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199 絶望と希望

こんにちは。インド人嘘つかない改め、一路傍です。

すでに活動報告に記載いたしましたが、拙作の発売日が決まりました。また、書籍化にあたりまして、作者と同様にタイトルも改題となりました。新たなタイトルは――


『魔王スローライフを満喫する~勇者から「攻略無理」と言われたけど、そこはダンジョンじゃない。トマト畑だ~』


となります。素敵なイラストを描いてくださっているのはNoy先生。そして、第10回ネット小説大賞の小説賞を受け、GCノベルズより23年1月30日(月)となります。あと、二か月とちょっとですね!


ちなみに、新話まで追いかけてくださった読者の皆様にだけ、どんなふうに書籍版では変わるのか、その内容をちみっとだけお伝えしますと――


・第一巻の内容はWEB版の『第一部』全て、「追補 魔王たち」まで含みます。

・全体で約二十万字。本文修正に加えて、新規エピソードなど、三、四万字ほど追加。

・ルーシーとのいちゃいちゃマシ、ドゥとディンの可愛さマシ、パンチラ(!?)マシマシでお届け。

・Noy先生の描いたルーシー可愛い! エメスすげーお姉さんっぽくなった! セロ、マジ魔王!


なお、スローライフが前面に押し出されたことからも分かる通り、『第二部』を載せる第二巻は本文を大幅改稿。新規書下ろしと言ってもいいほどにがつがつと改稿する予定です。


 というわけで、長々としたまえがきになってしまいましたが、新話本編をどうぞお楽しみください――


※あとがきにも別の告知があります。


 ……

 …………

 ……………………


 天界ではえらく微妙な空気が流れていた。


 地獄に召喚されていきなり特製闇魔術をぶっ放したモタに対して、セロは「あちゃー」と額に片手をやっていたし、当然冥王ハデスは顔面蒼白になっていた。


「なあ、セロよ」

「な、何ですか……?」

「あの凶悪に過ぎるハーフリングの少女はいったい何者なのだ?」

「モタといいます。ちょっとばかしやらかし癖がありまして……」

「ちょっとどころじゃないだろう!」

「す、すいません!」


 なぜ怒られなくてはいけないのかと、セロは心中で首を傾げたが、何しろこれまで感情をほとんど吐露してこなかったハデスが珍しく怒りに震えている。


 まあ、それも仕方がないだろう。冥界の守護を任せてきた地獄長サタンが盤石の態勢を敷いて蠅王ベルゼブブを討ち取ったかと思いきや、モタの登場で一発逆転ときたものだ。


 そんなモタはというと、ベルゼブブと「やったね」と、呑気にハイタッチを交わしている。


 何だか一番混ぜちゃいけないものを合わせてしまったような組み合わせだが、モタとベルゼブブ――こうなったらずっと冥界にいてもらって、向こうで色々とやらかしてくれる分には問題ないかなとセロは考え直した。


 ちなみに、この二人。この後、冥界をさっさと統一して、その二日後にはサタンやアスタロトまで引き連れて、勝手に赤湯に入って第六魔王国を改めて満喫するのだが……このとき天界にいたセロはもちろん、そんなふうにして頭痛の種が一気に増えるとは知る由もなかった。


 はてさて、こうして天界の床に広がっていた三つの映像のうち、地獄のものがぷつんと途切れると、二つの映像が広がった。そのうち、一つは浮遊城の一階温室にて真祖カミラと愚者ロキが戦っているもの、そしてもう一つは陣痛で転げまわるルーシーを介抱している海竜ラハブに第四魔王こと死神レトゥスが接近しつつあるものだ――


