1 騎士団長、見参!
第一章お疲れ様でした!
これから物語は大きく動いていきます。明かされなかった過去や新たな出会い。
これからも『勘違い奇術師の記憶日誌』をよろしくお願いいたします!
以下、第一章の復習
王の『民を殺せという』命令に刃向かった雇われ術師のグリード。
同じく雇われ術師、かつ人間の敵である怪物『魔の物』のエルベルト。
城を追い出され、途方に暮れる中、ユグドラシルの学園長ボルボと出会う。
それから二人は試験を受け、一般的な術師とは違う『奇術師』となる。
他にもフブキとラルクが加わり、4人で活動していくことになった。
ぼく達の監督官になったクドリフ。教師で、監督官の弟でもあるクラウスと奇術師として強くなるために勉学に励む。
所が何者かによって凶暴化したクラウスがリゼ・ロゼ先輩の活躍によって抑えられるが、事実調査のため3日間学園から出されてしまう。
しかし学園長の粋な計らいで観光王国グランツに行くことになった。
大浴場と高級ディナーの後にみんなで海を眺めていると、鯨の『神域生物』に出会い、事態は一変する。
鯨に言われるがまま森に向かうと、そこに待ち構えていたのは神域生物のTOPに君臨する犬神だった。
犬神と刃を交えるにつれ、エルが『限定解除』した時に現れる別人格が『狐神』ということを知る。
更に犬神によって抑えられていた『過去』をフブキは大きく取り乱してしまう。
その事に怒り狂ったエルは自らの許可制であるにも関わらず、強い意志により限定解除を行い、狐神を呼び起こす。
だが、古くからの友人であった2人はしばらく争った後、お互いがお互いのために戦っていた事を知り、戦いをやめたのだった。
そこからぼくは2人の過去を知り、これからの事について話し合うのだった。
しかしぼくは話の途中に「2人で募る話もあると」眠らされ、気がつくと学園のコテージだった。
これが大雑把なあらすじになります!
詳しく知りたい方はどうぞ始めからご一読ください。
では第二章の始まり始まり〜
目を覚ますとそこは学園のコテージだった。
リビングに向かうと先輩達と監督官、学園長も集まっていたが、フブキの姿が見当たらなかった。
「あ、グリード君。やっと目を覚ましましたか……」
「はい……。少し寝すぎた様で背中が痛いです」
「「そりゃ後輩君、3日も寝てたんだから〜」」
3日も!? それは寝すぎたとかいうレベルの問題じゃない。
「ところで先輩、フブキが見当たらないのですがーー」
「ーー引きこもってるよ。自分の部屋でずっとな」
ぼくが話終わる前にエルが答える。
それと同時に一同は口を噤んだ。
あの気の強いフブキが引きこもる……か。
犬神によって呼び覚まされた記憶。
あれがフブキにとってどれだけ辛いものなのかぼく達には測りしえない。
ぼくが目を覚ましてから3日が経ったが、フブキは自室から出てくる気配はない。
しかし毎日ご飯は食べてくれているみたいだし、皆が寝静まった後に風呂も入ってるようだ。
「なぁ、ちょっと街に出ねーか?」
「何でまた……。本なら図書館があるだろ」
「なんつーか。フブキの喜びそうなもの買ってやりたいんだ……」
そう言いながらうつむき、顔を赤らめるエルの横でラルクも一生懸命に頷いている。
エルがぼく以外の誰かのためにか……。
「そういうことなら出てみるか!」
そう言いながら街に繋がる扉へと向かった。
街は物静かな学園領から一変し、人や蒸気車が忙しなく動いている。
道化師が人を集め、いくつもの露店が立ち並ぶ姿はまるで街全体が一つの生物の様だ。
「あそこ寄っていいか?」
そう言って指差したのは、ブレスレットが置かれた露店だった。
ぼくが「あぁ」と返事をすると、エルは足早に向かった。
「おっさん。これ1つくれ」
「おっ、にーちゃんもお目が高いね〜。彼女へのプレゼントかい?」
「そんなんじゃねーって」
露店のおっちゃんに冷やかされたエルは、照れているのか頬をかいた。
そんなエルが選んだものが気になって覗いてみると、フブキに似合いそうな純白の真珠のブレスレッドだった。
エルは良い物が見つかってご機嫌なのか、指でブレスレットをクルクル回した。
「そんなに振りまわすと無くすぞ〜」
「大丈夫だって!」
エルの笑っている顔を見るのは、ホテルでの風呂以来だ。
「おい、奇術師のグリード、エルベルト、ラルクだな。騎士団駐屯所まできてもらおうか」
「おいおい待てよ、何で俺らがそんなとこに行かなくちゃなんねーんだよ!」
突然、四方を何人もの騎士で囲まれる。
駐屯所に連れて行かれるようなことしていないはず……。
「いいから来いつってんだろ……ッ!」
「んだよその態度!」
かなり上からな態度だ。
ムカつくけど、エルを止めなきゃ大事になりかねない。
「どうしたの?」
声のした方を見てぼくは開いた口が閉じないほどに驚愕した。
声の主はなんと、耳当てを外したラルクだったのだ。
それに開いた口が閉じないのは騎士も同じだった。
「お、おい名前をもう一度確認しろ!」
「は、はいっ! グリード、エルベルト、そしてラルク様ですっ」
下っ端であろう騎士がそういうと、一同は慌てて膝をついた。
ラルク……様? 様って何。
てか、何でラルクが喋ってるの……? いや、何でこれまで喋らなかったの?
ぼくの頭は混乱していた。
そしてそれはエルも同じようだ。
「し……失礼しました、フォンデリング・ラルク様! このご無礼どうかお許し下さい!」
「うん、許した」
めちゃくちゃあっさり許した……。
フォンデリングってラルクの性か……? 性を持てるのは王家だけのはず……。
騎士のこの慌てよう。それに犬神が言っていた『王家』。
もしかしてラルク、王子様!?
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感想などもよろしくお願いします。
ご精読ありがとうございました!