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あっと!ヴィーナス!!  作者: 神崎理恵子
ポセイドーン編
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ポセイドーン編 partー6 玉手箱

 再びゼウスの神殿に戻った。

 ゼウスと女神たちが、口論している。

 ポセイドーンをどうするべきか?

 メデューサも許せない! 懲罰を与えるべきだ!

 などと、激しくやりあっている。

 このままギリシャ神話のままに事が進むと、メデューサは醜い化け物に変えられて、ペルセウスに首を掻き切られることとなる。


 ゼウスが弘美が戻ってきたのに気が付いた。

「おお、帰ってきたようじゃの」

「お、おお……」

 本当は帰りたくなかったのだが、約束は約束。

 しかも相手は全知全能の神なのだ。

 逃げ出すことはできないだろう。

「さてと……約束だ」

「分かっている」

「ささ、もっと近くに寄れ」


 もう駄目だと観念したその時、宝箱が目に留まった。

 浦島太郎なら、箱を開けた途端に煙が舞い上がって、爺さんになってしまうのだが……。

 だとしたら、自分も婆さんになるのか?

 いっそその方がいいかもしれない。

 ゼウスとて、婆さんになってしまった弘美には用がなくなるだろう。

 神通力で、元の若さに戻すこともできるのかもしれないが。

「どうにでもなりやがれ!」

 困り果てた弘美は、手元にあったポセイドーンから貰った宝箱を開けた。


 すると箱の中から白い煙が濛々(もうもう)と立ち上り神殿中に広がった。


 すでに弘美は観念しているが、神々たちは何が起きたのかと右往左往する。

「な、なんだこれは?」

 ゴホゴホと咳き込む神様たち。

「そうだ! アクアラング!!」

 そう言うと、弘美はアクアラングのレギュレーターを口に咥えた。

 もちろん愛ちゃんも同様である。

 やがて、煙は薄らいでいって、元の平穏な空気に戻っていった。

 神殿内に立ちすくす、茫然自失状態の神々だったが、気を取り戻してゆく。

 もう安全だと思った弘美はアクアラングを外した。

 途端にアクアラングは消えた。

「はて? 儂らは何を話し合っていたのかのう」

「何か討論していたような……」

「何故、わたしはここにいるのでしょうか?」

 弘美の存在に気が付くゼウス。

「おお! そこにいるのはファイルーZの姫君じゃないか?」

 ヴィーナスとディアナがいるのを見て、

「そなたらが連れて来たのか?」

「さ、左様にございます」

 ヴィーナス達も意識かく乱しているもよう。

「さて、一応要件を聞こうか」


 え?

 今までの事、覚えていないのか?

 激しく討論していたアテーナーもデメーテルも静かにしている。

 まるで、何で自分はここにいるのか? と煩もんしているようだ。

 宝箱の煙が、記憶を消したのか?

 それしか考えられない。

 アクアラングを付けていた自分たちは平気なのだから。

 もしかしてこれは、ハーデースの復讐の手助けと、自身のゼウスに対する雪辱? だったのではないか?

 後出しジャンケンの始末を図ったのであろうか?


 ゼウス達は記憶を失くしているに違いない。

 だとしたら、ここは強くでるに限る。

「ここにファイルーZがある!」

「おお、確かにファイルーZのディスクのようだな」

「ヴィーナスの話によると、こいつは世界美女名鑑みたいなものだろう?」

「うむ、言いえて妙だがその通りだな」

 完全に記憶消失にはならず、ファイルーZのことは覚えているようだ。

「非常に迷惑している。取り消すなり廃棄するなりして欲しい」

「ファイルーZに選ばれることは、光栄なことなんだぞ」

「こっちは迷惑なんだよ。俺はごく普通の人間なんだよ。いや、普通でいたいんだ!」

 激しく詰め寄る弘美だった。

 その勢いに押されたのか、たじろぐゼウス。

「わ、わかった。考慮しようじゃないか」

「考慮じゃだめだ! リストから消せ!」

 鼻息を荒げてなおも追及する。

「わかった……消すよ。ディスクをこちらに渡せ」

 弘美がディスクを渡し、受け取ったゼウスはディスクに火を点けた。

 空中に浮遊したポリカーボネート素材のディスクが高温になり融解した。

 それを見届けて、

「よし!」

 フンッ!

 勝負あったり!

 と、肩の荷を下ろす弘美だった。

「というわけで、帰ろうか」

「分かった!」

 ディアナが、天翔ける戦車を呼び寄せた。

「早く乗れ!」

 ゼウスがヴィーナスを呼び止める。

「いいか。前にも言ったとおりに、弘美の調教よろしくな」

「かしこまりした」

 相槌を打つヴィーナス。

 そしてディアナの所へ行く。

「何を話していた?」

 ディアナが尋ねるが、

「これから空は荒れるので、荒天準備せよ、だそうだ」

「なんだそれ?」

「いや、こっちの話だ。さあ、出発してくれ」

「分かった」

 一行が乗り込んたのを見て、天馬に鞭打つ。

「ハイよ~、シルバー!!」

 ふわりと舞い上がる天翔ける戦車。

 そして、弘美らを地上へと送り届けたのであった。


 数日後。

 晴れて地上に戻った弘美たちには、いつもの日常が戻ってきていた。

 3年A組の教室でのホームルームの時間。

 女神綺麗ことヴィーナスが教壇に立っている。

 不貞腐(ふてくさ)れた表情の弘美。

 なんでこいつがまだいるんだよ!

 という表情をしている。

「あなたが心身ともに可愛い女の子になるよう、教育係としての役目があるからね」

「くそー。ゼウスに、男に戻せって言えばよかった」

「残念でしたね。ゼウス様の愛人にならなくなったことに気を良くして、すっかり忘れていたみたいね」

 ディスクは燃やしても、データは運命管理局のコンピューターに保存されているので、いくらでも複製は可能である。

「ううっ。頭痛い」


 ヴィーナス、ディアナ、アポロン、ゼウス、ハーデース、ポセイドーン……。

 この調子で、さらに多くの神と出会うのかと思ったが。

 今のところお声がけはきていない。

 このまま、金輪際関わりたくないものだ。

「わたしがいるぞ!」

 と、ヴィーナス。

「おまえは、酒でも飲んでろ!」


 神と関わってしまった弘美の平穏を祈って、ひとまずこの物語を終わりとしよう。

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