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敗北のドレスソード  作者: 手遊花
朝倉女子 二年生編(冬)
97/205

手なら伸ばせる(2)

 二十分もしないうちに、LRTが「黒須第一前」停留所に到着した。大学が目の前に目視できるほど、敵城は近い。足取り重く路面電車から出ていくと。

 目先にある近代的な屋根付きのベンチに、頼もしい相棒が座っていた。


「おはよ」

「おはようです」


 今日はドレソをやらない予定だし、やはり近所だからか。氷空は薄手だけど温かそうなネイビーのフード付きダウンジャケットに、首元からチラリと見える白いセーター。こちらも変哲もない黒いチノパンと、飾り気のない装いだった。

 それがやけに似合うのは、彼女のいつもが成す技だろう。


「海音姉さんは先に行ったので、紫織さんはもういらっしゃると思います」

「そっか。ありがと…………ふう」


 返事はしたものの、あらためて覚悟を固めるのに十秒ほどかかった。

 その間、氷空は急かすでもなく、目線をそらし、もみあげを弄っていた。


「……よし、いきましょか」

「はい」


 いざゆかんと、先日たどった練習場までの道のりを歩きはじめる。こういうときだから当然、私が先立って前を歩くべきだろうけど、氷空は後ろに控えるでもなく、半歩後ろに追従するでもなく、私の隣でぴったりと歩いてくれている。

 できる子だ。「今日はあなたの用事で、私は付き添いですから」といったプレッシャーが和らいだ気がして心強い。花にも見習ってほしい。


 大学に入り、白いエントランスホールを進み、エスカレーターで地下に降りる。茶色い間接照明が効いた大学とは思えないほどの通路も前進。最近「大学の通路」といったらこういうお洒落空間があってしかるべきと思い込んでしまっているのは、間違いなくこの黒須第一大学のせいだ。ええい、毒されたか。


 目的地の練習場には、五分としないうちに到着してしまった。入口の大きな金属扉に手をかける前に、深呼吸。この場にきてなお「海音さんがうまいこと話をとおしてくれてますように」とお祈りしてしまうのは、我ながら往生際が悪いね。


「いくよ」

「はい」

「……失礼します」


 重たい金属扉をゆっくりと手押しし、空間を開く。目線の先には黒いステージ。その外、手前側のところに海音さんと紫織さんが立っていた。ほんのり湿っていて、呼吸も早いのは、今しがたまでドレソをやっていた証拠かもしれない。


「よう、リッコちゃん。氷空ちゃんもちゃんとこれてエライエライ」

「はぁ」

「こんにちは、海音さん、紫織さん」

「こんにちは。失礼ですが、皆さんとの対外練習は来週の予定ではなくて?」

 前髪の3/7の分け目を指でなぞりながら、じろっと見てくる。もう非好意的。


「それとは別口だ。リッコちゃんがおまえに話あんだってよ」

「……私はなにも聞いておりませんが?」

「言ってねぇし、ついでに私も聞いてねぇ。そっちのが面白そうでよ。きひっ」

 ダメだこの人。初手から絶望させてくれる。さすが曲剣使いの親玉だ。


「そうですか。して、小枝さん。話とはなんですか」

 時間がありますので、さっさとなさい。そう言わんばかりに急かしてくる。


「そのお、紫織さんに少々、お尋ねしたいことがありまして」

「それは聞きました。早く内容をおっしゃってください」

 圧。圧が強い。残念だが、好感度は前回維持のようだ。


 だとしても、モジモジしていても仕方がない。

 ええーい! 意を決せ! 小技のリッコ!


