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敗北のドレスソード  作者: 手遊花
朝倉女子 一年生編
13/205

黒赤のブルーティッヒファング(3)

 システムボイスの合図と同時、朝女と黒須第一の八人が動き出す。

 こちらの戦術はこれまでと同様、ステージ左側から私、花、菖蒲先輩、恋子ちゃんの順に約8メートル間で並列している。ステージの横幅は18メートルだから、私と恋子ちゃんの外側には広い空間ができているけれど、私は盾で、恋子ちゃんはリーチで対応するからいい。スペースよりも仲間との距離のほうが大切だ。


 黒須第一の布陣は、事前の対戦表の並びからラウンド開始後に変えてきた。

 私の対面には狂剣ことクイーンで三年の天河海音、花には刀持ちで一年の新堂楓、菖蒲先輩には大剣小盾使いで三年の金森時乃、恋子ちゃんには変わった反りを持つショーテル使いで二年の丘町ゆゆが当てられた。各々がどれほどの選手なのかは私にはわからないけど、少なくとも流星館並……いや以上と考えよう。


 黒須第一のドレスはハイセンスな独特さがあり、ファッションとしての攻撃性もなかなかのものだ。上半身を包み隠すのは、全体の裾がまるで獣の牙のようにギザギザに尖っている、黒いショートマント。動くとチラリと見えるインナーは、両肩をセクシーにさらけ出す赤いホルターネック。ブラックレザーのホットパンツから伸びる、健康的な脚線美も羨ましい。インナーと同色の赤グローブ、ギラつく赤銀色のアーマー、真っ赤な光刃も添えて、黒×赤の危ない魅力を醸し出している。


 彼女たちがまとうそれは、有名デザイナーによって作り上げられたという黒須第一伝統のドレスで、ひとたび動けば上着の黒い牙が相手に噛みつき、真っ赤な口内を思わせる肢体が相手選手を食いちぎる――通称「ファング」と呼ばれている。  ……って花と恋子ちゃんが教えてくた。ドレスにも異名とか次元が違うわ。


 それにしても、目の前に並ぶ彼女たちのこの説得力よ。


 流星館と同様、黒須第一の選手たちには堂々とした迫力がある。

 ドレスもファッションショー級に作り込んでいる学校は、強さの自信がこうやって表出するのだろう。それがもし錯覚だとしても、私がやられ役からキャスティング変更されるイメージは持てない。面構えも佇まいもまるで別物だ。


 ステージ内には物音ひとつ届いていないけれど、黒壁の向こうにいる会場の観客たちはさぞかし盛り上がっているのだろう。犬vsネズミって感じでさ。


「花。一年の新堂は未知数だが、エストックのほうが刀より長い。生かせ」

「そのつもりです!」

「恋子。二年の丘町はお前の苦手な変則タイプだ。手数で狩られんな」

「がんばるよー!」

「リッコ。悪いが今から陣形は変えられない。海音にぶった斬られんな」

「だと思ってましたっ!」

「私が先に金森を潰すか、私らが先に潰されるか。クソみてえな条件だなおい」


 両チームがセンターラインに近づく。天河さんの姿も近づいてきた。


 遠目からでもわかっていたけど、自画自賛に違わぬキュートな上級生だ。ゆるっとふわっと巻かれたサイドテールがとってもガーリーで印象的である。

 でも……めっちゃ悪そうな顔つきでニタニタしている。当然、口も悪そう。二種類の対照的な素材が両立することなく、どちらか片方の印象が食いちぎってしまっている。菖蒲先輩と同じだね。口を開くか開かないかでモテ度が絶対変わる。


 まあ、当分は彼氏に立候補する人は現れないんじゃないだろうか。

 怪我じゃ済まない暴力を予感させる露悪的なドレスで、あの凶暴なまでに反りあがった分厚い片刃の大曲刀の峰を、両肩にかついで歩く姿を見るところ。


「悪いな一年坊。私は健啖だから、変わったやつが大好物でよ」

「これだけは言わせてください。悪食すぎるし大人げないです」

「きっひっひ! べつに穴狙いとかじゃねえから。ドレソのコンサートだ」

「コンサート?」

「お前の盾、いい音が鳴りそうだろ?」

「……私は太鼓の変わりですか」

「さといじゃん。シールドブロッカーなんて、絶滅危惧種だからなっ!」


 げえっ、たんまっ! 天河さんの挨拶代わりの一撃が飛んできた!


