64話 生きるに値しない命
石井薫=[prototype]という洋ゲームの[アレックス・マーサー]をイメージ
石井光=特にイメージ無し(あえて言うなら目等薫に似ている)
石井薫、黒髪短髪の男性。石井光、黒髪ミディアムの女性。
「……何で……あんたが……」
浩輝は不機嫌な表情で喋る。
「ちなみにこいつは妹だ」
ケイであった石井薫は、隣のマイであった石井光に親指で指す。
「安達君、まずこの仮想空間の事を説明するわね」
石井光が笑顔で喋り始める。
「元々これは、cckeo計画から始まった。【condemnedcriminal killing each other】犯罪者殺し合い、という意味よ。元々この国は、犯罪者が沢山いる。無期懲役や死刑にならない囚人がいる」
「そして、囚人の数を減らすために、pkシステムを作り上げた。【prisoners killing each othe】囚人殺し合い、という意味だ。このシステムを使い囚人の数を減らしていった」
石井兄妹が説明している。
「……俺達は囚人だったのか?」
浩輝は達之達の遺体を見ながら、静かに喋る。
「違うわ、そのシステムを応用させて作ったのがこの世界、囚人達にやらせるのはこんな自由度は無いわ」
「sakシステム【suicide attempt killing each pther】自殺未遂殺し合い、という意味だ。この世界はsakシステムの世界である」
……俺達は死んだ存在と仮説を立てたが、自殺未遂とは立ててなかった。
「……何故、俺達をこんなシステムを利用して殺し合いをさせた?」
浩輝は不安な声で二人に喋った。
「生きるに値しない命だから」
薫が冷たい目つきで痛烈な言葉を放った。
「この国は自殺が多い。色々な理由がある、いじめ、老老介護、生活苦等様々だ。政府はせめて、自殺未遂者に[生きる]という事を教えるためにこのシステムを作らせた」
「……達之と木村は現実では、何があったんだ?」
浩輝は亡くなった二人の事を問う。
「木村さんは学校でのいじめで薬でオーバードース、押田君は将来を苦に薬でオーバードース、もちろん自殺未遂ね」
……二人共……
「ちなみに、今お前らは研究施設に居る。もう目覚めないが」
……何だと!? 浩輝は動揺する。
「全国の自殺未遂者をそれぞれの施設に収容されてゲームをやってるわ。本人の同意無しでね」
光がにっこりと笑う。
「あなた、夢を見た?死体が沢山出てきた夢」
何故こいつが知ってると思いながら、
「……それがどうした」
浩輝の反応を見て薫が笑った。
「あれはな、お前が殺してきた人間だよ」
「……俺が?」
「お前は十六歳からこの世界にいる。人生に絶望し、自室でナイフで両足を刺し、腹を刺し、自殺未遂をした」
……嘘だ……嘘だ……、三回も繰り返していた……?
「まぁ、記憶をいじったのは本当、いろんな人をいじったわ。押田君は妹さんを助けて義手になった。実際は、身体完全同一性障害でアームカットをした」
浩輝は次々出てくる真実に吐き気がしてきた。
「この国は沢山人がいる、障害有り無し関係なく。お前らは精神的に問題があって自殺未遂をした。
国にとっちゃ、[生きるに値しない命]なんだよ」
薫が止めを刺す様に浩輝に放った。
浩輝は精神的にも肉体的にも追い詰められてボロボロだった。虚ろな目になり、頭がクラクラする。
……多くの死が頭の中に流れる。死にたくないと思いながら殺す俺、笑顔で楽しんでるかの様に殺す俺、無関心に殺す俺、多くの人間をこの世界で殺していった……。
「あの夢は過去のあなたでもあるわ」
光が冷たく喋った。
「んじゃ、またゲームリトライって奴だ、このゲームを終わらせると言ったが現実に戻れるとは言ってない」
薫がそれだけ喋って二人は消えていった。
「このゲームは嫌だ……殺せ……殺してくれーー!!」
浩輝はただ一人残され、絶望し、たった一人悲痛に叫び続けた。