62話 絶望
浩輝は血を流して倒れてしまった二人の元へフラフラの体で行く。
「……木村、しっかりしてくれ!」
浩輝は血を流している木村の上半身を両腕で支えて呼び掛ける。
「安達……君、無事で……良かった……」
木村は自分の事より、浩輝の事を心配してくれた。
「……俺の事はいい、すまない……君を……こんな目に……」
浩輝の視界が少しぼやけている。
「……私……あなたに会えて……良かったです……」
木村は涙を流している。浩輝の右ほほを触りながら弱い声で、
「安達……君、生き……て……」
木村は小さな声で喋り、腕がゆっくり落ちていって、地面に落ち、木村は静かに目をつむり、動かなくなってしまった……。
「……木村?、木村ーー!」
浩輝の両腕の中で木村は亡くなった。
浩輝は木村をゆっくりと地面に寝かせた。
「……俺のせいだ、俺が外に出てみたいなんて言わなかったら……」
浩輝はまだ温かい木村の右手を握って弱く喋る。
「……自分のせいにするなよ……安達……」
浩輝は達之の元へ行った。達之も血を流している。両腕で上半身を支える。
「達……之、ごめん……」
浩輝は泣きながら謝罪する。
口から血を流しながら、達之は浩輝の顔を見ながら、
「俺……こんな世界に……来てしまった……けど、……お前に会えた……のは間違い……じゃない……。俺……に、自分を……もっと大切に……しろ……と言ってくれて……嬉しかった……」
達之は苦しそうに笑って喋っている。
「安達……お前は……生きろ……こんな事……もう起こさない……ためにも……」
瀕死状態の達之が笑顔で喋る。
「……俺……、達之が居たから……頑張れたんだ……、死なないでくれ……お願いだ……」
浩輝は達之の左手を握りながら、達之の顔を見る。
「……いつか……優衣に……会ってくれ……、そして……この事を……話して……くれ……」
達之は最後の力を振り絞るかの様に浩輝に喋り、浩輝に優しい笑顔を見せて、目をつむり、力無く動かなくなってしまった。
「……おい、達之……?達之ーー!」
浩輝は大切な人を殺され、悲しみに溺れてしまい、二人の遺体の側で泣き続けた。