「紫織さんは黒鉄千草さんのこと、ご存知ですよね」

「当たり前でしょう。あの子が小学一年生のころからよく知っています」

「紫織さんと同じ、七咲一刀流の門下生なんですよね」

「ええ、そうですが。それがなにか」

「彼女は、ダガープ……七咲鈴子さんのお弟子さんなんでしょうか?」

「……そうとも言えますし、違うとも言えます」

 ギリッと。紫織さんの顔が苦々しそうに歪んだ。


 ひえー……この話題はまさしく地雷だったのか。紫御前さまが目に見えて不機嫌になってきた。海音さんは興味深そうに、面白がって聞いているだけで口を出してはこない。氷空も言わずもがな、口を出せる状況にない。

 私は紫織さんと、1vs1の対面のままで戦うしかないみたいだ。彼女の後ろ髪のように真一文字でバッサリいかれないよう、心を強く立ち会うほかない。


「それは、どういう意味なのでしょう。詳しくお聞きしたいのですが」

「先に、あなたの質問の意図を教えるのが筋ではなくて?」

「あとで、でもいいでしょうか」

「なぜです」

「たぶん、紫織さん……怒りそうですので」

「そう……そうと分かっていて、なお聞くと。あなた、いい度胸ですね」

 私このあと、ころされたりしないよね?


 紫織さんは私にか、話題にか、いずれにせよイラつきを隠そうともせずに威圧感を振りまきながら話してくれた。教えてくれないわけじゃないみたい。


「千草は七咲一刀流道場の門下生ですが、小さいころから三つ年上のリンに憧れていました。あなた方が知るダガープリンセスと呼ばれる以前のころからです。その憧れはリンが道場を離れてからも続き、剣術の場では真面目に七咲流を鍛錬していたのに、ドレスソードをはじめてからというもの……七咲流の型を守りながら、あろうことか過去のリンの剣を模倣し、好き放題に振るうようになりました。良剣と悪剣を備えた千草はたしかに、選手としては血を継いだ存在と言えます」


 良剣と悪剣。つまり、紫織さんと七咲さんとを足したドレスソードか。

 予想は当たらずとも遠からず。想像以上の化け物ってのは大当たりみたい。


「ってことは、直接のお弟子さんというわけではないのでしょうか」

「いえ、ここ一年はリンが直に手ほどきしています……どちらかの剣を」

「そうですか。なら、黒鉄千草さんは本当に“七咲鈴子さんの弟子”なのですね」

「ええ。道場の師範代の身としては、不肖な話ですが」


 紫織さんの苦い顔はそれが原因か。彼女の美しい剣技は、剣の道を知らない私にも「七咲一刀流の剣術」を知らしめてくれる。なんてキレイなのだろうと、正道の信念が見て取れるくらいにだ。対して七咲鈴子さんの剣は、それこそダガープリンセスの剣。つまるところ、邪道でカッコいいクレバーな剣技だ。


