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勘違い奇術師の記憶日誌  作者: ザッキー
プロローグ
1/14

1 勘違い奇術師、国なくす

初めまして!トアです。


第一章は自分が未熟なこともあり、あまりいい出来ではありません!

第二章の冒頭にあらすじを置いてありますので未熟さが気になる方は第二章からお読みください!


「王室からの緊急招集ですっ!」


 激しく開いたドアとともに、兵士の伝達が飛び交った。

 首筋がむず痒くなるような嫌な予感がする。


「行くか……」


 そう言ってぼくとエルは重い腰を上げて王室へと向かった。

 大体の要件はぼくもエルも察しが付いている。


「よくぞ集まってくれた。

 皆も知っての通り、民が反逆を犯し今にも城に攻め込んで来そうなのだ。

 それの鎮圧にあたってくれ!」


「最悪、殺しても問題ない。

 また、難民を受け入れれば済むことだからな」


 民の金で肉付いた小太りな王に続いて、騎士団長も話始めた。

 税金の約半分を、自身の私利私欲に使っている王に反逆するのも無理はない。


「ぼく達、王国専属術師は民を殺すのではなく守るために存在します。

 ですからその命令には従えません」


「その守るべき民が暴徒化しているのだろうが……ッ!

 それと勘違いするなよ。雇い主はこの私なのだ!」


 ()の怒号が鳴り響いた。


「そもそも自業自得じゃねーか。

 それとも俺たちを反逆者として捌くってのか?

 なぁ……自業自得ってこういう使い方で合ってる?」


「はぁ……。

 いちいち聞いてくるなよ。

 せっかくカッコよく決まってたのに……」


 ぼくと出会ってからペアを組んでいた大切な友ーーエルベルトが反論する。

 ちょくちょくバカっぽい所はあるが根はいい奴だ。


「なんだその態度は!

 崇高なる王の前だぞ!敬意を払え!」


「ぼく達は、こんな王に膝を屈した覚えはありません。

 あくまで雇っているということお忘れなく」


「貴様……王を愚弄する気か……ッ!」


ーーシャンッ


 突如、鈴の音が鳴り渡った。

 しかし、エルも国王もその取り巻きすらも反応しない。

 聞こえてなかったのか……?


「今、鈴の音がーー」


「誤魔化すなグリード!

 もう良い……出ていけ!

 見損なったぞ貴様ら!」


 それはこっちのセリフだった。

 もう彼らに救済の余地は無い……。

 ぼく達は高笑いの中、王室の敷居を跨いだ。


 これからどうしようか……。どこに行こうか……。

 啖呵を切ったはいいものの不安に押しつぶされそうになりながら、ぼく達は荒れ狂った通りを歩いた。


ーーシャンッ


 今度ははっきりと鈴の音が聞こえた。

 その鈴の音とほぼ同時に、ぼく達の目の前に全身真っ白なネコが現れると、ネコは振り返り何処かへと走り去っていく。

 ぼくは、それを追いかけるのだと本能的に理解した。

 エルは不思議そうな顔をしながらもぼくの後を追ってくる。


 ネコが路地裏に入るのが見えたので、ついて入るとそこには白髪で長い髭を生やし、背中を丸めた老人が立っていた。

 男はネコを抱えるとこう言った。


「君のペットか。……なかなかのものじゃな」


 ぼく達は瞬時に後ろに下がり、男と距離をとった。

 まずい。ぼくとエルの関係を見抜いてきたのはこの老人が初めてだ。


『……限定解除の許可を申請』


 エルは驚くほど冷静かつ沈着だった。普段のヤンチャで大雑把なエルはどこにもいない。

 エルもこの状況のまずさを理解しているのだろう……。


「却下だ。エル……。この人からは殺気が全く感じない」


 むしろ殺気とは正反対なものを感じる。

 とりあえずこの老人の言う通りにしていれば全てうまくいく、そんな気がした。

 それにぼくには、かよわい老人を痛めつける趣味はない。


「君たち、王城を追い出されたんじゃろ? ついてきなさい」


 全て御見通しというわけか……。

 老人は歩き辛そうに、路地の突き当たりにあるドアへと向かうと、指をくるりと回した。


ーーガチャリ


 ドアノブに触れていないのに、ドアの鍵が開く音がした。

 その時、初めてこの老人が術者だということに気がついた。


「なぁグリード。さっきまで夜だった……よな?」


「あぁ。間違いなく夜だった……」


 さっきまで闇に包まれていた空は薄い赤に染まり、夕陽が森全体に降り注いでいた。

 しばらく道なりに進むと木造のコテージが木々の間から顔を覗かせる。


「ーーこっちだ。早くこないか」


 コテージの方から老人が大きく叫んでいた。

 ぼくの中の、かよわいイメージは崩れ去る。


「ささ、掛けなさい。」


 コテージの中が思っていたよりも広いことに感心しながら、ソファーに腰掛けた。


「では二人の器を見せてもらおうか。大きく深呼吸しながら目を閉じて……」


 扉を抜けてから老人特有の語尾がなくなってるのは触れないでおこう……。

 などと考えながら、ぼくは言われたとうりにゆっくりと目を閉じる。


 しばらくすると老人は興奮気味に話し始めた。


「こんなもの見たことがない! 

 えっと……君には器がなかったのだ。

 何というか広い海のようで溜まっても、溜まっても溢れることがない……」


 先ほどまでの老人とは打って変わって、ものすごく動揺している。


「落ち着いて説明してください……」


「そうだな。取り乱してしまって申し訳ない。

 本来、術師というのは一定の力を使うと休息を要する。

 つまり力を使うとその度に器に水が溜まり、水が溢れないように汲み出さなければならない。

 だが、その器自体君の中には存在しない。

 使っても、使っても休憩を必要せず、術を使い続ける事ができるという事だ……」


 休憩? そんなものなくても術は出し続けれる……。

 確かに今まで術師にあったことは無く、気がつけば術をこなす事ができていた。

 知らぬ間に術を覚えるのも、いくらでも術が使えるのも、それが当たり前なんだと思っていた。


「そして何より奇妙なのが、君は5歳までの記憶がまったくない……」


「父の話によると、昔、商人の蒸気車に轢かれてしまった事があり、その時に記憶をなくしてしまったらしいです。母はその時ぼくを庇い亡くなりました……」


「それは辛い事を思い出させた。申し訳ない……」


「大丈夫ですよ。母の記憶もありませんし……」


 2人の間で長い沈黙が続く。


 と、ここで沈黙を破ったのはエルだった。


「俺のその器とやらはどうなんだよ」


 エルの空気の読めなささは、短所でもあり長所だ。


「そもそも魔の物に器は存在しない」


 やっぱり、この老人はエルが魔の物だと気づいていた。

 横目でエルを見ると、とても警戒した表情をしている。


「君たち、あれから寝ていないんだろう? 今日はこのぐらいにして明日の試験に備えて今日はもう休みなさい」


 そういうと、さっきまで目の前にいた老人はいなくなっている。

 試験なんて初めて聞いた……。

 いろいろと聞きたいことはあるけど、明日にしよう。今は何だかとても眠い……。







見てくれてありがとう!

書籍化までどうぞよろしく頼む!!!!


感想、評価、ジャンジャン受けつけ中〜

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