37話 バトルロワイアル
浩輝達がスーパーに来る前、十一時三七分の事である。参加者の一人山崎幸恵が、短機関銃と散弾銃を装備してスーパーへ入った。
「誰がいるかな、誰がいるかな」
山崎は嬉しそうに店内を調べていく。
パンコーナーへ行くと、佐藤智枝美が買い物をしている。山崎には気付いていない。
山崎も佐藤がどんな武器を持ってるかも分からない。
近付いていき、短機関銃の引き金に指を置く、引き金を引こうとした瞬間、佐藤が振り向いた。さすがの山崎も一歩下がる。
「あんた……、私を殺そうとしたの!?」
佐藤がカゴを離して山崎を疑う。
「そうよ、あんたを殺して生き残る!アニメを待っている視聴者様のために、私は生き残らなきゃいけないのよ!」
山崎は右手に短機関銃を持ちながら、はしゃいだ口調で喋る。
「ふざけないでよ……、私も愛する夫のために生き残らなきゃいけないのよ!」
佐藤は自身の武器三徳包丁を右手に持って山崎の顔を睨みながら喋る。
「包丁、そんなので私を殺すの?」
山崎は佐藤の武器を見て、馬鹿にする様に笑った。
「人には可能性って物があるのよ!」
佐藤が山崎に大きく睨みつけながら喋り、三徳包丁を構え、山崎に突っ込んできた。
佐藤は意外と速く、山崎は狙いをつける事が出来ないまま、山崎は左腕を刺される。
「痛っいわねーー!」
山崎は刺された痛みに耐え、こわばった視線で佐藤の右足を狙い、短機関銃の引き金を引いて撃つ。
「あぁっ……!!」
佐藤も撃たれた痛みで悲鳴を上げる。
「ハァ、やるじゃない……」
山崎の攻撃で左膝を床につきながら、佐藤は痛みに耐えながら山崎を褒める。
「あんたもね……、けど私は勝つ!」
山崎も佐藤を褒め、左腕の痛みに耐えながら引き金に指を置いて発砲する。
やはり、刃物と銃という違いがあるので山崎優勢の状況になってしまう。
佐藤は右足を撃たれ、左足も撃たれて床についてしまった。
「ハァ、まずいわ……」
小声で佐藤は喋り、少し焦る。
山崎も左腕を刺されている、山崎は床についてる佐藤に短機関銃を構え近付いて、狙いを定めると、
「この距離なら、まともにくらうわね!」
佐藤は隠し持っていたトマホークを右手で持ち、振りかぶって山崎の首元を攻撃する。
上手くあてれた様で、左首筋から血が流れてきた。
山崎は出血でうまく立てなくなってしまい、床に膝をつく。
山崎は首から出血してる中、佐藤の左胸を狙い発砲した。
「うっ……!」
心臓を狙われたが逸れた様だ。
山崎は佐藤に止めを刺す事ができないまま、パンコーナーの台の近くで仰向けで倒れ動かなくなった。
佐藤も限界だった。目の前がおかしくなり、床に倒れてしまい動かなくなった。
……女達の手に汗握る戦いは終わった。
浩輝達は、現場を見ながら携帯のメールを見ていた。
[山崎幸恵死亡確認、享年二三、死因首元を攻撃され出血多量死]
[佐藤智枝美死亡確認、享年二六、死因両足左胸を撃たれて射殺]
「この場で何があったんだ……」
達之はメールを見て現場を見ると、
『凄かったよー』
ケイとマイがパンコーナーの台の後ろから出てきた。
『今回の殺し合いで今の所一番凄かったと思うよ』
マイはうきうきしながら喋る。
『山崎はアニメーターだ、奴は仕事人間だった。この国はアニメ文化が凄い国だ。しかし、アニメーターの給料はどうだ?低給料で段々鬱になり、過労で普通の判断が出来なくなってしまった。そして、自宅のアパートから飛び降りた』
「……」
浩輝は何も言えなかった。アニメは好きだが、アニメーターの問題の事はあまり考えていなかったから。
『佐藤は二八の夫がいる、子どもはいなかった。夫からのDVがあった、殴られDVに耐えていたが、この現実から逃げるためにアパートのベランダから飛び降りた』
……俺達は現実では死亡している存在説がもっと深まってしまった。
『お前ら買い物するんだろ?一端スーパー出ろ、死体処理しとくから』
ケイは浩輝達に身を乗り出しながら喋る。
「……一端出ようか安達」
浩輝と達之はスーパーを静かに出た。
死亡
山崎幸恵(享年二三 首元をトマホークで攻撃され出血多量死)
佐藤智枝美(享年二六 両足左胸撃たれ射殺)