 それらが混ざった黒鉄千草は、昔なじみとはいえ厄介な子なのだろう。

 しかも、ドレソの世界で無視できないほどの存在感を発揮しているときた。


「千草のことが、あなたの聞きたいことなのですか」

「はい、おかげでスッキリしました」

「そう――それで、あなたはどうして、このような話を聞きにきたのですか?」

 険の種類が切り替わった。「千草」から「小枝」への嫌疑に。


 さすがに、このまま見逃してくれるつもりはないらしい。

 私も目標が定まって、得心してばかりではいられない。

 本日の一本勝負は、この空間から撤退するまでが本番だ。


「怒らないでくださいね」

「保証はいたしかねます」

「黒鉄さんを倒したいからです」

「千草を? あなたが? 申し訳ありませんが、接点が思い浮かびません」

「復讐です」

「……ふくしゅう?」

 紫織さんが、まっことおかしき者を見る目になった。


「きっひっひ! きっひっひ! なーるほどなっ! リッコちゃんおもしろ!」

 紫織さんの怪訝さの一方で、海音さんは感づいたか。大爆笑している。


「ふくしゅうとは? 理由が分かりません。あの子がなにか粗相をしましたか」

「鈴子さんに倒され続けた先輩のために、鈴子さんの弟子を倒したいんです」

「……意味が分かりません。それは、あなたに関係のあることなのですか」

「復讐を無理やり肩代わりしたので、関係はあります」

「肩代わりって……千草と縁もないどころか、あの子の人格すら認めていない」

「はい。だから、私のためだけの八つ当たりです」

「正気ですか? 本当に意味が分かりません。それになんの意味があるのですか」

「私と先輩が勝ち誇ります。あの七咲鈴子を倒したぞ、って」

「ふざけるのも、大概になさい」

 ギリギリギリっと。明確な怒りを向けられる。そりゃそうだ。


 シオリちゃんが大好きなリンちゃんの、本人でもないお弟子さんを倒して、そのくせ「リンちゃんに勝ったぞ!」と勝ち誇ろうとする他人が現れた。

 これに怒らずして、なにがリンちゃん大好きシオリちゃんか。


「なぜドレスソードに身をやつす女子は、心が捻るのか。理解に苦しみます」

「きっひっひ。物狂い女子のトップスターが笑わせんな」

「黙りなさい海音。私はどこぞの鉄面とは違います」

「……いや、マジで。違いねぇから。どっちもイカレ女の頂点だ。本気で」

 神妙になって返事する海音さんが、やたらとツボに入って。


「ぷっ」

「……あなた、もしや今、私をお笑いになりました?」

 自らラストラウンドを勃発させてしまう女、小枝律子ちゃん。


「ねえ、あなた、私のことをお笑いになったのですか?」

「あっ、いや、そうではなくて」

 ツボったのは海音さんのツッコミであって、まあ言葉の内容も含むだけど。


「おい、年下脅してんじゃねぇぞ。清純派ブスが」

「脅してなどおりません。あと、その汚い口を閉じなさい。反吐が出ます」

「その反吐が巡り巡ってきたんだよブス。リッコちゃんは菖蒲の弟子だからな」

「菖蒲……笹倉菖蒲……そう、そうですか。下劣な。だから復讐などと」


 沸騰しきった顔色が鎮まる。落ち着いたというより、沸点を超えた冷たい怒りに変わった感じ。これまた詳細は分からないけど、マジで残念なことに、菖蒲先輩ったら紫織さんにもなんかしたらしい。そうとしか思えない形相だ。


 しっかり受けて、いなして、崩れないようにしないと。

 ここから五体満足で帰れそうになさすぎる。


「小枝さん。たとえあなたが千草に勝っても、あの女の勝利とはなりません」

「承知してます。そのうえで、二人で勝ち誇ります」

「それをする時点で無様な道化に成り下がると、なぜ分からないのですか」

「それも承知してます。そのうえで、勝ったと言いきります」

「なんて救いようのない。愚か者。さすが笹倉菖蒲の弟子というだけありますね」

「ありがとうございます」

「黙りなさい」


 決しておちょくっているわけじゃないんだけど。いつものように脊髄反射で言葉を返していると紫織さんの癇に障るようだ。私たち、つくづく相性が悪い。


「はっきり言ってあげましょう。あなたでは千草に勝てません」

「分かってます」

「眼高手低。口よりも先に、するべき努力があるのではないですか」

「おっしゃるとおりです」

「慇懃無礼な態度は面倒臭さの表れ。己が持ち込んだ火種の始末くらいなさい」

「……すみません」

 それはそのとおりだ。聞くだけ聞いての失礼な態度とか、ダメだった。


「氷空さんはどうなのです。あなたひとりであれば誇大な目標とは言えませんが」

「? 私ですか」

 紫織さんがターゲットを氷空に切り替えた。


「そうです。だって、あなたはこの子のチームメイトなのでしょう」

「まぁ」

「口だけの目上の存在に振り回されるなど、ハラスメントそのものです」

「はぁ」

「場合によって、部の実情を鑑みて、然るべき手助けもいたしますよ」


 暗にどころか、もはやあからさまに「この小枝なる不束者を社会的に制裁して差し上げます」と言ってるも同然だ。怖すぎるけど、ただしいのは紫織さんなのがネックすぎる。私がチラッと目を向けると、氷空は相変わらず右前髪のもみあげをモミモミと弄りながら、いつものつまらなさそうな顔をしている。


 まずい。飽きて話を聞いていなかった可能性があったり?

