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10 勘違い奇術師、犬神と出会う

今回から面白くなっていきますよ〜!!!

 ぼく達は長くなると見込んで朝早くから出発した。

 先輩達と監督官も念のため同行するという。


「初、神域生物か……! はりっきって行こう!」


 陽気なエルに続いて皆「おーー!」と言ったものの……。




「1万エリルって高すぎでしょ! もうちょっと安くできないわけ?」


「そうは言われましてもお客様……

 周りと比べると安いと思うのですがっ……」


 観光客用に蒸気車の貸し出してくれる店の前で、ねばるフブキと先輩達をぼくとエルは少し離れて観察していた。

 蒸気車を借りようとするが観光都市なだけあってどこも高い。


 フブキの怒りは頂点に達しかけていた。

 車貸しのおじさんもだんだんイラついてる様子だ。


「もういいわ。こうなったら強化でひとっ飛びよ!」


「ダメですよ!反作用で他の人達が吹っ飛んじゃいます。」


「私は吹っ飛ばされても構いませんが……。

 いやむしろ、お願いしたいですっ!!!」


 ヘンタイ先輩にはもう誰もツッコまなくなっていた。

 慣れとは恐ろしい……。

 皆の会話を少し遠くで眺めていたエルがつぶやいた。


「思ったんだが、術式であのおっさん何とか出来んじゃね?」


「術式でどうするんだよ。

 あ、脅したりはダメだぞ……」


 エルは「しねーよ」と言いながら、車貸しのおじさんのとこに向かった。


「おっさん、1エリルで貸してくれよ」


「ふざけてるのかっ!

 冷やかしなら帰ってくれ。仕事の邪魔なん……だ……」


「分かりました。

 最速の物をご用意いたします……」


 突如、おじさんの態度は急変した。

 エルは横で自慢げに「あぁ頼んだ」と言っている。

 何をしたんだエル……。


ーープップ〜


「早く乗れよ〜。出発するぞ〜」


「良く借りれましたね〜

 実はエル君、お金持ちだったり?」


「そんな訳ねーよ。

 俺の話術が長けてただけだ。フブキよりもなっ!」


「話術しか使えないの間違いでしょ?」


 また始まった。フブキとエルが揃えばいっつもこうだ。

 そして基本的にエルが悪い……。


 「「前!前!前!」」


 木にぶつかりそうになりハンドルを急にきる。

 その度に体が振りまわされのだった。

 幸先悪いなこれは……。



 なんやかんやで辿り着いた『犬神』が居るはずの森は薄気味悪かった。

 その大きい杉の森は、無駄に開放感があり、それがまた気味の悪さに拍車をかける。

 ぼく達は『犬神』を見つけるべく、手分けして探す事にした。


「なんであんな所に鳥居があるんだよ」


 しばらく歩くとエルが足を止めそう言った。

 指差す方を見ると、小高な丘に一筋の陽光が降り注いでいる。


「その鳥居って何か知らないけど、調べてみるか」


「行くな、グリード」


 そう言って、近づこうとするぼくの手を取る。

 何故、そう聞こうとした時だ。

 木々の影から白い装束を身に纏った人々が現れた。


「どういうつもりだ……」


「……。」


 エルの質問に対しうんともすんとも言わない。

 話せないのか……。いや、話さないんだ。

 葉が揺れる音と共に、フブキと先輩達がスタッと着地する。


「「えっと……。これは一体どういう状況かな後輩君」」


「俺もわかんねぇんだよ……」


ーーザッ


 なんの前触れもなく白装束はその場で着座し、おもむろに笛やら小太鼓やらを掻き鳴らした。

 すると、木々が忙しなく動き出し森全体に陽光がさした。


「やっと俺の偉大さに気づいたか。

 表をあげよ。其方らの無礼、不問にいたそう。

 な〜んちって」


 そう言ってエルは舌を見せる。

 もう少し空気を読んで欲しい……。


『もう其方らのおふざけは終わったかのう?』


 低い響くような声のした方に顔を向けると、先の小高い丘に大きな犬が欠伸を放いている。


 一眼見て分かった。これが『犬神』だと。

 放つ気が只者ではない。

 その時僕は、ずっと感じていた視線がこの『犬神』だという事に気づいた。


『貴様ら4人に用は無い。控えよ』


 犬神の言葉に応じるかのように、先輩達と監督官はその場に倒れ込んだ。

 何をしたのかさっぱり分からない。


『エルベルト。貴様、何故その身に狐神を宿している?』


「狐神だぁ? 俺は何も知らねーよ。

 知ってるのは……俺が人間じゃねーって事ぐらいだ……」


『気づいていないのか……。

 まぁ良い。

 グリード。こやつの縛りを外せ』


 この犬神。どこまで知ってるんだ……。

 エルの切り札でもある〘限定解除〙は人格が変わってしまう為あまり使いたくない。


 だからと言ってここで逆らって、反感を買うのも得策じゃないよな……。

 どっちを選んでも地獄ってか? 上等だ。


『限定解除の許可を申請』


「ダメだエル……」


 エルが珍しく空気を読み、自分から申請する。

 しかし、ぼくはエルのリスクを優先的に回避した。


『勘違いするなよ!これは頼みではなく命令だ……ッ!』


 その怒声で明らかに周囲の空気が変わった。

 静まっていた大木はざわめきを取り戻し、鳥たちが一斉に飛び去って行く。

 ぼく達はそれを合図にその場から離れ、犬神の四方を囲んだ。


ご覧いただき、ありがとうございました!

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