せつとしては魂だけを刈り取りたい。その肉体に苦しみを与えるのは本意ではないのだ。せめて大人しく魔核を裂かせてもらえないものだろうか?」


 儚げな美少年たるレトゥスは身の丈の倍以上もある巨鎌を取り出した。


 そんなレトゥスに対して満身創痍の海竜ラハブはよろよろと立ち上がって、両拳をギュっと固く握ってファイティングポーズを取った。


「貴様にくれてやる命など、ここには何一つとしてない!」

「おやおや。君は邪竜ファフニールの義娘だったはずだろう? 先ほどはそこに転がっているルーシーとも戦っていたようだし……一応はこちら側の陣営ではないのかい?」

「義父様と一緒にするな! はセロ様の最愛の者だ!」

「最、愛は……わらわ……だ」


 こんな局面でも些細ないがみ合いをするラハブとルーシーだったが……


 何にせよ、事態は最悪だった。幾らセロの『救い手(オーリオール)』があるとはいっても、ラハブはしっかりと戦える状態にまだ回復していない。しかも、ルーシーは陣痛を押さ込むのにやっとで、地べたに転げまわっている。


 となると、今、この『天峰』で戦える者は独り(・・)しかいないわけで――


「おや、やっと拙に加勢する気になったのですか?」

「…………」

「いつまでも無言で、そうやって背後を(・・・)取られるのはうれしくないのですが、いったい貴方はどちらの味方なのです――邪竜ファフニール?」


 死神レトゥスがそう言って振り向くと、ファフニールはゆっくりと天を仰いだ。それはまるで天界にいるあるじを見定めているかのような目つきだった。


「二心はないと誓ったばかりだ」

「ほう。では、貴方自らが義娘の処理をして下さると?」

「そんなことはせん。義娘とルーシーは我が守る」

「おやおや、地獄長サタンと並んで最も忠勤を尽くしてきた貴方がここにきて裏切るわけですか。冥王ハデスもよほど人望がないようですね」

「もちろん、ハデス様を裏切るつもりはない」

「貴方と下らない言葉遊びをしている暇はないのですが?」

「言葉遊びではない。もとより我に王道や覇道を語る趣味なぞない。しかし、主が誤った道を進み、それが正道ではなく、邪道となるならば――臣下として我は主を正す必然性がある」

「よく言いますよ。邪竜である貴方が邪道を非難しますか?」

「だからこそだ。我と同じ道をハデス様は進んではいけない!」


 邪竜ファフニールは吠えた。さながら天界にいるハデスに届けとばかりに。


「やれやれ、面倒なことですね。狙いはせいぜい、貴方の義娘の回復する時間を稼ぐといったところでしょう? 拙も舐められたものです」


 死神レトゥスの言葉に邪竜ファフニールはぴくりと頬を強張らせた。


 レトゥスに完全に作戦を読まれていたからだ。実際に、今のファフニールにレトゥスを抑え込むだけの力は残っていなかった。ただでさえ意識を刈り取られて、大の字に寝転がるほどに、義娘こと海竜ラハブに凹々(ぼこぼこ)されたばかりなのだ。


 しかも、ラハブとは違って、ファフニールはセロには臣従せずに同盟を結んでいたことで、『救い手』の効果は受けていない。だから、ラハブと同様に立っているのもやっとという状況だ。