 ひとりハラハラしてるなかで、氷空が口を開いた。


「べつに。律子さんが使っている熟語の意味を除けば、いい目標だと思います。JDS出場選手にとって打倒桜花は、来年度も全国優勝に等しい豪語ですし。これについては私以外のメンバーも同意していますので、支障はありません」


 氷空ははっきりと言い返した。


「ですが、そこに至る理由が問題なのであって」

「それこそ関係者だけの問題です。私は構いませんし、応援もしています」

「しかし……」

「眼高手低だとしても、律子さんならきっと、手を伸ばせるから」

 思わず泣きそうになったから、歯を食いしばった。


「それに私もいつの日か、同じような復讐を遂げたいと思っていますので」


 そう口にした氷空は、挑発的な目線をチラリと配った。

 その先にいるのは、彼女のことが大好きなお姉ちゃん。


「きひ、きっひ、きっひっひ!」

「きし、きし、きっしっし」

 視線が合った二人が、好戦的に笑っている。


 大変かわいらしくが、ほほ笑ましいというよりも物騒な印象だ。

 てゆうか、やっぱこの姉妹。笑い方が珍妙でウケるんだけど。


「……いいでしょう。私こそ関係ありませんので、口だけなら好き勝手なさい」

 おっと、いけない。紫織さんが私に向き直っていた。


 呆れたような物言いだけど、私の言い分を認めた……いや認識だけはしたってところか。心から認めることはないだろうし、私もそこまでは求めていない。

 明確に喧嘩を売っているのは、前回も今回も私のほうだ。ぶっちゃけ、紫織さんに落ち度はない。彼女が不機嫌になるのは当たり前で、私が十割わるい。


「小枝律子さん、でしたか」

「はい」

「千草で仇を討つとはつまり、リンだけでなく私、七咲一刀流の敵とも言えます」

「はい」

「せいぜいがんばることです。せめて、あの子と同じステージに立てるように」

「……はい」

 そのとおり、以外に言えることがない。


 紫織さんから見れば、どころか。海音さんからも氷空からも誰から見ても、今の私は口だけピエロ。お調子者の雰囲気を押し出していないぶん、救いようもない。口先だけ立派で真面目な弱者など、扱いづらいとしか言いようがない。


 それにどんな宣言をしたところで、黒鉄千草を相手取るには桜花女子との対峙、つまるところ京都の学校と戦えるJDS全国大会までのし上がらねばならない。

 庶民的な感覚だと、それは打倒黒鉄よりも高い壁に感じてしまう。


「気負うなよリッコちゃん。んなこと言ってるが、JDSに強者なんていねぇよ」

「海音、不用意な期待を持たせるのはやめなさい」

「コイツも鈴子も、私もだ。強者っつってもガキはガキ。想像の着膨れはすんな」

「……」

「リッコちゃんは大好きな先輩を見習え。きったねえ戦法はテメェらの特権だ」

「ありがとうございます、海音さん……紫織さんも」

 きっひっひと心強い笑顔。うん、やっぱ、海音お姉ちゃん大好きかも。


 私がお礼すると同時に、紫織さんは「用は済みましたね」とばかりに背を向け、真っ黒なステージにひとりで入ってしまった。「ほら、ただのクソガキ女だろ?」海音さんのフォローはうれしいけど、聞かなかったことにしておく。

 どう言い繕おうと私は、紫織さんの楽しい今日一日を邪魔した悪者だからねえ。ステージ内部からは外が見えないことを痛いほど知っているけど、それでも紫織さんに向かって一礼し、「ドレソやってこーぜー」と引き留めてきた海音さんを振り払い、氷空と一緒に練習場を、黒須第一大学をあとにした。


