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苦悩のローラーコースター  作者: 立蛇志九絢子
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7話 父親

 十一時五十分、参加者の一人である山藤豊が自分の武器であるH&KUMP九短機関銃を手に持っていた。予備のマガジンも持ち、自分のコテージを出て、ある人物のコテージへ行く。

「殺さなければ妻と子ども達に会えない……」

 独り言を呟きながら目的のコテージに着いた。

 ターゲットは老婆である有島花子であった。彼女はベランダで抹茶を点てて飲んでいた。

 山藤は携帯の時計を見る。

「十二時二分か……」

 呟いてベランダに近づいていく。マイは玄関からしか入れないとは言ってはいなかったので気付かれない様にベランダに上がる。

 ターゲットの有島に近付いて行くと、ゆっくり振り向いてしまった。

「つっ……」

 山藤は手に持ってる短機関銃を背後に隠した。

 有島は茶碗をゆっくり置き、喋った。

「あの話を信じるみたいですね。別にそれでも良いですよ」

 山藤は有島の話を聞いていく。

「私は、ここに来る前は夫と暮らしてきたのよ、息子夫婦と孫が遊びに来て幸せな生活でした」

「けど、夫は病気で死んで、後を追うかの様に息子夫婦達は車のあおり運転の事故に巻き込まれて死んだのよ……」

「……」

 有島の話を聞いて少し暗い雰囲気になってしまった。

「でも私みたいな年寄りよりあなたみたいな未来のある人が生きるべきだと思いますよ」

 有島の話が終わり、彼女は後ろを向いた。まるで殺してもいいですよ、と言ってるみたいだった。

 せめて苦しまない様に一撃で殺そう。

 山藤は短機関銃を彼女の頭部に構え引き金を引いた。

 銃声が響き引き金を引くのをやめ、銃口から煙がゆらりと出た。

 有島は頭部から血を流し倒れた。首元を触り脈を測る。

「……死んだ、俺が殺した……」

 視線を逸らしボソッと喋る。

 その場から離れるため死体はそのままにしベランダを下りる。

 自分のコテージへ戻るため歩いて行くと何処からか銃声が鳴り響いた。山藤は何が起こったのか分からないまま目の前が暗くなり、倒れてしまった。



 スーパーで浩輝達は携帯のメールを見ていた。

[有島花子死亡確認、享年七四、死因射殺]

[山藤豊死亡確認、享年四三、死因射殺]

「本当に……死んだのか……?」

 浩輝はメールの文章を疑った。

『本当だよ』

 飲み物フロアの品が出てる冷蔵庫の上にケイとマイがいた。ケイとマイは浩輝達の元に下りて来た。

『証拠に写真があるよ、ほら』

 マイは二枚の写真を浩輝に渡した。

 一枚目は有島がベランダで射殺された写真、首輪が外されていたが不自然な痕が残っていた。

 二枚目は山藤が道で射殺された写真、首輪は外されていたが不自然な痕は無かった。

 死体が写された写真を見て気分が少し悪くなった。

『ちなみに有島さんは生前夫は病死、息子夫婦と孫は車のあおり運転に巻き込まれて死んだって言ったのよ』

「つまり生き残ってても一人身だと言いたいのか?」

 達之は少しうつむきながらマイに問う。

『そう思うだろうな、有島の息子夫婦と孫の事故は本当だが夫の病死は違う』

 ケイの発言に浩輝達は戸惑う。

「どういう事だ、違うとは?」

 浩輝はケイとマイに問う。

『有島は七七の夫がいたが老老介護をしなければならない状況になった、息子夫婦に迷惑かけない様に、一人で夫を介護をし続けた、しかし一人で抱え込みすぎてストレスが堪っていった。

 ある日介護に疲れ、ベッドに眠っている夫の首を絞めて殺害した、愛する夫を』

『そして息子夫婦と孫はその事実を知らずに事故に巻き込まれた』

 ケイからとんでもない事実が話されて浩輝達は言葉が見つからなかった。

『驚くのはまだ早い、山藤は子どもが二人いる妻子持ちの男だった。まじめに働く父親でもあった。

 しかしリストラにあい仕事が無くなってしまった、今までの生活ができなくなってしまった、生活苦に一家心中をはかった』

「……どちらが殺したんだ?」

 達之はケイとマイに問う。

『山藤さんが有島さんを殺害したのよ、山藤さんは生きている参加者に殺害、あなた達以外の誰かにね』

 生き残りたいという気持ちはとても良く分かる、俺がそうだが殺害して生き残りたいとは思えない、全員で生きてゲームを止めたい。

『あー、死んだ奴らが生き返るみたいな奇跡は起こらないからな』

 ケイの発言を最後にケイとマイはいなくなった。

「……くそっ、ゲームが始まってこれで三人死んだ」

 達之は最初の犠牲者の大杉を含む三名の死を悔やんだ。

「……達之お兄ちゃん、私達どうなっちゃうの?」

 友里ちゃんが泣きそうに達之に言う。

「……俺にも分からない、殺し合いは止めていきたいが全員がそう思ってはいなかったみたいだ、また誰かが生きてる参加者を殺していくと思う」

 達之は胸骨のあたりに右手を置きながら喋る。

 暗い空気の中浩輝は携帯の時間を見る。

「十二時六分か、昼食食べないか?」

 浩輝は空気を変えるために提案する。

「そうだな……スーパーに居るままでは何も始まらないからな、よしスーパーの食品で皆が食いたい昼食選ぼうか」

 達之は浩輝達にそう話してこの場にいる四人とスーパーの食品を見る為に移動する。

 浩輝は昼食だけでなく、カゴを持ってきて飲み物フロアの水とウーロン茶、冷凍品フロアではチャーハン二袋入れた。

 レトルト食品のフロアへ行き、紅茶一箱入れて、パン等があるフロアへ行く。

 牛乳があるフロアで一本入れて、おにぎり等があるフロアへ行き、食品を調べ海鮮丼を昼食にするため一個入れる。

 レジに行くと皆もう終わっていた。浩輝はレジで袋を手にし袋に食品をつめる。

「結構あるな、安達……」

 達之に少し驚かれた。

「まぁな、昼食だけじゃなくて飲み物なんか買っておきたかったからな」

 達之達と一緒にスーパーを出る。


「よし、全員気をつけてコテージに戻るんだ」

 達之の一言で友里ちゃんと長岡は自分のコテージに戻っていく。

「安達も気をつけろよ、じゃあな」

 浩輝は達之達と一端別れ自分のコテージへ戻っていく。

 誰かに襲撃されるかもしれないと考えながら戻って行った。

 自分のコテージに着き鍵を開けドアを開く。

ゲーム参加者武器

山藤豊:短機関銃(H&KUMP九)


死亡

山藤豊(享年四三 何者かに頭部を撃たれ射殺)

有島花子(享年七四 山藤に短機関銃で頭部を撃たれ射殺)

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