?!」


光の檻を作り出し投げれば、「キィーッ!」と鳴き声を発したそれを捕える。


「どうすんの?全部飼うの?」

「勿論。寂しい思いはさせないわ。」


私の後方に迫っていたそれが光の檻に捕われ床に落ちた。

ステイの魔法だ。


「もう一匹どこ?」


廊下を走りながら気配を探す。

ステイの側仕え秘伝の隠密魔法だ。

自分の魔力を空間全体に行き渡らせるように、感覚を研ぎ澄ましながらそれを探していると


「アテーナ右!」

「お嬢様!伏せて下さい!」


ステイとルシードの声が重なり、何かがぶつかってきたかのような衝撃と共に床に倒れた。


「痛っ」

頭を抑えながら開いた私の目に飛び込んできたのは、私を抱え込む体勢のステイの左手から炎が吹き出し、一人の男が火達磨になる光景だった。


「ギャーッ!!!」


ステイの魔力は半端ないことは知っていたが…

火力が強すぎる。

「ステイ!死なせちゃうよ?!」

私の言葉にはっとしたステイが慌てた様子で火を消し、代わりに光の縄で男を縛り上げたのが分かった。


「生きてる?」

「…多分。」


多分って…。

私はその場から冷却魔法を施し、黒焦げの胸元が上下に動くのを目視した。


救急対応として、息がしやすいように姿勢を変えてやりたいのだが…

起き上がろうとする私を、ステイの腕が離してくれないことに気付き、彼に抱きつかれたまま彼の背中を叩く。


「…ヒヤヒヤした。」

いつもの自信満々な彼からは想像出来ないくらい、震えて力なく呟く声が耳元に届く。

「…うん、ごめんて。」

彼の背中を叩いていた手を、擦るように動きを変えて、私の胸元に埋まる彼の顔を覗き込む。

すっと顔を上げた顔の黒い瞳と視線がぶつかる。

「許さない。」

「え?」


今まで震えていたとは思えない速さで立ち上がるステイは、私の身体を起こすとそのまま抱えるように抱き上げた。


「ルシード!魔獣のもう一匹はそこの柱の影にいる。すぐに捕まえて城に帰るぞ。」

「はっ!」


ステイの腕に抱えられたまま彼の肩越しに見つめる先では、護衛数人がかりで魔獣狩りが行われ、光の檻に入れられた2匹と共に運び出されている。


別の護衛たちに引き摺られる黒焦げの男は、私たちとは別の馬車で城の牢屋に運ばれるようだ。

…生きてるかしら?




「ステイ?怒ってる?」


無言で私を抱えたまま歩く彼を見上げ、尋ねるも、彼からの返事はなかった。

城に向かう馬車の中でも、まるで小さな子供のようにステイの膝の上に座らされ、逃れられずにいた。


「あの…そろそろ、離して頂きたいのですが…」


怒りオーラ満開な彼をおずおずと見上げてみるも、無言の冷たい視線だけが降ってくる。


「ヒッ!」


ヤバイ。

ステイがマジで怒ってる。

しかもガッチリホールドされてるから、逃げられないし…

どうしよう…


神殿に向かう時とは違う意味で、馬車の中は不穏な空気が漂っている。


「ねえ。何で飛び出したの?」


やっと口を開いたその声に、全身から冷や汗が流れる。


「護衛たちが犯人を捕らえるまで待てなかった?」


思わず顔ごと目をそらす。

そんな私の顔をステイの手が無理矢理戻すように力を込めてきた。


ブロンドの髪がサラリと揺れると、隙間から黒い瞳がこちらを睨んでいる。


「…ごめん。」


謝ったのはステイだった。


「え?」


「アテーナが死ぬとは思わないんだけど…傷物になるのも許せない。」


ああ…、死ぬことはないってのはご理解頂けていたのね。

それにしても、傷物ってのは結構な言葉だな。


「…殺されることに慣れないで欲しい。」


「それは…」


創造主にメンタル強化されてる時点で、私は死に対する耐性が異常なのだ。


「うん。僕の我儘だ。実際、アテーナを僕自身が傷物にした。」


ステイの手に触れられた後頭部に、小さな痛みが走る。


ステイに庇われ、床にぶつけた時にできたものだ。


「たんこぶくらい平気。ステイが守ってくれた証拠だし。」

「いや、たんこぶを甘くみたらいけない。頭を強く打った衝撃で、頭がおかしくなる人間だっているんだ。アテーナがこれ以上おかしくなったら…僕はどうやって君を理解したらいい?」

「失礼ね!?私はおかしくないわよ!」


一気に膨れ上がった怒りを口にした瞬間、ガバッとステイが抱きついてきた。


「こうして、話が出来ることがどれだけ幸せか…ちゃんと分かって。」


前世で意識のない私に毎日話しかけていたステイの記憶を思い出す。

「ごめんなさい。」


言葉は辛辣で失礼だが、きっとそれだけステイはパニクったのだろう。

そのことに関しては特に、申し訳ない気持ちになった。

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