 帰り道。LRTは発車してしまったばかりで、待ち時間が長そうだったから、氷空と一緒にどこかでお昼ご飯を食べることにした。

 外は肌寒い冬風が吹いているが、お昼すぎの春の陽は身体をポカポカと照らしてくれている。世界が冷たくても、温かくしてくれる存在がいると、それだけでがんばれる。そういうホッカイロさえあれば、女子高生なんてがんばれる。


 休日の賑やかな繁華街に物静かに到着したとき、氷空が言ってきた。


「決心、できましたか」

 それは洋食か中華かの意味ではなく、私の復讐のことだろう。


「うん。予想的中だったね。黒鉄千草でズバリ大当たり」

 逃げるのにいっぱいいっぱいだったけど、目標は外れていなかった。


 黒鉄千草は、七咲鈴子さんの弟子。

 ならば、菖蒲先輩の弟子である私の仇。


 暴論であることは重々承知。それを分かっているうえで、私は自分勝手に菖蒲先輩の肩をずうずうしく抱き寄せて、一方的に組んだんだ。

 当の復讐相手が、私をドレソに引き込んだ白鳴と桜花のいいとこ取りのハイブリット選手だってのは余計な味付けだけど、それぐらいは甘んじてあげる。


 ただし。


「ぶっちゃけね、ここまで言っといて、私にできることなんてほとんどない」

「はい」

 問題の最難関は、どう考えても私だ。


「氷空と花、それに左にも。守るしかできない私はおんぶにだっこになっちゃう」

「はい」

 目の前の相手すらも倒せない私を抱えなきゃいけない、みんな。


「黒鉄さんに勝っても負けても、それ以前に対面すらできなくても、敗因は私」

「はい」

 仇敵と戦うために、他人の力を当てにする、どうしようもない復讐者。


「それでも、限界ギリギリの、ギリギリ端っこまで、助けてください」

「お任せあれ」

 一拍の間もなく、氷空が返事をくれた。


「……ありがとね氷空。ごめんね、ほんっとこんな先輩で」

「いえ。菖蒲さんがいて、律子さんがいたから。私は朝女で戦えているんです」


 あんまりにも男前な後輩すぎて、敬いたいやら、拝みたいやら、抱きしめたいやらで。うれしい感情がないなぜになりすぎて、表情は見せられなかった。


 負けたら私のせい。勝ったらみんなのおかげ。私の取り分は中身の入っていない「黒鉄千草に勝った」この一言でいい。この一言のために、みんなに無駄な気苦労をかけるのだから。そのためにはなんだってしてやる。


 だから、まずは、せめて。意気込まなきゃ。

 心の果たし状を一年ぶりに箪笥から引き出し、書き換えよう。



 そういうわけで、あらためて拝啓、七咲鈴子さま、と京町紫織さま。

 僭越ながらこれより、貴方さま方の後輩の黒鉄千草さまを(仲間の力で)全力でぶっ飛ばして、私が勝ったら笹倉菖蒲の勝利とするドレスソードの修羅になります。いいえ、ご納得は結構。ご理解も無用。貴方さまを含む周囲の方々が私のことをなにひとつ認めずとも、私の考えが無知で無様で滑稽と罵られようと、私の私怨による仇討ちのため一向にかまいません。そのうえで私、小技のリッコは、ダガープリンセスの弟子の黒鉄千草さまを絶対ぶっ飛ばすことをここに誓います。


 もし、この復讐が叶っても、あんたらはくだらない子供じみた子供話とでも言うがいい。それがたとえ笑い話にしかならなくっても、私が尊敬する彼女の人生の糧になるのならそれだけでいい。十分だ。だから成し遂げてみせましょう。


 あんたらがいくらドレスソードに愛されたヒーローじみた存在だからってなあ、こちとら女子高生だぞ! 普通の女子高生たちの無敵の理不尽さを舐めんなっ!


「倒すよ、黒鉄千草」

「はい」


 女子高生が四人も五人も六人もいれば、舞台なんてどうとでもできるんだ。

次回「鳴き止んだ鈴の音【エピローグ】」。

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