 それは最近の恋子ちゃんによくやられる、頭の後ろから半円を描いて振り下ろされる斬撃だった。血まみれに見える赤い光刃が、私の三角盾にぶつかる。

 いぎっ! こりゃしんどい! うちの可愛い処刑人よりはまだマシだけど、かといってそんなに違いはない。慣れたところで耐えがたい痛みは右手に走る。


 それに恋子ちゃんのソードである偃月刀の性質とは、悪い意味で違う。

 天河さんの大曲刀も豪快に振りきられているけれど、丸みを帯びた三角盾で受け流すよりも早く、独特な反りの刀身が盾を斬りつけながら滑っていく。そのまま返す刀で真横、斜め上、真上、下方向からの切り上げと連撃され続ける。


 私がこれまで磨いてきた、盾で相手の攻撃を受けて、流し、いなし、さばいて、次の一手をコントロールする術がなにも機能しない。私の未熟なずらす技術より、天河さんの曲刀による斬撃の技術が上回っている。そのくせ斬撃というのは衝突時は「点」だから、体の痛みと体力の疲弊を生む衝撃だけは欠けることなくきっちり届いている。自力もアドバンテージもすべて先を行かれた、最悪の相手だ。


 天河さんの攻撃が止まらない。私はただ構えて、耐えて、しのぐだけ。

 今はまだお遊びなのか、露骨にフェイタルは狙われていない。でも呼吸する暇すらなく、気持ちよさのままに盾を叩かれ続ける。ほんとに太鼓になった気分だ。


「きっひ! マジかてえ! 斬ってる手がこんなに早く痺れるのは初めてだ!」

「それでっ、も! まだ不公平だと、ぐぎっ! 思いますけどねっ!」

「わかってんじゃん! だから盾専門なんざ絶滅したんだよ!」


 一秒に一回は斬られていそうな暴力を前に、手足はすでに一日の練習終わりのときのそれである。振動で感覚が痺れ、衝撃は鈍い痛みとなり、骨の芯を削る。


 私は今、全国レベルの選手にひたすら斬られまくる哀れな一年として、逆に同情票を集めているんじゃなかろうか。みんなからの同情をご褒美にするほかないなんて、惨めさに涙が出てきそうだけど、そんぐらいもらわなきゃ割に合わない。


 といっても大丈夫。今はいい。存分に叩かせる。天河さんのお遊びを長くさせればさせるほど、私は役目をまっとうできる。後ろになんか退くもんか。もしも下がってしまえば、右手側にいる花の側面ががら空きになってしまう。花の対面にいる新堂さんにも、出過ぎた私にちょっかいをかけさせる気持ちでいく。半歩にも満たない前進でも、前に進め。それしかできない。反撃なんて甘えは通じない。


 進め律子。耐えろ律子。手を出せないのがどうした。それが私の本流だ!


「りっちゃんっ! う、くっ!」

「ボクを無視するのはダメでしょ。斬っちゃうよ?」

「っ……ペルセっ」

「うお、こわー。怖いなあキミ」


 花が相手をする新堂楓も、やはり一年生にして黒須第一のレギュラーか。

 花は右半身で突撃する全力の刺突技「ぺルセ」をかわされた。新堂さんはエストックの隙間をぬって花に急接近する。そのあとは見る余裕もなかったけど、花が今一度発したぺルセの音声は、新堂さんの「竜、巻っ!」の声にかき消された。


