58話 覚醒
ピッピッ……不愉快な電子音が聞こえてくる。
布団に入っているかの様に温かく、両方の手も温かく感じた。
ゆっくりと目蓋を開いていく、視界がぼやけている。
……ここは何処だ?、視界が少しずつはっきりとしてきた。
浩輝の両方の手を握っていたのは、達之と木村だった。
「安達!俺達の事が分かるか?」
達之は必死そうな表情で浩輝に問う。木村も心配そうな顔で見てくれている。
「……達之と木村?」
浩輝は小さな声で弱く二人の名前を喋った。
「安達君……、目を覚ましてくれて、良かったです……」
木村がうれし涙を流した、彼女の涙が浩輝の左手の甲に落ちた。
……二人共、俺を心配してくれてたのか。
少しずつ意識がはっきりとしてきた。
「俺は……どれ位眠ってたんだ?」
ベッドの上に寝ながら、達之達に弱く喋る。
「二日位は眠っていた」
達之がそう答えてくれた。
浩輝は眠っていた間何が起きたのか質問する。
「木村……、眠っている間何か起こったのか?」
木村に問うが、彼女は悲しそうな表情で喋り、
「渡辺さんと、西岡さんと、小川さんが亡くなりました……」
……友里ちゃんが殺された? 信じたくなかった。
「安達……、一時お前危なかったんだぞ。苦しそうに呼吸してたから、……正直、もう見たくない、見てる事しか出来なかったから……」
達之が力の無い表情で喋った。
「そうだったのか……、心配かけて悪かった……」
浩輝が弱く二人に謝った。
「……お前が起きてくれて良かった。また会えて……本当に良かった……」
達之が泣いている、始めて二人の涙を見た。
浩輝は二人の為に、弱く微笑んだ。