 もっとも、そこは元地上最強――冥界の法王はかもりである死神に負けるはずなどないのだが……


「こ、これは……まさか、かつて古の大戦で亡くなった同朋たちか……」


 邪竜ファフニールは微動だに出来ずにいた。


 急に、ファフニールと同じほどの巨躯を誇る毒竜のむくろが幾匹も『天峰』の地から這い出て、まとわりついてきたからだ。


 もちろん、ファフニールは力だけの魔族ではない。その本質は毒にこそある。


 だが、今、『天峰』ではルーシーが陣痛で倒れていて、もしファフニールが毒でも撒き散らそうものならルーシーだけでなく、その体にいる子供にまで影響が出かねない。


「ぐうっ!」


 すると、毒竜の骸たちが強引に邪竜ファフニールにこうべを下げさせた。


 文字通りに鎌首をもたげるようにして、陰気な口笛を吹きながら死神レトゥスはゆっくりと歩んでくる。


「余計な魂を刈り取る面倒が増えただけでしたね。こうなっては地上最強と謳われた邪竜ファフニールも、見る影もなく、まさに噴飯ものだね」


 死神レトゥスはそう言って、巨鎌を構えた。


「義父様あああああ!」


 海竜ラハブが叫ぶも、体はまだろくに動いてくれなかった。そんなラハブにちらりと視線をやって、死神レトゥスは死刑を楽しむかのように小さな笑みを浮かべると、


「その魂は霊界でせいぜいこき使ってあげますよ」


 それだけ言って、魔核を一突きしようとした――


 が。


 そのときだった。


「ふぎゃにゃにゃにゃ!」


 急に、ぼふん、と。


 どこからともなく、猫が死神レトゥスの顔に投げつけられたのだ。


「な、何だ! いったい!」

「しゃー!」


 その猫はまるでここで会ったが百年目とばかりに死神レトゥスの顔を引っ掻きまくった。そう。その猫こそ、かつて第七魔王を名乗った不死王リッチが憑依した屍喰鬼グールの猫こと、いぬたろうだ。


「やめろ! この……糞猫が!」


 もっとも、死神レトゥスはいぬたろうを簡単に掴んで、ぽいと『天峰』の断崖の下に放り投げた。


「にゃあーーーーーっ!」

「いったい、どこから飛んで(・・・)きたのだ? あのけったいな猫は?」


 死神レトゥスがそう言って冷静を取り戻してから、改めて巨鎌を振りかざすと――


 今度は、キイーンと。冷たい響きが鳴った。


 レトゥスが振るった巨鎌に対して、宙で大鎌の刃先を合わせた者がいたのだ。


「ルーシーお姉様をみすみすらせはしません!」

「貴様は――!」

「死神レトゥスよ! ここからは真祖カミラが次女、第六魔王国外交官こと、私が相手をします!」


 遠くの浮遊城から背中にバーニア付きのリュックを背負って、夢魔サキュバスのリリンが駆けつけてきたのだった。



いぬたろうは改稿後の「=15(追補) 猫に九生あり」から登場します。その後、幾つかのエピソードで登場しますが、改稿版を読んでいらっしゃらない方はよろしければどうぞ。


さて、話は変わりまして、まえがきで言っていた告知になります――


こちらはなろうさんではなく、〇クヨムさんでのことになるのですが、活動報告に似た近況ノートというものがあって、現在、『限定近況ノート』なるものを投稿すると、作者の懐にちゃりんちゃりんが入るキャンペーンをやっています。


限定近況ノートとは何ぞやというと、ぶっちゃけると課金制の有料コンテンツです。


最初は私も「ウェブ小説はフリーなのがいいのに」と、全く興味を持っていなかったのですが……ちゃりんちゃりんの魅力には抗え――じゃなくて、周囲がそのキャンペーンから始めて、良い機会だと考えたので、その限定近況ノートで拙作『トマト畑』に関する以下の内容を投稿していく予定です。



・キャラクター表詳細

ウェブ上でも「キャラクター表など」は載せていますが、それをさらに詳しく記したものになります。


・地上世界の世界地図

・第六魔王国の魔王城内見取り図 など

これは文字通りです。いずれ書籍版でもデザイナーさんが作ってくれるはず……


・限定近況ノートのみの追補

最近、改稿で追補がこないなあとお嘆きの貴方! ここでちみちみと書いていきます。


・創作よもやま話

よわよわ作者なので需要などないかもしれませんが、『トマト畑』や書籍化にまつわる話など、記していく予定です。


・その他

ご要望があれば何でも。



以上のコンテンツでカクヨ〇さんの限定近況ノートに展開していきます。


とはいえ、私はネット小説大賞もいただきましたし、なろうさんをホームだと捉えていて、上記コンテンツを書籍出版までにこちらの活動報告でやろうと考えていたわけですが……まあ、タイミングでしょうかね。大した理由ではないのですが、ちょうどキャンペーンをやっていたので、カク〇ムさんで進めることにいたしました。ご了承くださいませ。


課金制コンテンツですし、決して安くはないので、あまり無理はせず、ボーナスでも入って「ちょいとばかし懐具合が温まってきたぜ」というときにでも、応援していただけると幸いです。何卒、よろしくお願いいたします。

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