 ダメージ判定はどうなった。それは親切なドレスソードさんが教えてくれた。


【ピロッ――Damage Fatal.】


 ドレソのシステムボイスはこういうとき、シンプルかつ不便だ。死人に口なしとでも言いたいのか「誰がフェイタルになった」を教えてはくれない。


 フェイタル後は発声、妨害、退場の遅延行為を禁止されているのもあり、チームの誰かが目で見て、みんなに報告する必要がある。それをしないでいいのは、やった側だけだ。声を張るより、黙って挟撃に入るほうが有利に働くから。


 とはいえ、今の結末は菖蒲先輩の「リッコ気ぃつけろ!」の声でわからされた。そこまでイイ夢は見てなかったけどさあ、くそお! 旗色悪しかっ!


「気ぃつけろってぎゃ! 言われぐぎゃ! もー!」

「あっちの一年はスジいいな。あっ、お前の一年坊か」

「さんっざん人のこと叩いてるくせにっ!」

「悪かったって。あとで名前見とくよ。だからそろそろ――潰れな三下ァ!」


 天河さんの大曲刀が、重くなったのに速くなった。

 ソードの盾は基本的にはブレイクしないって話だけど、いっそ壊れてほしいと思った。壊れない盾のせいで、右手のほうが壊れそうなんですけど!


「どっひゃらー!!!」

「じゅびびびび!!!」

「ゆゆちゃん斬りい!!!」


 なんか恋子ちゃんのほうから変なキャピキャピ声も聞こえるしさあ!


 斬撃の方向に合わせて盾を傾けるのも難しくなってきた。今なら下がってもいいけど、下がったところでなにもないし、カウンターだって無理無理無理。

 バッサバッサと上下する黒コートがギザギザ牙に、真っ赤なホルターネックが温かな口内に見えてきて、「なるほどこれが獣に食いちぎられる感じかあ」と合点がいってしまったタイミングで、今までで一番強烈な縦斬りが叩き下ろされた。


 私の右腕はそれに耐えきれず、ガクッと盾ごと下げてしまい。


「いただきだ、盾娘っ」


【ピロッ――Damage Fatal.】


 赤い光刃が真横から飛んできて、私の上半身は真っ二つにされた。斬られた線がブルブルと震えて、これがスラッシュで済むダメージではないと告げている。

 退場の知らせと同時に、傷ひとつない盾と一度も抜いていない剣も消滅する。


 私は場に残った菖蒲先輩、恋子ちゃんを後ろ目に見ながら朝女のメイクオーバーエリアへと速やかに移動し、そこで待機していた花と合流した。


「りっちゃん大丈夫? ものすごい叩かれてたけど」

「ハァハァ、めっちゃ痛い。普通に恋子ちゃん級。もう痛いのなんの」

「後ろから見ててもすごかったよ。私だったら死んじゃいそう」

「私なんか死んでるよ」


 通常、メイクオーバーエリアの青い壁は不可視性になっていて、ステージ内部の様子は見られない。けれど、ラウンド中は花が試合観戦をしていたように一方通行で可視化されている。ステージの黒壁と同じ、マジックミラー的な感じだ。


 試合の様子は……私と花が落ちた2vs4の状況だもんね。天河さんと新堂さん、さらに大剣使いの金森さんが、三人同時で菖蒲先輩に挟撃を仕掛けた。

 いくら凄腕忍者でも奇策はないだろう。朝女のクイーンはすぐに落とされた。


【Queen Defeat……Round 1「黒須第一」……Make Over.】


「ちっ、あの金森って怪力女もやべえな。あいつら脳筋しかいねえ」

「すみません、私も花も抜けられちゃったから」

「黒須に、ましてや海音が抜けねえ一年がどこにいるってんだ。気にすんな」

「私の対面のゆゆちゃんも、うるさいし強いし抜けられないだけで精一杯かもぉ」

「あいつマジうるせえよな。顔も声も名前も全部うるせえ」


 酷い言われようだ。話題に挙がった二年生の丘町ゆゆさんは、私から最も離れた位置にいる選手だからステージ内で気を配る余裕がいっさいないんだけど、たぶんあれかな。さっき聞こえてきた、よくわかんない謎のキャピキャピ声だろう。


