32話 厚意
木村と別れ、達之とコテージに帰って行く。達之は何かを悩んでいる様子でとても静かだった。
「達之……」
浩輝はとても心配だった。達之も浩輝と同じく悩みを一人で抱え込んでいる様だったから。
「達之!」
浩輝は一端立ち止まって大きく喋る、達之は浩輝の言葉に少し驚き一端止まって浩輝の顔を見る。
「達之も一人で色々抱え込みすぎだ!、あの時俺に、悩みは俺に言え、って言ってくれたじゃないか!、あの時俺を助けてくれた、今度は俺が達之を助ける番だ!、俺は……お前が必要だ!!」
いつもの浩輝とは思えない大きな声で喋ったので、達之は目を見開き、悲しげな微笑みをする。
「安達……、お前は優しいな。俺なんかのために、そこまで思ってくれてたのか」
「俺なんかのため……?そんな言葉使うなよ!自分をもっと大切にしろよ!自分を信じろよ!俺に希望をくれた達之に戻ってくれよ!」
浩輝は涙は流してはいないが、怒りと悲しみの感情が混ざった様な感覚で達之に叫ぶ。
達之は浩輝の願いが届いたのかは分からないが、
「……ありがとう、浩輝」
達之が始めて浩輝と呼んでくれた。俺も悩みを浩輝に喋っていいのか、と言っているかの様に微笑んだ。
二人はこいつになら相談できる、と思いながらそれぞれのコテージへ帰っていった。