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苦悩のローラーコースター  作者: 立蛇志九絢子
29/65

29話 残されていく者達

 十二時五十分、長岡はレストランで昼食を終えて図書館へ行こうとしていた。

「ユリチャントエホンヨムヤクソクヤクソク」

 長岡は友里ちゃんに会う約束をしていた様だ。

 図書館に着いて入って行く。


 絵本のフロアで待ち合わせをしている、しかし友里ちゃんはまだ来ていない。

「ハヤカッタカナ……、エホンイガイノフロアイコウ」

 長岡はなれないフロアに行ってみる事にした。

 本棚に近付き本を取ろうとしたら、ガシャッと変な音が聞こえた。

「エ、ナニ?」

 長岡は本棚を背に向けて見てみる、誰が狙っていたか分からないまま、長岡は頭部を撃たれて本棚に背中を向けたまま倒れて動かなくなった。



 浩輝達は長岡の殺された本棚の近くにいた。

「何で、何で由貴子お姉ちゃんが殺されなきゃいけないの!?」

 友里ちゃんは怒りと悲しみで泣いていた。

 達之は泣いている友里ちゃんのそばにいてくれている。

「酷い……、何でこんな事に……」

 木村は長岡の遺体を目を逸らしている。するとある事を喋り始める。

「彼女に学校に行ってるか質問しましたよね」

「あぁ、疑ってる事があると言ってたよな、どういう事だったんだ?」

 浩輝は胸が痛みながら木村に問う。

「彼女、現実世界では虐待されて学校に行かされていなかったのではないでしょうか」

 木村の発言で浩輝は驚いた、確かに十五歳にしては年齢が幼く感じて、腕にあざが見えていた。

『正解です』

 違う本棚の上にケイとマイがいた。浩輝達の元に下りてきた。

『木村さん、なかなか鋭いですね、さすが看護学校生です』

「……あなた達に褒められたくないです」

 木村は悲しげな表情でケイとマイに喋る。

『長岡は十五歳は本当だが、父親が虐待クソ野郎であった』

 浩輝は心の中で、お前が言うなとツッコむ。

『毎日風呂場で水攻めされ、殴られ蹴られると暴行を受け、ある日ドアノブを利用して首を吊った』

「……何?」

 浩輝はケイの風呂場で水攻めという言葉を聞き逃さなかった。

 ……もしかして、俺の見てる夢は……。

『安達君、少しずつ分かってきてるかもしれないわね』

 マイが浩輝の様子を見て関心を持つ。

『死体処理するから、一端全員図書館出ろ』

 ケイは浩輝達に身を乗り出しながら喋る。

「……待って、由貴子お姉ちゃんの拳銃ある?私が持っていたい」

『あるぞ、加害者は武器を取ってなかったからな』

 ケイは長岡のポケットから拳銃と予備のマガジンを取り出して友里ちゃんに渡した。

 友里ちゃんが拳銃を持って浩輝達は図書館を一端出る。


 外に出て友里ちゃんはコテージに戻っていった。浩輝、達之、木村と三人で図書館の外にいる。

「二人共、話しておきたい事がある」

 浩輝は真剣な顔で二人の顔を見る。

「俺はある夢を見ている。誰かの声が暗闇から聞こえ、ある時は少し映像が流れる。ケイが風呂場で水攻めと言っただろ?、誰かが水攻めされてる様な音が聞こえたんだ、もしかしたら……」

 浩輝が答えようとしたら達之が腕組をし真剣な顔で、

「長岡だったかもしれない……、そう言いたいのか?」

「あぁ……」

 浩輝はうつむきながら答える。

「安達が見てる夢は、現実での俺達かもしれないのか?」

 達之は真実を言ってる様な感じだった。

「いや……確定した訳じゃない、分かる声は友里ちゃんの声だけだ、達之と木村の声は今の所聞いていない」

 浩輝が喋り終えると、木村は悲しそうな表情で、

「渡辺さんは、現実では何があったのでしょうか……」

 三人で浩輝が見てる夢の事について悩んでいると、

『お前ら、もういいぞ。死体処理は終わって本棚も床もきれいになった』

 ケイとマイがベンチの近くにいた。ケイが一言喋りいなくなった。

 浩輝は長岡から貰った黄色い花の折り紙を出し、右手でつかんで、

「この花が遺品になってしまうとは……」

 浩輝は長岡が一緒にいたという事を思い返し静かに喋った。

 浩輝は折り紙を鞄にしまい、三人で静かに図書館へ入った。


死亡

長岡由貴子(享年十五 死因頭部をライフル銃で撃たれ射殺)

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