 それにしても、ラウンド1は順当に堅実な力負けというか、どう足掻いても覆そうにない力量の差を感じた。このままではどうにもならないだろう。それは私たち全員がわかっている。でも、都合よく菖蒲先輩を頼るのは虫がよすぎる。

 勝ちたい。勝ってほしい。そう願うだけの私が最も役立たずなんだから。


「ラウンド2は、なにかすべきことはありますか」

「やれることだけ全力でやれ。瀬戸際だが気負うな。負けて当たり前だからさ」


 菖蒲先輩は当然とばかりにそう言った。しかし、そこで花が反論した。


「……当たり前だからって、負けるのは嫌です! 私、勝ちたいです!」

「うおっ、まさかの花か。そういうこと言うのは意外だった」

「私自身も、そう思います」


 花の言葉は、私も素直に意外だった。勝ち気がないと思っていたわけじゃないけど、こんなにはっきりと勝利の意欲を口にするとは思ってもみなかった。

 ドレスソードをやる前の花なら「大丈夫かな。私大丈夫かな」ってワタワタしているのがらしかったけど、気づけばこの子はこれほどまでに変わっていたのか。


 人生初めての本気のスポーツで、勝ち負けのある世界を通じて、花はその気持ちを知ったんだ。花のファイティングスピリットがこんなに熱するなんてね。

 なんか、こんなときだけど嬉しくなってきた! 花がこんなことを口にする日が来るなんて! 私はいつの間にか幼なじみの成長に置いていかれてたか!


 花の成長には羨ましさすら感じるけど、気持ちは同じだから気にしない。

 私も勝ちたいから。その理由は、詳しい事情も知らない菖蒲先輩のためだけど、こんなにも負けたくない。ひとつでも先に進めるよう勝ちたいって思っている。


 私たちは理由や方向がバラバラでも、その熱量にウソなんてない。


「花ちゃん……そうだね、うん! 菖蒲ちゃんもまだ負けてないんだからさ!」

「恋子もマジか。勝手に青春してんなあ……リッコも?」

「とーぜん! あんなイカしたドラマを見せられてオメオメ負けられません!」

「言うなよ恥ずい。まあ、そこまでやる気あんならしゃあねえ。全力でいくか」

「全力ですか。つまり、あれを、やるんですね」

「いまさらブレーキ踏むかよ。全身全霊で砕いてやる」

「菖蒲先輩。さすが忍者です」

「なにがさすがなんだよ」


 菖蒲先輩が笑って、私たちも笑った。これから朝女は天河海音をぶっ飛ばし、あとで七咲鈴子もぶっ飛ばす。そのついでに全国制覇でもしちゃおうか。

 朝女ドレスが日本の女子高生たちの天下を獲るんだなんて、なんて甘美で意地の悪い妄想なんだろう。進む先の壁の大きさなんて、知ったところでなんだ。


 どこまで行っても、あっち側に行けなくても、こっち側の女子高生を舐めんな。


「いつもどおりだ。顔面からぶっ飛ばしてやれ」



【Lady to Ready……Round 2…………On Stage.】



 このラウンドで、黒須第一はまたもや布陣を変えてきた。

 今度は、菖蒲先輩の対面に天河海音、私の対面に(怪力女らしい)金森時乃が当てられた。菖蒲先輩がクイーン同士で決着をつけられるようになった。そう考えれば転機と言えるけど、逆に難しくなったとも言える。ようは誤差の範疇か。


