18話 達之の家族
浩輝達が集中して本を読んでいると、
「お兄ちゃん達~、ご飯食べに行こうよ~」
友里ちゃんが読書スペースまで来て呼んできた。浩輝は携帯を見る。
「こんな時間になったのか、よし、行こうか」
浩輝達は立って元の本棚に本を戻していった。
戻ってきて浩輝達は図書館を出た。
雨はやんでいた、小川や影山に襲われる事無く着き入って行く。
店内には雅也が一人でおこさまランチを家族席に座って食べていた。
雅也が浩輝達に気付き、
「兄ちゃん、一緒に食べよー」
雅也が呼んでくれた。もう大丈夫なのか? そう思いながら浩輝達は席に行き座った。
それぞれ注文して約一分で机の上に出てくる。野村さんがもういない中浩輝達は食べ始める。
「……兄ちゃん俺、あいつを……」
雅也が今まで見せた事が無いくらいの表情で小声で喋り始め、
「……駄目だ」
達之が雅也がこれから言うはずの発言を先読みするかの様に冷静に喋った。
「……何で分かったの?俺が言おうとした事を……」
雅也は達之をじっと見つめながら問う。
「……勘だ」
達之の答えはシンプルだった、答えを聞いて雅也は口をぽかんと開ける。
「いいか中村、お前が殺人なんてしたら野村さんは悲しむぞ、野村さんはお前が生きてほしいから守ってくれたんだぞ、生きろ、それが一番の報復だ」
達之の言葉に雅也は静かになり食べ終え店内を出た。
雅也が店を出たのを見てから友里ちゃんは、
「達之お兄ちゃんかっこ良かったよ」
友里ちゃんは目を輝かせながら喋る。友里ちゃんの発言の後に長岡が頷く。
「ありがとう、あいつは影山に復讐しようとした様だしな、俺だって気持ちは分かる、殺害する事は報復になるが亡くなった人が戻ってくるわけでは無いからな」
達之がかなり大人な発言をして喋り終え食事を続ける。
友里ちゃんと長岡が先に食べ終え店内を出る。
「……これから先、まだゲームは続くのでしょうか……」
木村が紅茶の入ったティーカップのつかみを握って喋る。
「……あいつらは俺達が最終的に二人までになるまで終わる事はできないと言ってたからな……」
達之は窓の方を見ながら悲しげな表情で喋った。
達之が少し弱気になって喋るのに浩輝はやや寒気を感じる。
会話を終え三人は店内を出る。
木村と別れ浩輝と達之はコテージへの道を歩く。
「なぁ達之……」
「ん?何だ?」
浩輝は達之に質問をしてみる。
「お前……家族はいるのか?」
「……いるよ、両親と十七歳の妹が」
達之は妹がいるのか、こんな世界に来てしまって寂しくないのか?
「会えなくて寂しくないのか?」
「……寂しいさ、ゲームを終わらせて妹に会いたい、その時はお前にも会わせてやりたい」
達之は夜空を見上げながら何かを思っている様だった。
「俺は……両親がいる、一人っ子だ、兄弟がいると言う事がいまいち分からん、どんな感じなんだ?」
「まぁ俺の場合、喧嘩は少ししかやらなかったぞ、大変だけど居なきゃ生活がかなり変わる」
そうなのか……、兄弟がいるという事が少しだけ分かってきた。
達之と別れ自分のコテージへ向かい夜道を歩く。
コテージに着き、鍵を開けてドアを開く。
電気を点け、二階に上がりパジャマとパンツを準備して日本刀と鞄を置いて一階に下りる。
脱衣所の棚にパジャマとパンツを置いて風呂を沸かす。
「小雨だったとはいえ、雨は本当に降ってきたな」
天気予報は本当の事を流していた、俺達を騙す事はしなかったな。そう思いながら風呂が沸くのをリビングで待つ、テレビをつけ明日の天気を見る。
「明日は晴れか」
浩輝は鞄から出した飴を一袋とってなめる。
風呂が沸き飴をなめ終え袋を捨ててからテレビを消し脱衣所へ行く。服を脱ぎ風呂場に入る。
イスに洗面器でお湯をかけ体にもかけてタオルでゴシゴシ洗いシャワーで流す。髪を洗い、洗顔してシャワーを流す。風呂に入りお湯に浸かる。
「……どうすれば今生きてる全員助かるのか……」
小声でお湯に浸かりながら呟く。
しばらく浸かり風呂場を出る。棚にあるバスタオルを取り体と髪を拭く。
パジャマに着替え洗面台でドライヤーを使い髪を乾かす。乾かして歯磨きをしてから脱いだ服とバスタオルを入れて風呂の残り湯で洗濯をする、洗剤を一定量入れて蓋を閉じスイッチを押す。
リビングに戻る。明日の天気は分かったので電気を消し二階に上がる。
寝室に着き電気を点ける。浩輝はベッドに飛び込み携帯を枕元に置くとメールが入った。ケイとマイからのメールだった。
[今日の犠牲者は大下真純さんと野村庄吾さんです。お休みなさい]
「今日は……早めに寝よう」
達之とゲームをした事、野村さんが殺された事、木村達が襲われた事と、色々な事があったなと思いながら常夜灯にして布団に入り目をつむり眠る。