 なんにせよ、まだ絶望していない自分に気づけた。それだけで御の字だ。


「リッコ! 今度は遊ばれると思うなよ!」

「わかってます!」

「……うちのクイーンが随分と失礼したみたいで」


 向こうのほうから「きっひっひ!」と、あの人の笑い声が聞こえてきた。


 金森さんはウェーブがかったブラウンヘアが大人っぽい上級生で、怪力女と呼ぶにはあまりに無礼すぎる……かと思ったけど、両手で持っている幅広の大剣を一目見れば撤回する気も失せる。ソードの長さこそ、うちの朝女一可愛い処刑人には及んでいないけど、赤々と輝く光刃の厚みは、偃月刀よりもありそうで。

 これまた大根十本分の逸品だろうなあ。ついでに私は大太鼓の役だろう。


 もうひとつポイントになるのは、左ひじあたりに着装している「小柄な円盾」だろうか。原則、大物系のソードは「武装率」と呼ばれるレート制限の都合上、二つ目のソードを持つのは難しいらしいが、うまく大剣の長さやパーツを削っているみたい。現に彼女の大剣には鍔がついておらず、槍のようにむき身の形状である。


「悠長はしません。潰れてください一年生」

「そんなんだからドレソに新しい子が入ってこないんですよっ」

「まったくです。残酷なステージのせいにいたしましょう」


 みんな盾を見ると、思わず全力で叩いてみたくなるのかな。金森さんも例に漏れず、幅広大剣を両手でガシッと握り、両肩をぐるっとぶん回し、全力の斬撃を叩きつけてきた。まるで鉄のハンマーで殴りつけられたかのような音が響いた。

 ぐぎぎぎ! 顔がゆがみそう! 骨までジーンと伝わるこの痛みは、恋子ちゃんの全力斬りとほぼ同等だ。めちゃくちゃ痛いよう。だけど初めてじゃなくてよかったよう。三か月間の痛ましい過去に感謝はしたくないけど、痛くて座り込んでしまわないだけ、ぶっ叩かれ続けた日々の経験がちゃんと役に立っている。


 金森さんは天河さんほど連撃を仕掛けてくることはなく、一発一発を慎重に当てては、効果を確認しながらフェイタルまでの予測を立てている気がする。

 なんとなくの悪寒だけど、実験動物を見る目つきで観察されている気がするのだ。さっきと同じく、甘えた瞬間にフェイタルされると思ったほうがよさそう。


 彼女の一撃は天河さんよりも重いものの、動く暇があるだけ対応しやすい。今回も花への突入路を開けてしまわないよう、大剣を受けては前に一歩進み、すり足で左右後方へ半歩移動しては体の重心をずらしていく。金森さんに対して私が許されているのは、そんくらいの心もとないスペースのやりくりだけ。

 シャキンと抜いてグサッと刺すのは無理。一秒の延命をもぎ取るだけで限界だ。


 頭頂部から殴りにつけるように振り下ろす。ガキン! ぐうえっ!

 上半身と腰をしならせ胴斬りをぶちかます。バキン! いぢぢぢっ!

 盾にはじかれた反動を生かし三連撃。ガンガンガン! 痛い痛い痛い!


 それほど遠くないうちに、また右手ごと持っていかれそう。これ盾受けの痛みだけでスラッシュいっちゃうんじゃないの? それか骨折が先じゃないの?

 いくらスラッシュがかかろうとも、致命的な一撃さえもらわなければフェイタルには達しないルールだけど、そんな状況に持っていけるほど都合よくないか。


 斬撃を避けようにも、合気道のように相手の体の内に入るわけにはいかないな。近づいて体をぶつけるとペナルティがあるからね。そんな私に許された回避の最終手段なんて、地面に体ごと投げ出すくらいだ。やったら、あとはないだろうが。


 体重ごと叩きつける金森さんの強烈な横振りに耐えたとき、右後ろのほうから苦渋のうめき声が聞こえてきた。ソードをソードで払われているような軽い剣戟の連続は、花に危険が迫っている証拠か。今の私には助けることはできないけれど。


「忍法……アヤメ砕きっ!!!」


 こういうときこそね、うちの忍者は性格悪いんだよっ!

次回「黒赤のブルーティッヒファング」(4)。

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